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邂逅逸話 暁のシジル③-1
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背後から聞こえた悲鳴にオルメカは咄嗟に振り向く。
シルフの結界に護られていたはずのアリスの姿が無い。
「えっ…!うそ…っ!?」
改めて辺りを見渡す。その時、また背後から声が聞こえた。今度は知らない声。
「まぁまぁ。良くもやってくれましたね」
「誰…!?」
フードを深く被った人物が振り向いた先で立っている。その腕の中にはアリスの姿があった。
「アリス…!!!」
「お、お姉さん…!!」
…いつの間に結界破ったの…!?あいつ…!!
見る限り先程の盗賊の一味には見えない。だが、魔法を使えない相手だけだと油断したのは自分のミスだ。アリスは戦えないのだから、もっと注意すべきだった。
「彼らはいい手足になってくれていたのですがね。残念です」
「…あんた誰よ!目的は何!?」
オルメカが手を前にかざす。それを見たフードの人物は遮るようにアリスの首にナイフを突き立てた。
「…っ!卑怯者…っ!」
ギリィ…と歯を食いしばる。確かに、これでは下手な手を打てない。何か、何か、打開策はないか…。
周囲を見回し、糸口を探す。
「ふふふ。常套手段ですよ?さぁ、これで貴女の手を封じました。大人しくー…」
愉快そうに笑いながら話しだした。その一瞬の隙をついてオルメカは足下の砂を蹴りあげて目くらましをする。
「…なっ!!」
「ぷへっ」
フードの人物だけでなくアリスまで砂を被ってしまったが、砂を振り払うためにフードの人物はバランスを崩す。その瞬間をオルメカは狙う。
「シルフ!!!」
バッ!とフードの人物に目掛けてシルフを召喚する。
だが、フードの人物はニヤッと笑うと、ローブの下から銃を取り出す。
カチッ
「!?」
バンッ…!!
キンッ…!!!
咄嗟に後ろに飛び退いた。そのおかげか銃弾は服の金色の飾りに当たるだけで済んだが、そのせいでバランスを崩し後ろに倒れ込む。
「しまっ…!!」
倒れ込んだオルメカの視界に、自らに照準を合わせられた拳銃が。
「お姉さん……!!」
アリスの悲痛な叫びが聞こえた。
ガウン…ッ!
再び拳銃が火を噴く。
フードの人物に捕まったままのアリスは怖さからぎゅっと目を閉じた。
ダメだと思った。でも何も出来ない自分には、最後さえ見届ける勇気がなかった。
それはどれくらい時間だっただろう。
数秒なのか、数分なのか。それとももっと長かっただろうか。おそらくそれは一瞬だったのだろう。
彼女の悲鳴は聞こえなかった。
その代わり、聞こえてきたのは男の悲鳴じみた声とキン!という金属がぶつかる様な音。その瞬間、自分を捕まえていた腕が解けたのを感じた。だが、すぐに捕まってしまう。
そっと薄目を開けて周りを見る。その視界に、フードの人物が腕から血を流しているのが見えた。矢が刺さっている。あの男の悲鳴はこの人物だったと理解した。
「いかんなぁ。人質なんて反則やん」
初めて聞く男の声が頭上から振ってくる。そこでようやく今自分を捕らえているのが別人に変わっていることに気づく。
小麦色のような褐色の肌。癖っ毛のある髪。
「誰…ですか?」
思わず聞いていた。その声に気づいた褐色の男がこちらを見る。
「よぉ!大丈夫や?怖かったろうなぁ」
わしゃわしゃと頭を撫ででくる。だが、その手の甲には手甲鉤てっこうかぎのような暗器が装備されていた。思わずぎょっとしたが、男の表情は穏やかだ。
「逃がさないわよ」
今度は知らない女の人の声が聞こえ、その声の方を見る。小柄な赤い服を纏った少女が弓を構えている。その少女の横に、オルメカの姿があった。
「お姉さん…!!!」
アリスは思わず声をあげた。オルメカもその声に気づき、
「アリス!!」
名を呼び、駆け寄る。アリスも褐色の男の腕から抜け出すとオルメカに飛び付いた。ぎゅうっとオルメカに抱きつく。
だが、一体何が起きたのだろうか。
オルメカにしっかり抱きついているアリスの近くに褐色の男がやって来る。
「よぅかったなぁ!油断は禁物やでぇ」
両手の甲に手甲鉤を付けた褐色の男がにかーっと笑いながら声をかけてくる。
「え、えーっと、この子を助けてくれてありがとう…。…助けて…くれたんだよね…?まさかあのフードの男ともグルだったり…」
オルメカはアリスをぎゅっと抱き締めると、少し警戒する。
だが褐色の男は気にもしていない様子で笑っていた。
そんな彼らの横で赤い服の少女が手にしていた弓矢でフードの男を再び矢を射る。
「ぐはぁ!!!」
男は手足を射抜かれ、その場にしゃがみ込む。身動きが取れなくなっている様だ。
「ぐっ…!だ、誰なんです…!貴方がたは!何故邪魔をする!まさか…仲間か?いや、そんなわけ…」
フードの男は体に刺さった矢を抜き、自らに治癒魔法を掛ける。
「あっかんなぁ。あっかんやんかぁー。回復なんてしたら。おいたが過ぎるで」
褐色の男がオルメカ達の傍から一足飛びでフードの男の背後に回り、手甲鉤を首に突き立てた。
「…っ」
「変なことしたらあかんで」
褐色の男はニヤッと笑う。
オルメカとアリスは呆気に取られた。その素早さにも驚いたが、赤い服の少女の正確さにも驚いた。男は血が流れ動けなくはなっているが、致命傷には至っていない様だ。
シルフの結界に護られていたはずのアリスの姿が無い。
「えっ…!うそ…っ!?」
改めて辺りを見渡す。その時、また背後から声が聞こえた。今度は知らない声。
「まぁまぁ。良くもやってくれましたね」
「誰…!?」
フードを深く被った人物が振り向いた先で立っている。その腕の中にはアリスの姿があった。
「アリス…!!!」
「お、お姉さん…!!」
…いつの間に結界破ったの…!?あいつ…!!
