須臾物語（約400字）

004 空想ジャンプ

電信柱に頬を寄せてうっとりと眼を閉じたら、犬が自分の領域テリトリーだと僕に吠えて噛みつくかもしれない。
誰だって自分の領域テリトリーはあるものね。

暗闇の公園のベンチに星を見ようと座ってみれば、仲睦まじい御二人が僕を邪魔そうに見るかもしれない。
いい雰囲気だったら幸せの絶頂を台無しにされたくないものね。


水溜まりを跳び越えようと思いきり跳んだけれど、着地を失敗すれば、真白な靴下は泥色水玉模様と化して僕の心にも染みをつける。
次は成功しようと毎回思うのだけれど、毎日こうして過ぎて行くんだ。

毎日毎日が変わらない日々。もしかして次第に、生きること死ぬことに平然とするのかなあ。
平和という名の真実は、こういう僕の平凡な日常のことかも知れない。


お隣りの家の壁に 攀登よじのぼって空を見上げながら歩いたら、どんなにか素晴らしいことだろう。
だけど、猫が自分の領域テリトリーだと僕を威嚇して引っ掻くかもしれないね。

でもそれはそれで、そんな日常が好きだなって思うんだ。

早く家に帰らなきゃ。
兄さんが可愛らしい奥さんと赤ちゃんをつれて遊びに来るのだから。
きっと豪華なおいしいご馳走が待っているはずだ。