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第二部
大天使様は偉大3
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重苦しい空気の中、ジャノはキョトンとした表情で殿下を見つめていた。何度か瞬きをした後、彼は傷付いた様子もなく口を開く。
「あの、殿下。俺に謝る必要ってあります?」
予測していた反応とは全く違っていて、思わず殿下と一緒に「え?」と驚きの声を零してしまった。
「いや、だって、僕は君を利用して……」
「それは殿下がこの国の王になる為ですか? それとも、この国と民を守る為ですか?」
「…………」
「殿下がそう判断したのなら、それは必要なことだったんでしょう。あの場でリリーちゃんが呪いをかけなければ、周囲はもっと調子に乗っていたでしょうし、最悪俺は殺されていたかもしれません。やりすぎだとは思いますけど、それが周囲への牽制になったのなら、それはそれで良かったんだと思います」
「君、何時から、気付いて……」
「知ったのは今ですよ? だからこれは俺の憶測です。王太子殿下という立場は、俺達が想像もできないような大変な立場で綺麗事だけではこの国を守れない。時には汚い方法で敵を排除しなければならないし、舐められない為に冷酷に切り捨てなければならないこともある。何度も何度も苦悩と葛藤を繰り返し、常に正しい判断を探してこの国を導いていかなければならない。トップが間違った判断をすれば、国全体が不安定になってしまうから。それくらい、バカな俺でも分かります。だからといって、殿下の全てを理解している訳ではありません。でも、殿下も人間なんですから、全てを完璧になんて無理です」
「…………」
「最後に判断するのは殿下です。ですが、たった一人で抱え込む必要はありません。殿下が『助けて』と言えばみんな力を貸してくれますよ。ユベール様も、ジルベール様も、俺も。それに、彼奴だって」
「あー。ずっと悩んでいた僕がバカみたい」
「え!?」
「でも、ありがとう。君もフェルと似たようなことを言うんだね」
「似たようなこと?」
「ううん。なんでもない。ごめんね。二人の時間の邪魔をして。それじゃあ僕はこれで」
そう言って、殿下は晴れ晴れとした表情をして部屋から退室した。少し心配だった俺が急いで殿下の後を追うと、嬉しそうに笑っている殿下と、そっと殿下の頭を撫でて苦笑するフェルナンの姿が見えた。片想いなのかと思っていたが、彼も彼で本当は殿下のことを……そこまで考えて、俺は首を横に振った。他人の恋路を邪魔する訳にはいかない。殿下の悩みはフェルナンが解消してくれるだろう。そう確信して、俺はジャノの部屋へと戻った。
「ユベール様。殿下は大丈夫だったんですか?」
「えぇ。フェルナンに頭を撫でてもらって嬉しそうに笑っていましたよ?」
「え? 彼奴が、殿下を? やっぱり、二人は両想い……」
「ジャノ。それは時が経てば分かることです。あまり踏み入ることは止めておきましょう」
「そ、そうですね。二人の問題ですし、俺達が介入するのは拗れに拗れた時だけでいいですよね」
「その通りです」
殿下とフェルナンが結ばれるのも時間の問題のような気はするが。恐らく、俺と同じように殿下はもうフェルナンしか見えていない。結婚するなら彼以外あり得ない。どんな手を使ってでも好きな人と結ばれたい。かつて俺がそう望んでいたように、殿下もそれを強く望んでいる。色々と頭の切れる方だ。最善の方法を見つけ出してフェルナンを手に入れるに違いない。もし、邪魔をする者が現れたら秘密裏に処理すればいい。その相手が悪事に手を染めた犯罪者なら簡単に切り捨てることができる。まあ、これは最終手段だと思いたいが、ルシー様を追い詰める殿下をこの目で見てしまった後だと説得力がない。少し不安は残るものの、俺は殿下を信じよう。
部屋で少し休憩した後、準備が整ったと報告を受け、俺達は食事をする部屋へ移動した。中央に設置された長テーブルには人数分の食器が並べられ、特別メニューのフルコースが振る舞われた。どの料理にもジャノが言っていた「飾り切り」が盛り付けられていて、味覚だけでなく視覚でも楽しめて、お父様やお母様達も大喜びだ。
「あぁ。またこの味を楽しめる日が来るとは……」
「本当。フェルナンさんはなんでも作れるんですね」
「私達が挨拶に行った時もフルコースを用意してくれたんですよ? メニューにはないのに『今回だけの特別メニューだ』ってフェルナンさんが言ってくれて」
「俺の両親も喜んでいました。彼の作る料理は芸術だって」
