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017 枯れぬ涙の
しおりを挟む「涙が枯れることなんて、ありはしないのだよ、」
遠い昔に僕は誰かからそんなことを聞いたことがある。
「うそだよ。泣いて、たくさん泣いたら涙はもう出ないよ」
遠い昔に僕はそう言い返した記憶がある。
「そうかな。――そうだな。もしかするとそのことに関しての涙は出ないかもしれないな」 「……また涙が出るってこと、」
「涙はね、自分の身体に溜まった汚いもの悲しいもの…… きみたちの感情を体外に出す役目をもっている」
「たくさん泣いたら、感情はなくなるってこと」
「ねえ、きみ。人間はこの世から消える存在となるまで、涙とさらばすることはできないのではないかな」
「どうして、だって、××は――」
その後の会話は何だっただろうか、「××は……」
僕は泣いた。何度も何度も。そうして枯れたと思っていた。もう僕の人生に何が起ころうとも、これ以上は涙など出ないのだと。けれど、枯れてはいなかった。
「どう……して、」
「きみ、私は――」
もう何も言わないで欲しかった。遥か昔、僕は君を壊してしまったのだと。それなのに。
「涙は枯れてはいませんね」
「……うん。うん」
※お題017「泣いて泣いて泣いて」
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