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都市伝説 幻想図書館③-2

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「あーっ!あったあった!」

   ビクッと少し驚き、荷物の辺りを見るとそこにはカバン漁っていただろうオルメカの姿あった。

   足下で荷物を漁っていたため、背の高いソロモンの視界からは外れていたようだ。そんなソロモンを知ってか知らずか、彼女は顔を上げ、手にノートを持って見せた。

「じゃじゃーん!オルメカお手製スクラップブック!」

   自慢げにそれをソロモンに開いて見せる。その中にはこのヒストアの街の事がまとめてスクラップされていた。
   海洋騎士団のショーやガルデア大聖堂などの観光地だけでなく、グルメやお土産、裏スポットなど詳細にまとめられている。

「…よくここまで調べたな。まるで一度来たことがあるみたいだ」

   それくらい、上手くまとめられているのだ。
   ページを最初に戻す。その見開きには世界地図が貼られていた。その上には印が至る所に付けられている。

「この印は…?」

   隣で自慢げに立っているオルメカに聞く。
   聞かれた彼女はやはり自慢げに答える。

「ふっふっふ!よくぞ聞いてくれました!それはね、幻想図書館が出現したって噂の場所だよ!これでもねぇ、ちゃんと調べてるんだから!」

…なるほど。ちゃんと調べているんだな。なんとなく温かい目で彼女を見る。    

   まるで子供の自由研究の成果を見せてもらっている父親のような気分だ。
   そんな意味の視線とは露知らず、オルメカは更に自慢げにドヤ顔をしている。

   度々見せる彼女のこのドヤ顔をソロモンは密かに気に入っていた。というのも、今までの彼の周りには居なかったからだ。…いや、正確にはいたのかもしれないが、彼の知るところの記憶にその姿はなかった。

「…もうその顔はいい。わかった。その努力は認める。それで?ここまで調べているなら次に何処に行くか決めているんだろう?どうするんだ?」

   パタンとスクラップブックを閉じ、彼女に返す。それを受け取ったオルメカは改めてスクラップブックのヒストアのページを開き、ガルデア大聖堂を指さした。

「せっかく来たしね。一度、行ってみない?」

「ステンドグラスが有名な聖堂…だったな。…これは…ただの観光なんだな?」

「そうそう。午前中は観光してお昼を食べて、その後、昨日の仮説の実証ってことでどう?」

   ニカッと笑って見せる。度々見せるこういう表情はやはり嫌いじゃないなとソロモンは思う。
   ひとまず、彼女の案に乗ることにした。








   ガルデア大聖堂。ヒストアの中で1番大きな建造物でステンドグラスの聖堂が有名。
   とだけあって、観光客でかなり賑わっていて人混みも多い。
   建物自体も古い建造物であるため、石積みの構造だ。
   たびたびオーパーツという言葉を耳にするが、このガルデア大聖堂もそう呼ばれるひとつだとされる。

「この大聖堂の1階部分に使われてる石ってさ、大の大人より大きい石灰石なんだって。建設当時は今と違って魔法使いは元老院によって統率されてたから、こういった建築には魔法が用いれられていないんだってさ」

    館内を回りながらオルメカはそう話す。館内には天使や神と思われる石像が随所に置かれている。とはいえ、完全な形のものはあまりないが…。風化やいつかの戦火で損傷したのだろう。

「…魔法使いに自由はなかったのか…。だが、人の手でのみ作られたというのは…感慨深いものがある」
 
    ソロモンはそう言って、辺りを見回す。どれほど多くの人々がこの大聖堂の建築に携わったことだろう。その事を詳しく知る資料はもう残っていないのだが。

「何してるのー?置いてくよー!」

    声の方を向くとオルメカがひらひらと手を振っている。楽しげな笑顔だ。

…そういえば、どれくらいぶりだろう。こうして誰かと一緒にのんびりした時間を過ごすのは。誰かが同じ歩幅で待ってくれる相手がいるのは…。
   ふっ、とソロモンは柔らかく笑った。そして、彼女の後を追う。

「悪い、待たせた」

「いいよー。でもどうしたの?なんか気になる物でもあったの?」

   追いついて隣に来たソロモンに話し掛ける。
…なんかあったのかな?ソロモンって時々、ぼーっとしてるというか…。憂いてるのかな?まぁその横顔も綺麗なんだけどねー。…まっ。当然っちゃ当然かな。無理やり連れてきたもんなぁ……。

「どうしたんだ?急に黙り込んで」

   ソロモンが心配そうにオルメカの顔を覗き込む。急に視界に入ってきた美形の顔にオルメカは「ぶはっ!!天使!!!!!!」などと血迷った事を叫びながら鼻血を噴き出してその場に倒れ込むこととなった。

「は!?」

   突然の事にソロモンは目を丸くした。
   更に、いきなり女の子が鼻血を噴き出したものだから、周囲の観光客も騒然とし、わらわらと何があったと集まってくる。彼女が噴き出した鼻血はソロモンの顔にもかかっており、彼はそれをハンカチで拭いながらオルメカの鼻辺りに左手をかざし、大慌てで治癒魔法を掛けた。

「お前…顔覗き込んだくらいで鼻血出したことなんて無かっただろう…!」

「ぐふ…。いや、ほんとぉににぇ…」

…そういえば、どれくらいぶりだろう。こうして誰かと一緒にのんびりした時間を過ごすのは。誰かが同じ歩幅で待ってくれる相手がいるのは…。
  ふっ、とソロモンは柔らかく笑った。そして、彼女の後を追う。
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