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001 とある生徒の日常
しおりを挟むいつも見上げるたび眼にするそれは、幾度となく形を変化させて僕を厭きさせない。
つまらない授業中の教室。 正面の奴はお昼休みに何をして遊ぼうとか考えているようで、身体をリズムをつけて動かし、先生の方を一度たりとも見ようとしない。
教室は、静かだ。
隣の奴は舟をういっちらこいっちら、僕の肩と衝突しそうな勢いで横に漕いでくる。こいつの家はお見世をやっていて、夜遅くまで彼も手伝っているらしい。 以前あまりにも衝突回数が多いので起こそうとして「お母さん、まだ眠い」と反対に抱きつかれたことがある。
お疲れ様。今日もたっぷり寝て、お手伝い頑張れよな。その様子を見ていたら少し笑えてきたので、先生にみつからないように窓の方を向いた。
さっきとはまた違う雲に心を奪われた僕は、あの空へ飛んでいきたい気分に襲われる。今日もいい天気だなあ。ブロッコリーのようなもこもこと形をなしていた雲は、少しずつ平らになっていった。
「おい、お前。教科書は空にはないぞ」
先生の大きな声でお叱りをうけた僕は、正面と隣の奴の邪魔をすることになってしまったのだった。
ああ、……ごめん。
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