「彼奴の店、普通のメニューより裏メニューの方が多いんですよ」
「確かに。メニュー表にはパスタとサンドイッチしかなくて、種類も五、六種類だけだったな」
「ふぅん。じゃあ、この前ユベールと一緒に食べた『カツカレー』も裏メニューだったのかな?」
「それは彼奴が食べる為に作っていたもので、裏メニューでもなかったと思います」
前菜やスープ、魚料理に肉料理を楽しんでデザートを待っている間、みんなフェルナンの話で盛り上がっていた。確かに最初にあの店を訪れた時、彼は定休日にも関わらずカツカレーを作ってくれた。あの料理も本当に美味しかったな。悔しいが、また食べに行きたいと思うほどに。リゼット嬢達は「カツカレー」を食べたことがないのか「どんな料理だったんですか!?」と興味津々だ。
「興味があるなら今度来た時に作ってやろうか?」
「え!? いいんですか!?」
「作らないとずっと言い続けるだろ? 食べたいって」
「バレてしまいましたか」
「隠す気もなかったでしょう? ジルベール様」
「フェルナンくん、その時は私達も……」
「日程だけ教えてくだされば用意してお待ちしております。クレマン様」
テーブルに置かれたデザートを見て、俺達はあまりの美しさに見惚れてしまった。ホールの端の端に置かれていたホールケーキだ。人数分に切り分けられているが、全てに二羽の孔雀と薄紅色の牡丹の飴細工が飾られている。他にもチョコレートで作られたバラや、クリームで再現した鈴蘭など。細部にまで拘って作られていて、食べるのが勿体ない。
「お前って何時からパティシエになったの?」
「いやいや。俺はただの料理人だから。これは先輩の課題を手伝っていた時に偶々……」
「先輩の課題? あ、もしかしてパティシエ目指してたあの先輩?」
「そうそう。手先が器用だから手伝ってくれって言われて、一緒に作ったら先生達から『コンクールに出す』って言われて少しだけ騒動になったあの先輩」
「あー、違った意味で可哀想な先輩。あの先輩はすごくいい人だったよな?」
「次の年には自分の実力だけで作品を作り上げて、コンクールでも優勝して、卒業後は本当にパティシエになったからな。あの先輩は凄いよ。俺も尊敬してるんだ」
「分かる。俺も一度だけ会ったけど、本当にいい先輩だったよな。面倒見がよくて、課題を手伝ってくれたお礼だからと焼肉店に連れて行ってくれて、俺まで招待してくれて」
「卒業した後も時々先輩から教えてもらってたんだ。飴細工とかチョコレート細工とか。まあ、先輩に比べたら俺の腕なんて素人同然なんだけど」
「嘘吐くなよ。お前、先輩から勧誘されてたじゃねえか。『俺が独立して自分の店を開いたら一緒に働いてくれないか?』って」
「パティシエは専門外だから断ったよ」
ジャノとフェルナンは時々二人だけしか分からない話をする。先ほどフェルナンの料理のレシピを盗もうと企んでいた名前だけの先輩とは別人のようだ。嬉しそうに先輩のことを語っているのを見ると、本当に心から尊敬できる先輩なんだろう。
「ねえ、フェル。僕もその『先輩』に会ってみたいんだけど、会えるのかな?」
「…………」
「…………」
殿下が「会いたい」と言った瞬間、二人の表情が凍りついた。二人とも何も語らず、お互いに顔を見合わせて困惑した表情を浮かべるだけ。どう説明すればいいのか分からない、という表情だ。前にもこんな顔をしていたことを思い出して、二人が隠しておきたいことなんだろうと察する。ジャノもフェルナンも、頑に祖国の話をしようとしない。ふんわりとした話をしてくれるだけで、具体的なことは何一つ教えてくれなかった。
「もしかして、その『先輩』は祖国の?」
「……はい。俺達と同じ国の人で、もう会うことはできない人です」
「先輩はちゃんと生きてますからね! 二度と会えないっていうのは、えっと遠すぎて会えないというか、俺達が帰れない場所に住んでいるというか」
「まあ、昔のことを考えても仕方ありません。気にしないでください」
「それより、ケーキを食べましょう! 折角フェルナンが作ってくれたんですから!」
また、二人は話を逸らした。やはり知られたくないことなんだろう。俺には話してくれてもいいのに、と少し不機嫌になってしまうが、無理矢理聞き出すことはしたくない。ジルベールとリゼット嬢も知りたそうな顔をしているが、結局何も聞かなかった。
「なあ、フェルナン」
「なんだ? ニコラ」
「いつか、話してくれるか? お前の、祖国の話」
「……んー、必要と判断した時は話してやるよ。面白い話なんてないけどな」
