上 下
64 / 75

鏡花水月 花言葉の導②-5

しおりを挟む
「へ?」

「ほら、それについてる模様を見てごらんよォ」

   そう言われて、装飾品についた模様を探してみる。確かに、シンボルマークのような模様があった。

<…あ、これ見たことあるです>

「え?ポピーちゃん、このシンボル見たことあるの?何処で見た?」

<前に来た女の人達が身に付けていたアクセサリーにもありました>

「え、じゃあ何?これって何か流行ってるものか何かなの?」

   丸い円の中、右側に三日月のようなマークと、左側に太陽を簡略化したようなマーク。それらが合わさってひとつのシンボルになっている。一体、何のシンボルなのだろうか。わざわざバロウズが持ってくる情報、ということはこれがただのブランドのロゴという訳じゃないはずだ。

「姫は幼馴染だからねェ。特別に教えてあげるよォ。…それは、“オラクル・ウィッカ”と呼ばれる集団のシンボルさァ」

「オラクル・ウィッカ!?何それ?へー…そんなのあるんだ…。てか、じゃあ何か?ナアマはそのオラクル・ウィッカって集団に属してたってこと?」

「さァてね。我輩もそこまでは知らないねェ。…ただ、姫も随分と厄介な旅をしてるもんだ。美男子を集めてるだけの筈なのにねェ?」

「…ホントにね…。おっかしーなぁ。何でこんなことに…。まぁ、それでも美男子集めは止めないけどね」


<…キャラじゃないのにです?>

「いやいや、キャラじゃないのは美男子愛好家としてのルール内容を厳守するか否かってとこだけ。私、基本的にルールとかに縛られるの嫌いなんだもん。でも美男子が如何にこの世の宝であるか!ってのは譲れないところだしー、でも愛好家名乗っておきながらポリシーも何もないのもね?って」

「クヒヒヒ。相変わらず変なこだわりがあるんだねェ、姫は」

「うっさい!…まぁ、とりあえず情報ありがとう。礼は言っておくわ」

 ひらひらと手を振って見せる。

「…姫は我輩の言うことを信じるのかい?」

「そりゃ、百パーセント信じてるわけじゃないよ。ただ、全部が嘘でもないっては思ってる。…あんた、昔から嘘と本当を混ぜて話す癖があるからね。で、わざわざ接触してくる時は、何かを伝えたいときや知ってほしいとき。…でしょ?」

   不敵な笑みを見せる。これも幼馴染ならではだろうか。バロウズは不敵に笑うオルメカを見て、ニヤリと笑って見せて返す。

「クヒヒ…。やれやれ…。侮れないねェ」

   バロウズはそう言うと、後ろに一歩下がる。
   その瞬間、ブワッと風が吹き荒れ、花畑の花が花弁を散らす。その花弁がカーテンのように視界を遮り、視界が開けた頃にはそこにはもうバロウズの姿は無かった。

<…消えちゃいました…>

「…またか…。言いたいことだけ言って消えるんだから…」

   やれやれと溜息をつく。


   さて、これからどうしようか。バロウズが割り込んできたので、世間話という気分でもない。

「とりあえず、宿屋に戻ろうかな」

   ふと辺りを見渡すと、薄暗くなりかけている。日が傾いてきたのだ。ポピーと出会ってから随分と話し込んでいたらしい。もしかしたら、ソロモン達が自分を捜しているかもしれない。一度、宿屋に戻るべきだろう。

   オルメカが一歩踏み出した時、肩にちょこんと座っていたポピーが尋ねてくる。

<あの、聞いてもいいです?>

「ん?いいよ。どしたの?」

   話を聞きながら来た小道を戻るように花畑を歩く。

<あの、さっきの人は魔法使いですか?>

   ザッザッと土を踏む足音が耳に心地良い。この土を踏みしめる感覚は大自然の恵みならではだ。

「バロウズのこと?それならあいつは魔法使いじゃないよ。魔力無いし」

<…そう、ですか…>

   ポピーがの歯切れが悪いようだったので、オルメカは心配になる。

「どうしたの?なんかあった?」

<…あの人…ポピーに気付いてたです。でも、ポピー達のことが見えるのは魔力がある人だけです…。それも、召喚魔法使いのような人だけですの>

   それを聞いてオルメカは驚いた。

「え!?バロウズってば気付いてたの!?うっそー…なんで?魔力もないはずのバロウズにポピーちゃんが見えてた…?え、何、どういう事?」

   バロウズには生まれつき魔力が無い。だから魔法を使う事は出来ないはずだった。しかし、魔力が無いと、召喚魔法使いでないと見えないはずのポピーが見えていたらしい。
   だが、言われてみれば、バロウズにはおかしな点があった。そう、急な登場と退場の仕方だ。いつも何処からともなく現れる。

…一体、何が何だか…。どうしてこう、きな臭い事に巻き込まれるんだろう…。いや、そもそもきな臭い事に巻き込まれているのは美男子達の方なんじゃ…。

   幻想図書館のアリス。古代イスラエルの王だったソロモン。そのどちらとの出会いや過去にもきな臭い事がないとは言えなかった。

…あれ?私の心眼ってどうなってんだ???

   顔面偏差値は申し分無いが、個人を取り巻く因縁もようなものまで見抜く力はないらしい。何とも言えない状況だ。

   オルメカは項垂れて、トボトボと宿屋への帰路についた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー
ファンタジー
まさに社畜! 内海達也(うつみたつや)26歳は 年明け2月以降〝全ての〟土日と引きかえに 正月休みをもぎ取る事に成功(←?)した。 夢の〝声〟に誘われるまま帰郷した達也。 ほんの思いつきで 〝懐しいあの山の頂きで初日の出を拝もうぜ登山〟 を計画するも〝旧友全員〟に断られる。 意地になり、1人寂しく山を登る達也。 しかし、彼は知らなかった。 〝来年の太陽〟が、もう昇らないという事を。  >>> 小説家になろう様・ノベルアップ+様でも公開中です。 〝大幅に修正中〟ですが、お話の流れは変わりません。 修正を終えた場合〝話数〟表示が消えます。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~

飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。 彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。 独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。 この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。 ※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

斬られ役、異世界を征く!!

通 行人(とおり ゆきひと)
ファンタジー
 剣の腕を見込まれ、復活した古の魔王を討伐する為に勇者として異世界に召喚された男、唐観武光(からみたけみつ)……  しかし、武光は勇者でも何でもない、斬られてばかりの時代劇俳優だった!!  とんだ勘違いで異世界に召喚された男は、果たして元の世界に帰る事が出来るのか!?  愛と!! 友情と!! 笑いで綴る!! 7000万パワーすっとこファンタジー、今ここに開幕ッッッ!!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

くノ一その一今のうち

武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
お祖母ちゃんと二人暮らし、高校三年の風間その。 特に美人でも無ければ可愛くも無く、勉強も出来なければ体育とかの運動もからっきし。 三年の秋になっても進路も決まらないどころか、赤点四つで卒業さえ危ぶまれる。 手遅れ懇談のあと、凹んで帰宅途中、思ってもない事件が起こってしまう。 その事件を契機として、そのは、新しい自分に目覚め、令和の現代にくノ一忍者としての人生が始まってしまった!

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

処理中です...