須臾物語(約400字)

真ヒル乃

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025 紳士と淑女のハザマで(グロ)

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これは……現実なのだろうか。私は此処に存在しているという意識はあるのだが、しかし……。

「あら、お召し上がりませんこと」
テーブルについていたのは私一人だけではなかったのか。心もとないランプの明かりで、くっきりと顔は見えないが、ナフキンを手にして右手にいるのは淑女。

「そうですぞ。本日は、類い稀なるものが手に入ったそうではないですか」

いつの間にか紳士が左手に座っていた。染み一つない白いテーブルクロスが恐ろしいほどの不気味さを放っているそれを囲む奇妙な三人。 なぜだろう、気分が悪くなってくる。おかしい。さっきまで私は何をやっていたのだろうか。

「食べなくてはだめよ」
「食べるべきだよ、きみ」
目の前に出されている大皿に上品に拵えてあるものを見る。咽喉が生唾を嚥下することもできないくらいにからからに乾いている。息苦しい―――私は、恐怖を感じていた。

「ほら、御口を開けて。わたくしが食べさせてあげましょうね」

いやだ、やめてくれ。やめてくれ。
お願いだ。私は、

「そうだね。我々が食べさせて差し上げよう――……キミを、」





※お題025「ごちそう」 

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