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27 しまったぁぁぁ!!

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良かった。間に合ったー。


「オークト様 今、お帰りですか?」

「あ、あ、か、帰る。」

「あっ、お前!気軽に声をかけるな。この方は…」

「これ、どうぞ。目を治してくださった、お礼です。」


ハーマンさんの意地悪は無視してドーナツ2つとキャンディを渡すとオークト様はオロオロしている。

明日、視力は元に戻ってしまうけど俺の為に魔法をかけてくれたことが嬉しかったから、お礼を渡せて良かった。


「それでは、気をつけてお帰り下さい。」

「う、う、ん、」

「お前一体なにを………あ、お前っ、リーフなのかっ!!」

「はい。」


えー、俺だと気づいてなかったんだ。ハーマンさん、あの態度、皆にとってるんだな。

なーんだ、俺だけが虐められてるわけじゃないんだ。

でもその態度じゃ、皆に嫌われちゃうよ。


オークト様はいつの間にか消えていた。


魔法で学園に帰ったのかな?


「セプター様、ただいま戻りました。」

「ああ…」


セプター様の声に元気がない。

シートには皇室の蝋封がついている手紙が座っている。

正式に学園に戻るように通達が来たんだ。

最後の勇者(浜中)が揃い、神子様も召喚されたから、メインシナリオが始まったんだ。

魔物討伐に行く前に神子様に挨拶と力をいただくという大事な祝福の儀自己紹介があるから魔法学園に来るようにと説得されたんだろう。

セプター様に元気がないってことはよほど行きたくないんだな。

そうだよなー、俺もあれは嫌だなー。


流れ作業で攻略対象12人とキスしていくの。


絶対に聖女っぽくないよー。

キスの流れ作業だよ?

それに考えたら前の攻略対象と間接キスになるんだもんな。

ゲームを進めるには避けて通れない儀式だけどさ、酷いよね。



これを食べて少しでも元気になってもらお。

ドーナツを買ってきて良かった。



「セプター様、これどうぞ。元気が出ない時は美味しいもの食べましょう。」

「………。」




あれー、ここのドーナツ好きだよね?なんで無反応?

あ!包んであって中身が見えないからわからないのかな。


それならと包み紙を開いてチョコレートドーナツを見せてセプター様に渡した。


「ほらね。セプター様の好きなドーナツですよ。これ最後の1個だったんですよ。買えて良かったです。ハーマンさんもどうぞ。ドーナツはお屋敷の方の分まで買えなかったのでここで食べて下さいね。」


んん?

なんでセプター様、ドーナツとキャンディを手に持ったまま固まっているの?


「………俺が好きなドーナツ?これが?………」

「はいそうですよ。このキャンディもお好きでしょう。」

「初めて見る食べ物だが?」

「へ?」



静まり返る馬車の中



し、しまったぁぁぁ!!


自分が食べたくて買っちゃったけど、これ神子様ヒロインと初めてのデートの時に食べるんだっ!!
その時、神子様のチョコレートがかかったドーナツを食べ比べてチョコドーナツを好きになったんだよね!!
神子様とデートする前に買って見せちゃったよぉ!!バカバカバカーーーーっ!!


「良くわからないが、いただくよ。」

「ちょーーーーっと待ったぁぁぁ!! すみません。すみません。俺の勘違いでした。きっと庶民の味過ぎて美味しくないと思います。食べないで下さい。」


食べる寸前にキャンディとドーナツを回収する。

危ない危ない、神子様ヒロインのイベント潰すところだった。


「いや、折角リーフが買ってきてくれたんだし、とても美味しそうだ。食べさせてくれ。」


ドーナツを袋に戻そうとした俺の手を掴んで、そのまま俺の手からドーナツを食べた。


んっぎゃーーーーっ!! //////// イケメンが眩しいっ!!


「! 本当だ。これは美味しい。元気が出たよ。このキャンディも美味しそうだな。有難うリーフ。」

「ははは………どういたしまして…はは…」


やっちまったー。

因みにキャンディはヒロインと2回目のデートの時にセプター様がくれたプレゼント。
実はデート前日にセプター様が町中を試食しまくってやっとみつけたキャンディだったんだよね。
……って話、ゲームで知ってたじゃん。
食べたい一心で、すっかり忘れてやっちまったぁー。

セプター様のルートめちゃくちゃハードモードになってるよね?


……ごめん、神子様………セプター様ルート頑張って攻略して下さい。
 
 



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