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3、婚約者さがし
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それは十六歳の誕生日を一ヶ月後に控えた晴れた日、カーディナリス家を訪れた。
サンルームにもなる小さな温室にアフタヌーンティーの用意がされていた。そこにはふたりの令嬢が向き合って座っている。
「由々しき事態ですわよ!」
荒々しく声あげつつも紅茶をテーブルに置く所作は実に優雅だ。さすが公爵家令嬢といったところか。完璧な令嬢を演じるカルミアは向かい側できょとんとしているロベリアに詰め寄った。
「今年はもう十六歳、学院に通う年ですわよ!?だと言うのに、ロベリア、あなた何故婚約者がいないままなんですの!?!?社交界にだって出てませんよね?一体、どういうつもりなんですの!?」
「…それを言うなら、あなたこそ結局、殿下との婚約を破棄できていないじゃありませんか」
「っ!!そ、それは…」
「あんなに息巻いてたのに…」
「し、仕方ないですわ…殿下が強情すぎるんですのよ…。この四年、確かに殿下の前でわたくしは不敬罪として捕まってもおかしくないくらい粗相しましたし、家族にだって散々怒られてもそれでも出来損ないの令嬢を演じてきました…。もう素直に婚約破棄して欲しい旨も伝えましたし他のご令嬢だって紹介しましたわ」
最初こそ息巻いていたが、だんだんと勢いがなくなって声が小さくなっていく。しまいにはうなだれた犬のようにしょんぼりし始めた。
ロベリアは彼女のこの努力を愚痴という名の報告で受けていたので知っていた。毎度聞かされるこの愚痴を右から左へ受け流しつつ殿下の不動っぷりには感心すら抱いていた。
「…こうなったら…」
うなだれたカルミアにどう声をかけようかと悩んでいたロベリアの耳に呟く彼女の声が聞こえた。
「カルミア?」
「そうよ…そうだわ…」
「?」
きょとんとするロベリアの前にカルミアの持つ扇子が飛び出してきた。
「!!?」
「ロベリア!こうなったらあなたが頑張るんですわ!」
「は?」
「せめてあなただけは婚約者を見つけた状態で学院に入学するんですわ!」
名案が閃いたかのようなキラッキラの笑顔でカルミアはそう言った。これにはロベリアは目を丸くするしかなかった。それが出来ているならとうの昔に出来ていたというのに、今更何を言っているのだろうか。
☆
カルミアの訪問から数日後。ふたりはとある社交界へ顔を出していた。
カルミアが身に纏うのは彼女のトレードマークである緋色のドレス。漆黒の縦ロールの髪と緋色のドレスは社交界の会場の中でも一際目立つ。まるで真っ赤な薔薇そのもののようだ。そんなカルミアの横にはお手製の漆黒のアイメイク・ヴェールを頭から被った紺色のドレスを身に纏ったロベリアが立っている。彼女の銀の髪と夜空のような紺色のドレスがまるで月夜を連想させる。
だが、ロベリアはヴェールで目元を隠しているのでただでさえ銀の髪が目立つのに余計に注目を浴びてしまっている。
「ねぇ、これ、目立つんじゃ…」
「あら、それなら亡者とやらも見えないのでしょう?それに、貴女は死神伯爵のご令嬢ですもの。何もしなくても目立つわね。残念ながら」
扇子で口元を隠しながら意地悪そうに笑う。カルミアはロベリアをからかって楽しんでいる。ロベリアは諦めたようにため息をつく。
「それで、こんなところで何をしろと?」
「当然、婚約者探しですわ」
満面の笑みでそう返されてロベリアは盛大なため息をついた。
そもそもに死神令嬢と結婚したがる人間なんているわけがない。貴族の中だけでなく国民全体から死神伯爵家は忌み嫌われている。亡者に取り憑かれてる、なんてところを見られたら困るからだ。詐欺師であっても騙すことも逃れることも出来ない、それをさせないだけの力があるのが死神伯爵カーディナリス。その上、ロベリアの容姿はこの国に伝わる死神伝承に登場する死神と容姿的特徴が一致している。それが疎まれている最大の理由だ。
