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008 僕の名前を呼んで
しおりを挟む名前を呼んで下さいませんか。
僕は今し方生まれたものです。名前を呼んでください。嬉しいときは忘れていても構いません。楽しいときに邪険に扱われてもいいのです。
ただ、名を。僕の名前を呼んでください。
鬱陶しくても、僕の全てを疎んじていても。
けれど真実それが世界の営みの一部であり、全てなのです。おそらくあなたの眼に見えてはいません……。
僕の名前を呼んでくださいませんか。眼に見えない音で僕を呼んでください。
蒼穹(そら)を仰ぎ、手を広げ眼を閉じて何かを想うとき、僕らは何を思うのでしょう。僕は誰なのでしょう。それは僕にはわからぬことなのです。
鳥の声は聴こえても僕の名前を呼んでいるわけではありません。
虫の音が聴こえたとしても僕の名前を呼んでいるわけではないのです。
彼等は僕を知らない。
――僕を見つけてください。そして知ってください。そして記憶に留めてください。存在を。そうして、どんな名前でもいい。僕に名を付けてください、与えてください。
あなただけの。
――僕の名前を……僕にしかない名前を呼んでください。
僕にはまだ名前がないのです。
※お題008「名前を呼んで」
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