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二人の王様
第38話 反省
しおりを挟む「辻くん、熱くならない。ネ?」
東條麗矢先輩が俺の肩に両手を乗せてぽんぽんと叩いていた。
「………はい。」
渡辺琉仁先輩がスッと校長先生の傍にいき意見を述べた。
「先生、このことを公表して新しく王様を選び直しするのは無理でしょう。学校自体がパニックになるし、事件を起こしたとはいえ、この二人がいじめの対象になりかねない。学校崩壊…いえ、学校の存続の危機になりかねません。」
「開校以来初めての不祥事だな。頭の痛いことをしてくれる…」
「そういえば、メダルの枚数は生徒会が数えてきっちり人数分だったはずだ。すり替えたメダルはどこに捨てたんだ?」
緒方遥に視線が注がれる。
「メダルは捨ててません………どこかに捨てて誰かに見つけられたりしたら怖いから、生徒手帳の中に入れて、ずっと持ってました。」
緒方遥のブレザーの内ポケットから生徒手帳を差し出した。
中を探ると最終ページのカバーの中からメダルが出てきた。
「! 見つかりました。」
緒方遥はギュッと目をつむり涙が目の端でかろうじてしがみついている。
手帳とメダルは校長先生に渡された。
「このメダルは拾ってすぐに手帳に入れたのか?」
「はい………悪い事してるって分かってました。ずっとそのメダルに責められている気がしてたけど、どうしてもっ、願い事を叶えたかったんです。」
「………そんなに修斗の事好きなんだ。」
ナギが小さなつぶやく、不安そうなになっている手を握ってやると小さく握り返してきた。
大きな溜め息をついて校長先生は悲しそうに声をかけた。
「緒方遥くん、神様は君を王様にしてくれてたのに…残念なことをしたね。」
「えっ?」
校長先生の手の中を見ると本物の当たりメダルがあった。
「………わあああああああっ!! 辛かったよぉぉ。」
「遥…」
その場にしゃがんで泣きじゃくる緒方の背中を白山が膝を折って背中を擦る。
「これでクラウンゲームの問題は解決したが、不正を働いた緒方遥君からはバツとして命令の権利を剥奪する。いいね。」
「うっ、うっ………はい。すみま、せん、でした。」
「高橋 税君、キミには追って処分を下す。それまで自宅待機してなさい。」
「はい。」
再びドアがノックされ少しだけ開くと事務員のおじさんが声をかけてきた。
「失礼します。警察の方が見えました。」
「警察?!」
「なんで警察なんか呼んだんだ?!」
大人しくしていた目出し帽の二人組は真っ青になって騒ぎ始めた。
「このICレコーダーと一緒にこの三人を連れてって貰うように。」
騒いで暴れる二人とは対照的に静かに怒りながら連れ出されていく山口斗希を校長先生が呼び止めた。
「ああ、ちょっと待ってくれ。山口君にはまだ話がある。」
「チッ、しつこいなっ」
「君にお願いがある。一度でいいから自分と岩崎君の立場を入れ替えて考えてみて欲しいんだ。」
「はぁ?! 俺はコイツらとは全然違うんだよ。」
「…それじゃあ警察の方には少し待ってもらって、今から君が一番嫌だと思うことをここにいる全員が君にしよう。」
山口斗希の顔色が変わった。
「んだと!教師が子供をいじめるのかよ!」
「どんな気持ちになったかな? それが今まで君が岩崎君や高橋君にしてきたことだよ。」
「!」
「自分が嫌だと思うことを人にしてはいけないと反省できる人になって欲しい。君が立ち直ることを心から祈るよ。」
「………くそっ………。」
校長先生の言葉が終わると山口斗希は自らすすんで会議室を出て行った。
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