ロベリアはその容姿から「死神の愛娘」とまで呼ばれている。とはいえ、社交界にもまともに顔を出さず、下町など以ての外であるロベリアがそのような噂の肩書きを持つのは、それこそあの小説の影響力が及ぼした結果なのかもしれない。そんなことを最近になって考え始めた。
「貴女の場合、待っているだけでは永遠に相手は見つかりませんわ。ですから、わたくしの伝手で、今日ここにお呼びしましたのよ」
「呼んだ?一体誰を…」
「もう来ているはずですわ。少し探してきますから、貴女はテラスにでも行ってなさいな」
そう言ってカルミアは扇子をひらひらとさせながら人混みに姿を消した。
会場にひとりだと余計に注目されるし、ひそひそとこちらを見ながら話のネタにされる様は不快だ。ロベリアはカルミアに言われた通り早々にその場を立ち去り、テラスへと向かった。
☆
「ああ、今夜は蒼い月の夜か…」
テラスには誰もいなかった。庭園を望むテラスには蒼い月の光が差し込んでいる。夜風が心地いい。思わずヴェールをめくり空を眺めた。
(このヴェール、してきて正解だったわ)
ロベリアは蒼い月を眺めながらそう思った。ヴェールで視界を遮っている為、亡者を見ずに済んでいるのが救いだった。
社交界は食わせ者も多く出席している。場合によっては亡者が蔓延っている可能性が高い。貴族なんてみんなどこか裏で手を染めているものだ。少なくとも、幼いロベリアの前に現れた貴族たちは誰もが亡者を侍らせていた。あんなおぞましいものを何体も見たくもない。
「…ロベリア?」
そんな事を考えながらカルミアの帰りを待っているとふいに声をかけられた。
驚きすぎて声も出なかったロベリアは勢いよく振り返る。振り返った先に立っていたのは金髪で翡翠の瞳を持つ美男子。
「…ゼフィ、ランサス…様……」
彼の名はゼフィランサス・インカローズ。カルミアやロベリアと同じ「薔薇の六家」のひとつであるインカローズ公爵家の嫡男だ。彼は既に学院に通う身。そんな彼がここにいるのは何故だろう。ロベリアは慌ててヴェールを被り直す。
「ロベリア…カーディナリス様…ですよね?お久しぶりです。ロベリア嬢。ゼフィランサス・インカローズです」
ふわっとした女神のような笑顔でそう微笑む。その絶世の美女とも称されるほど類稀なる容姿を持つ彼とロベリアとでは世間の評価には天と地ほどの差がある。
「最後に会ったのは…もう八年ほど前…でしたか。あの頃はまだお互い小さい子供でしたからね…一瞬、どなたかわかりませんでしたよ。…とても美しくなられましたね」
柔らかい落ち着いた声色だ。ロベリアはこんなに優しい声で話し掛けられたのは前はいつだったかと考えが過ぎった。
「え、ええ。ありがとうございます。もったいないお言葉までいただいて…」
ぺこりと貴族の令嬢として可憐な所作で挨拶する。
「ロベリア嬢、堅苦しいのは無しにしましょう。幼なじみなんですから」
「薔薇の六家」は階級こそ違えど共に王国に忠誠を誓い、契りを交わしている間柄。故に当主同士の関係は比較的良好で子供が生まれると家族で挨拶や祝いを送ったりしている。その為、六家の子供たちは幼い頃から互いを知っているし一緒に遊んだりもしていた仲だ。
「え、ええ...では。...お久しぶりです。ゼフィランサス様。まさかこんなところでお会いするとは」
「私も驚いています。風の便りでは、あなたは社交界には顔を出さないとお聞きしていましたから」
学院に通うゼフィランサスの耳にまでそんな噂が届いているとは...。事実とはいえ、人の噂の恐ろしさにゾワッとした。
「ええ、と、そうですね、普段はこのような場に出ることはありませんが...今日はカルミア様に呼ばれまして...」
「え?あなたもですか?」
「へ?あなたもか...って...それはーー」
ゼフィランサスの答えを聞いてロベリアが驚いたと同時にその二人の間を取り持つようにもうひとりの声が割って入る。
「あら、もう合流出来てましたのね」
声の方を勢いよく振り抜くとテラスの入口にカルミアが立っていた。
「カルミア...!合流出来てたのって、まさか...!あなたが言ってた相手って...」
