【BL】王様の命令は絶対っ!!

yao

文字の大きさ
上 下
63 / 80
二人の王様

第38話 反省

しおりを挟む
 
 
 
 
「辻くん、熱くならない。ネ?」


 東條麗矢先輩が俺の肩に両手を乗せてぽんぽんと叩いていた。


「………はい。」


 渡辺琉仁先輩がスッと校長先生の傍にいき意見を述べた。


「先生、このことを公表して新しく王様を選び直しするのは無理でしょう。学校自体がパニックになるし、事件を起こしたとはいえ、この二人がいじめの対象になりかねない。学校崩壊…いえ、学校の存続の危機になりかねません。」

「開校以来初めての不祥事だな。頭の痛いことをしてくれる…」

「そういえば、メダルの枚数は生徒会が数えてきっちり人数分だったはずだ。すり替えたメダルはどこに捨てたんだ?」


 緒方遥に視線が注がれる。


「メダルは捨ててません………どこかに捨てて誰かに見つけられたりしたら怖いから、生徒手帳の中に入れて、ずっと持ってました。」


 緒方遥のブレザーの内ポケットから生徒手帳を差し出した。

 中を探ると最終ページのカバーの中からメダルが出てきた。


「! 見つかりました。」


 緒方遥はギュッと目をつむり涙が目の端でかろうじてしがみついている。

 手帳とメダルは校長先生に渡された。


「このメダルは拾ってすぐに手帳に入れたのか?」

「はい………悪い事してるって分かってました。ずっとそのメダルに責められている気がしてたけど、どうしてもっ、願い事を叶えたかったんです。」

「………そんなに修斗の事好きなんだ。」


 ナギが小さなつぶやく、不安そうなになっている手を握ってやると小さく握り返してきた。

 大きな溜め息をついて校長先生は悲しそうに声をかけた。


「緒方遥くん、神様は君を王様にしてくれてたのに…残念なことをしたね。」

「えっ?」


 校長先生の手の中を見ると本物の当たりメダルがあった。


「………わあああああああっ!! 辛かったよぉぉ。」

「遥…」


 その場にしゃがんで泣きじゃくる緒方の背中を白山が膝を折って背中を擦る。


「これでクラウンゲームの問題は解決したが、不正を働いた緒方遥君からはバツとして命令の権利を剥奪する。いいね。」

「うっ、うっ………はい。すみま、せん、でした。」

高橋たかはし ちから君、キミには追って処分を下す。それまで自宅待機してなさい。」

「はい。」




 再びドアがノックされ少しだけ開くと事務員のおじさんが声をかけてきた。


「失礼します。警察の方が見えました。」

「警察?!」

「なんで警察なんか呼んだんだ?!」


 大人しくしていた目出し帽の二人組は真っ青になって騒ぎ始めた。

 
「このICレコーダーと一緒にこの三人を連れてって貰うように。」


 騒いで暴れる二人とは対照的に静かに怒りながら連れ出されていく山口斗希としきを校長先生が呼び止めた。


「ああ、ちょっと待ってくれ。山口君にはまだ話がある。」

「チッ、しつこいなっ」

「君にお願いがある。一度でいいから自分と岩崎君の立場を入れ替えて考えてみて欲しいんだ。」

「はぁ?! 俺はコイツらとは全然違うんだよ。」

「…それじゃあ警察の方には少し待ってもらって、今から君が一番嫌だと思うことをここにいる全員が君にしよう。」


 山口斗希としきの顔色が変わった。


「んだと!教師が子供をいじめるのかよ!」


「どんな気持ちになったかな? それが今まで君が岩崎君や高橋君にしてきたことだよ。」



「!」




「自分が嫌だと思うことを人にしてはいけないと反省できる人になって欲しい。君が立ち直ることを心から祈るよ。」

「………くそっ………。」


 校長先生の言葉が終わると山口斗希としきは自らすすんで会議室を出て行った。
 
 



 

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

処理中です...