見る限り先程の盗賊の一味には見えない。だが、魔法を使えない相手だけだと油断したのは自分のミスだ。アリスは戦えないのだから、もっと注意すべきだった。
「彼らはいい手足になってくれていたのですがね。残念です」
「…あんた誰よ!目的は何!?」
オルメカが手を前にかざす。それを見たフードの人物は遮るようにアリスの首にナイフを突き立てた。
「…っ!卑怯者…っ!」
ギリィ…と歯を食いしばる。確かに、これでは下手な手を打てない。何か、何か、打開策はないか…。
周囲を見回し、糸口を探す。
「ふふふ。常套手段ですよ?さぁ、これで貴女の手を封じました。大人しくー…」
愉快そうに笑いながら話しだした。その一瞬の隙をついてオルメカは足下の砂を蹴りあげて目くらましをする。
「…なっ!!」
「ぷへっ」
フードの人物だけでなくアリスまで砂を被ってしまったが、砂を振り払うためにフードの人物はバランスを崩す。その瞬間をオルメカは狙う。
「シルフ!!!」
バッ!とフードの人物に目掛けてシルフを召喚する。
だが、フードの人物はニヤッと笑うと、ローブの下から銃を取り出す。
カチッ
「!?」
バンッ…!!
キンッ…!!!
咄嗟に後ろに飛び退いた。そのおかげか銃弾は服の金色の飾りに当たるだけで済んだが、そのせいでバランスを崩し後ろに倒れ込む。
「しまっ…!!」
倒れ込んだオルメカの視界に、自らに照準を合わせられた拳銃が。
「お姉さん……!!」
アリスの悲痛な叫びが聞こえた。
ガウン…ッ!
再び拳銃が火を噴く。
フードの人物に捕まったままのアリスは怖さからぎゅっと目を閉じた。
ダメだと思った。でも何も出来ない自分には、最後さえ見届ける勇気がなかった。
それはどれくらい時間だっただろう。
数秒なのか、数分なのか。それとももっと長かっただろうか。おそらくそれは一瞬だったのだろう。
彼女の悲鳴は聞こえなかった。
その代わり、聞こえてきたのは男の悲鳴じみた声とキン!という金属がぶつかる様な音。その瞬間、自分を捕まえていた腕が解けたのを感じた。だが、すぐに捕まってしまう。
そっと薄目を開けて周りを見る。その視界に、フードの人物が腕から血を流しているのが見えた。矢が刺さっている。あの男の悲鳴はこの人物だったと理解した。
「いかんなぁ。人質なんて反則やん」
初めて聞く男の声が頭上から振ってくる。そこでようやく今自分を捕らえているのが別人に変わっていることに気づく。
小麦色のような褐色の肌。癖っ毛のある髪。
「誰…ですか?」
思わず聞いていた。その声に気づいた褐色の男がこちらを見る。
「よぉ!大丈夫や?怖かったろうなぁ」
わしゃわしゃと頭を撫ででくる。だが、その手の甲には手甲鉤てっこうかぎのような暗器が装備されていた。思わずぎょっとしたが、男の表情は穏やかだ。
「逃がさないわよ」
今度は知らない女の人の声が聞こえ、その声の方を見る。小柄な赤い服を纏った少女が弓を構えている。その少女の横に、オルメカの姿があった。
「お姉さん…!!!」
アリスは思わず声をあげた。オルメカもその声に気づき、
「アリス!!」
名を呼び、駆け寄る。アリスも褐色の男の腕から抜け出すとオルメカに飛び付いた。ぎゅうっとオルメカに抱きつく。
だが、一体何が起きたのだろうか。
オルメカにしっかり抱きついているアリスの近くに褐色の男がやって来る。
「よぅかったなぁ!油断は禁物やでぇ」
両手の甲に手甲鉤を付けた褐色の男がにかーっと笑いながら声をかけてくる。
「え、えーっと、この子を助けてくれてありがとう…。…助けて…くれたんだよね…?まさかあのフードの男ともグルだったり…」
オルメカはアリスをぎゅっと抱き締めると、少し警戒する。
だが褐色の男は気にもしていない様子で笑っていた。
そんな彼らの横で赤い服の少女が手にしていた弓矢でフードの男を再び矢を射る。
「ぐはぁ!!!」
男は手足を射抜かれ、その場にしゃがみ込む。身動きが取れなくなっている様だ。
「ぐっ…!だ、誰なんです…!貴方がたは!何故邪魔をする!まさか…仲間か?いや、そんなわけ…」
フードの男は体に刺さった矢を抜き、自らに治癒魔法を掛ける。
「あっかんなぁ。あっかんやんかぁー。回復なんてしたら。おいたが過ぎるで」
褐色の男がオルメカ達の傍から一足飛びでフードの男の背後に回り、手甲鉤を首に突き立てた。
「…っ」
「変なことしたらあかんで」
褐色の男はニヤッと笑う。
オルメカとアリスは呆気に取られた。その素早さにも驚いたが、赤い服の少女の正確さにも驚いた。男は血が流れ動けなくはなっているが、致命傷には至っていない様だ。
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