ロベリアが食い入るようにカルミアに聞くと、彼女はケロッとした顔で「ええ、その通りよ」と答えた。
サンルームにもなる小さな温室にアフタヌーンティーの用意がされていた。そこにはふたりの令嬢が向き合って座っている。
「由々しき事態ですわよ!」
荒々しく声あげつつも紅茶をテーブルに置く所作は実に優雅だ。さすが公爵家令嬢といったところか。完璧な令嬢を演じるカルミアは向かい側できょとんとしているロベリアに詰め寄った。
「今年はもう十六歳、学院に通う年ですわよ!?だと言うのに、ロベリア、あなた何故婚約者がいないままなんですの!?!?社交界にだって出てませんよね?一体、どういうつもりなんですの!?」
「…それを言うなら、あなたこそ結局、殿下との婚約を破棄できていないじゃありませんか」
「っ!!そ、それは…」
「あんなに息巻いてたのに…」
「し、仕方ないですわ…殿下が強情すぎるんですのよ…。この四年、確かに殿下の前でわたくしは不敬罪として捕まってもおかしくないくらい粗相しましたし、家族にだって散々怒られてもそれでも出来損ないの令嬢を演じてきました…。もう素直に婚約破棄して欲しい旨も伝えましたし他のご令嬢だって紹介しましたわ」
最初こそ息巻いていたが、だんだんと勢いがなくなって声が小さくなっていく。しまいにはうなだれた犬のようにしょんぼりし始めた。
ロベリアは彼女のこの努力を愚痴という名の報告で受けていたので知っていた。毎度聞かされるこの愚痴を右から左へ受け流しつつ殿下の不動っぷりには感心すら抱いていた。
「…こうなったら…」
うなだれたカルミアにどう声をかけようかと悩んでいたロベリアの耳に呟く彼女の声が聞こえた。
「カルミア?」
「そうよ…そうだわ…」
「?」
きょとんとするロベリアの前にカルミアの持つ扇子が飛び出してきた。
「!!?」
「ロベリア!こうなったらあなたが頑張るんですわ!」
「は?」
「せめてあなただけは婚約者を見つけた状態で学院に入学するんですわ!」
名案が閃いたかのようなキラッキラの笑顔でカルミアはそう言った。これにはロベリアは目を丸くするしかなかった。それが出来ているならとうの昔に出来ていたというのに、今更何を言っているのだろうか。
☆
カルミアの訪問から数日後。ふたりはとある社交界へ顔を出していた。
カルミアが身に纏うのは彼女のトレードマークである緋色のドレス。漆黒の縦ロールの髪と緋色のドレスは社交界の会場の中でも一際目立つ。まるで真っ赤な薔薇そのもののようだ。そんなカルミアの横にはお手製の漆黒のアイメイク・ヴェールを頭から被った紺色のドレスを身に纏ったロベリアが立っている。彼女の銀の髪と夜空のような紺色のドレスがまるで月夜を連想させる。
だが、ロベリアはヴェールで目元を隠しているのでただでさえ銀の髪が目立つのに余計に注目を浴びてしまっている。
「ねぇ、これ、目立つんじゃ…」
「あら、それなら亡者とやらも見えないのでしょう?それに、貴女は死神伯爵のご令嬢ですもの。何もしなくても目立つわね。残念ながら」
扇子で口元を隠しながら意地悪そうに笑う。カルミアはロベリアをからかって楽しんでいる。ロベリアは諦めたようにため息をつく。
「それで、こんなところで何をしろと?」
「当然、婚約者探しですわ」
満面の笑みでそう返されてロベリアは盛大なため息をついた。
そもそもに死神令嬢と結婚したがる人間なんているわけがない。貴族の中だけでなく国民全体から死神伯爵家は忌み嫌われている。亡者に取り憑かれてる、なんてところを見られたら困るからだ。詐欺師であっても騙すことも逃れることも出来ない、それをさせないだけの力があるのが死神伯爵カーディナリス。その上、ロベリアの容姿はこの国に伝わる死神伝承に登場する死神と容姿的特徴が一致している。それが疎まれている最大の理由だ。
ロベリアはその容姿から「死神の愛娘」とまで呼ばれている。とはいえ、社交界にもまともに顔を出さず、下町など以ての外であるロベリアがそのような噂の肩書きを持つのは、それこそあの小説の影響力が及ぼした結果なのかもしれない。そんなことを最近になって考え始めた。
