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邂逅逸話 暁のシジル②-3

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「…なんだ…ただの兎じゃん…。びっくりさせないでよねーもう…」

   そう呟くと深呼吸をする。アリスもホッとしたように去っていった兎の後ろ姿を目で追う。
   二人が胸を撫で下ろした瞬間、

「ヒィヒャッハアアアアア!!」

   と、甲高い汚い笑い声と共にガサッと雑草の茂みから男達が飛び出してきた。

「こんな所で女子供ゲットおおお!」

   ぐへへと汚い笑い声を出す。数は三、四人。武器を装備し、小汚い格好で、担いだ大袋からジャラジャラと金属系の音がする。

…こいつら…盗賊か?
   オルメカは相手の服装や持っている武器や大袋からする音でそう推測した。
   アリスを守るように背に隠すが、相手は複数人。二人は囲まれてしまった。

   オルメカ一人なら魔法でどうとでもなるかもしれない。だが、今は非戦闘員のアリスが居る。下手な行動は出来そうにない。

「ぐへへ…。よぅ、ねーちゃん。えれーエロい格好してるじゃねぇか。あん?そんな格好でこんな見えやすいところにいちゃーいけねぇなぁ」

「俺らがよ、近くの街までのボディーガードをしてやるよ」

「その代わり…お代は、わかるよなぁ?」

   次々に下品な台詞を吐く輩に、オルメカは吐き気がした。
   確かにオルメカの戦闘時の格好は露出度が高めだが、こんな輩を喜ばせる為などではない。

…これだから下心丸出しの奴って嫌いなんだよね。ソロモンを見習って欲しいもんだわ。

   オルメカは男達が手を出してくる前に先手を打つ。

「シルフ!!」

   名を呼び、手を前に空間を割くように振るう。
   瞬間的に呼び出された風の精霊シルフがオルメカとアリスを守るように風の結界を張った。びゅう!!っと風が二人を中心に吹き荒れる。

「な、なんだぁ???」

「おい!今、何しやがった!!」

   ガチャリと音を立てて男が一人、銃を構えた。照準はオルメカだ。
   どうやら、この男達は何が起きているのかがわからないらしい。

…こいつら…もしかして魔法を知らない?だから武器を所持してるってわけ?
   オルメカはそう考えた。実際、そう考える方がつじつまが合う。

「くっそ…やられる前にやっちまえ!」

   男達のうちの誰かがそう叫んだ。
   その叫びに弾かれた様に男達は各々所持していた武器で四方向からオルメカ達を攻撃した。
一人は拳銃で。
一人はマシンガンで。
一人は投げナイフで。
一人は棍棒で。

   相手が物理なら間合いに入らせなければ魔法の方が強い。オルメカは男達の動きとほぼ同時に魔法を使った。
   今度はウンディーネの魔法。

「ウンディーネ!」

   バッと両手を広げる。オルメカの前にウンディーネが姿を現し、アリスとオルメカの周辺に津波のように水を発生させ、男達と銃から放たれた弾丸をも飲み込んで吹っ飛ばす。

「うわああああああ」

   男達の悲鳴が聞こえる。全身を強く打ち付ける津波の威力に成す術もなく、男達は気を失った。

…全員やったかな?
   そうオルメカが辺りを見渡した時だ。
   
   背後から知る声の悲鳴が聞こえたーー…

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