上 下
2 / 75

都市伝説 幻想図書館①-1

しおりを挟む
「あんたたちはこれからどこ行くんだい?」

 そう話しかけてきたのは酒場のおばちゃんだ。両手にお盆を乗せ、その上にはビールやらおつまみやら一品料理やらが乗っている。
 頭にバンダナを巻き、腰にエプロン。腕まくりをしたふくよかな体型。…なんだかイメージ通りの世間話好きのおばちゃんだな、と少女は思った。

 いかにも酒場、な木製のテーブルに木製の建物。そんな雰囲気の大衆酒場の3人掛けの木製の丸テーブルに少女と青年が2人で腰掛けている。

「あ、はいよ。ご注文の品の…フィッシュ・アンド・チップスと…」

 酒場のおばちゃんは手際よく注文品を置いていく。
 そうして注文分を置き終えると、話題は最初に戻る。

「それで?あんたたちはどこに行くんだい?旅行客…って訳じゃないんだろう?」

 ちらりと少女の腰に掛けてあるブックボックスを見やる。
…さすがは大衆酒場のおばちゃんだ。よく目がいくものだ。少女は手をひらひらさせて答えた。

「ご名答。確かに私たちは旅行客じゃないよ」

 隣で青年は炭酸の飲み物を無言で飲んでいる。

「やっぱりねぇ。あたしもここで働くのは長いからねぇ。見た目でわかっちまうんだよ」

 わははとおばちゃんは笑う。

 なるほど。この大衆酒場には今までにも自分達のような人々が来ていたわけだ。

「ねぇ、おばちゃん。他にも私らのような人が来たことがあるなら、色々と旅の話も聞いたんじゃない?」

 こんな風に話しかけてくるくらいだ。武勇伝でも色々聞いているだろう。

「ああ!もちろんさ!冒険譚はたくさん聞いたねぇ。旅行客から旅の思い出を聞くのも楽しいけど…やっぱり旅人の冒険譚ほど熱いものはないねぇ…!」

 自慢げに話すおばちゃんは楽しそうだ。聞くのも話すのも好きらしい。

「それじゃあさ、その聞いた話の中にさ「幻想図書館」の話をしてる奴いなかった?」

 少女がそうおばちゃんに尋ねた時、隣で無言で飲んで食べていた青年は少女の方を見た。

「幻想図書館?」

 酒場のおばちゃんはきょとんとした顔で聞き返してくる。
 うーん。この反応…情報は持ってない感じかな?
 少女としては期待外れの反応に見えた。が

「あんたたち、幻想図書館に行きたいのかい?」

 と…思わぬ反応が次いで返ってきた。
 少女と青年は思わず顔を見合わせた。

「貴女は聞いたことがあるんですか?」

 それまで黙って聞いていた青年が話しかけた。
 ずっと黙っていたからかふいに話しかけられて酒場のおばちゃんは驚いた様だった。だが、驚いたのはそれだけではなかったようで。

「あ、あんれまー!兄ちゃんは随分とべっぴんさんだねぇ!って、いやー男の人にべっぴんさんはちと失礼だったかねぇ!」

 ほんのり頬を赤く染め、おばちゃんは有名人でも見たかのように小躍りしている。
…いやまぁ、当然ですとも。だって彼は私のお眼鏡にかなったんだもの。カッコイイでしょう?綺麗でしょう?…美男子でしょう…!?

 そんなことを考えているのがバレたのか、彼から送られる視線がとても冷たいことに気づいた。
…あれ?なんで心が読まれてんの??エスパーだったの!??

「お褒め頂きありがとうございます。それで、何か幻想図書館についてご存知なことが?」

 青年は軽く慌てている少女を差し置いて話を続ける。
 そう促されて、小躍りしていたおばちゃんも我に返る。

「ご存知って言ってもねぇ…あたしも聞いただけだから詳しくはしらないけどねぇ」

 そう言ってお盆をテーブルに置き、空いていた席にどかっと腰掛ける。
…あれ?それどっかのテーブルの注文じゃないの?
 思わず少女は瞬きをする。

 すると、若い女の子の定員がふらりと現れ、おばちゃんが置いたお盆と注文を手に取る。にっこりと笑顔で挨拶され、少女も思わずぺこりと頭下げる。そして注文品を運んで行った。

 少女がそう注文品と若い女の子の定員に気を取られている間にも、青年とおばちゃんは話を進めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

処理中です...