「貴女の場合、待っているだけでは永遠に相手は見つかりませんわ。ですから、わたくしの伝手で、今日ここにお呼びしましたのよ」
「呼んだ?一体誰を…」
「もう来ているはずですわ。少し探してきますから、貴女はテラスにでも行ってなさいな」
そう言ってカルミアは扇子をひらひらとさせながら人混みに姿を消した。
会場にひとりだと余計に注目されるし、ひそひそとこちらを見ながら話のネタにされる様は不快だ。ロベリアはカルミアに言われた通り早々にその場を立ち去り、テラスへと向かった。
☆
「ああ、今夜は蒼い月の夜か…」
テラスには誰もいなかった。庭園を望むテラスには蒼い月の光が差し込んでいる。夜風が心地いい。思わずヴェールをめくり空を眺めた。
(このヴェール、してきて正解だったわ)
ロベリアは蒼い月を眺めながらそう思った。ヴェールで視界を遮っている為、亡者を見ずに済んでいるのが救いだった。
社交界は食わせ者も多く出席している。場合によっては亡者が蔓延っている可能性が高い。貴族なんてみんなどこか裏で手を染めているものだ。少なくとも、幼いロベリアの前に現れた貴族たちは誰もが亡者を侍らせていた。あんなおぞましいものを何体も見たくもない。
「…ロベリア?」
そんな事を考えながらカルミアの帰りを待っているとふいに声をかけられた。
驚きすぎて声も出なかったロベリアは勢いよく振り返る。振り返った先に立っていたのは金髪で翡翠の瞳を持つ美男子。
「…ゼフィ、ランサス…様……」
彼の名はゼフィランサス・インカローズ。カルミアやロベリアと同じ「薔薇の六家」のひとつであるインカローズ公爵家の嫡男だ。彼は既に学院に通う身。そんな彼がここにいるのは何故だろう。ロベリアは慌ててヴェールを被り直す。
「ロベリア…カーディナリス様…ですよね?お久しぶりです。ロベリア嬢。ゼフィランサス・インカローズです」
ふわっとした女神のような笑顔でそう微笑む。その絶世の美女とも称されるほど類稀なる容姿を持つ彼とロベリアとでは世間の評価には天と地ほどの差がある。
「最後に会ったのは…もう八年ほど前…でしたか。あの頃はまだお互い小さい子供でしたからね…一瞬、どなたかわかりませんでしたよ。…とても美しくなられましたね」
柔らかい落ち着いた声色だ。ロベリアはこんなに優しい声で話し掛けられたのは前はいつだったかと考えが過ぎった。
「え、ええ。ありがとうございます。もったいないお言葉までいただいて…」
ぺこりと貴族の令嬢として可憐な所作で挨拶する。
「ロベリア嬢、堅苦しいのは無しにしましょう。幼なじみなんですから」
「薔薇の六家」は階級こそ違えど共に王国に忠誠を誓い、契りを交わしている間柄。故に当主同士の関係は比較的良好で子供が生まれると家族で挨拶や祝いを送ったりしている。その為、六家の子供たちは幼い頃から互いを知っているし一緒に遊んだりもしていた仲だ。
「え、ええ...では。...お久しぶりです。ゼフィランサス様。まさかこんなところでお会いするとは」
「私も驚いています。風の便りでは、あなたは社交界には顔を出さないとお聞きしていましたから」
学院に通うゼフィランサスの耳にまでそんな噂が届いているとは...。事実とはいえ、人の噂の恐ろしさにゾワッとした。
「ええ、と、そうですね、普段はこのような場に出ることはありませんが...今日はカルミア様に呼ばれまして...」
「え?あなたもですか?」
「へ?あなたもか...って...それはーー」
ゼフィランサスの答えを聞いてロベリアが驚いたと同時にその二人の間を取り持つようにもうひとりの声が割って入る。
「あら、もう合流出来てましたのね」
声の方を勢いよく振り抜くとテラスの入口にカルミアが立っていた。
「カルミア...!合流出来てたのって、まさか...!あなたが言ってた相手って...」
ロベリアが食い入るようにカルミアに聞くと、彼女はケロッとした顔で「ええ、その通りよ」と答えた。
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