それは逆を言えば、必要ないと判断した場合は一生話してくれないということではないのか? そう疑問に思うものの、また誤魔化されると分かっているから俺は聞かなかった。
「ユベール様。この後、二人だけになったら話します。祖国のこととか、俺のこととか、色々」
「え?」
俺にしか聞こえない声で、ジャノは「祖国について話す」と言ってくれた。昨日も「話したいことがある」と言っていたが、ジャノは最初から俺にだけは話すつもりでいたのだろうか。ジャノとフェルナンが隠していたことをやっと知れる。そう思うと嬉しくて、不安な気持ちも消えてケーキを堪能することができた。恐らく殿下も似たようなことをフェルナンに耳打ちされたのだろう。傷ついたような表情から明るい表情に変わって「美味しい、美味しい」とケーキを食べている。場の雰囲気が明るくなり、ジルベールやリゼット嬢もケーキを口にしてあまりの美味しさに表情が緩んでいる。ニコラとジョエル嬢も同じくケーキを楽しんでいて、全員で楽しい時間を過ごした。
「あの、殿下。俺に謝る必要ってあります?」
予測していた反応とは全く違っていて、思わず殿下と一緒に「え?」と驚きの声を零してしまった。
「いや、だって、僕は君を利用して……」
「それは殿下がこの国の王になる為ですか? それとも、この国と民を守る為ですか?」
「…………」
「殿下がそう判断したのなら、それは必要なことだったんでしょう。あの場でリリーちゃんが呪いをかけなければ、周囲はもっと調子に乗っていたでしょうし、最悪俺は殺されていたかもしれません。やりすぎだとは思いますけど、それが周囲への牽制になったのなら、それはそれで良かったんだと思います」
「君、何時から、気付いて……」
「知ったのは今ですよ? だからこれは俺の憶測です。王太子殿下という立場は、俺達が想像もできないような大変な立場で綺麗事だけではこの国を守れない。時には汚い方法で敵を排除しなければならないし、舐められない為に冷酷に切り捨てなければならないこともある。何度も何度も苦悩と葛藤を繰り返し、常に正しい判断を探してこの国を導いていかなければならない。トップが間違った判断をすれば、国全体が不安定になってしまうから。それくらい、バカな俺でも分かります。だからといって、殿下の全てを理解している訳ではありません。でも、殿下も人間なんですから、全てを完璧になんて無理です」
「…………」
「最後に判断するのは殿下です。ですが、たった一人で抱え込む必要はありません。殿下が『助けて』と言えばみんな力を貸してくれますよ。ユベール様も、ジルベール様も、俺も。それに、彼奴だって」
「あー。ずっと悩んでいた僕がバカみたい」
「え!?」
「でも、ありがとう。君もフェルと似たようなことを言うんだね」
「似たようなこと?」
「ううん。なんでもない。ごめんね。二人の時間の邪魔をして。それじゃあ僕はこれで」
そう言って、殿下は晴れ晴れとした表情をして部屋から退室した。少し心配だった俺が急いで殿下の後を追うと、嬉しそうに笑っている殿下と、そっと殿下の頭を撫でて苦笑するフェルナンの姿が見えた。片想いなのかと思っていたが、彼も彼で本当は殿下のことを……そこまで考えて、俺は首を横に振った。他人の恋路を邪魔する訳にはいかない。殿下の悩みはフェルナンが解消してくれるだろう。そう確信して、俺はジャノの部屋へと戻った。
「ユベール様。殿下は大丈夫だったんですか?」
「えぇ。フェルナンに頭を撫でてもらって嬉しそうに笑っていましたよ?」
「え? 彼奴が、殿下を? やっぱり、二人は両想い……」
「ジャノ。それは時が経てば分かることです。あまり踏み入ることは止めておきましょう」
「そ、そうですね。二人の問題ですし、俺達が介入するのは拗れに拗れた時だけでいいですよね」
「その通りです」
殿下とフェルナンが結ばれるのも時間の問題のような気はするが。恐らく、俺と同じように殿下はもうフェルナンしか見えていない。結婚するなら彼以外あり得ない。どんな手を使ってでも好きな人と結ばれたい。かつて俺がそう望んでいたように、殿下もそれを強く望んでいる。色々と頭の切れる方だ。最善の方法を見つけ出してフェルナンを手に入れるに違いない。もし、邪魔をする者が現れたら秘密裏に処理すればいい。その相手が悪事に手を染めた犯罪者なら簡単に切り捨てることができる。まあ、これは最終手段だと思いたいが、ルシー様を追い詰める殿下をこの目で見てしまった後だと説得力がない。少し不安は残るものの、俺は殿下を信じよう。
部屋で少し休憩した後、準備が整ったと報告を受け、俺達は食事をする部屋へ移動した。中央に設置された長テーブルには人数分の食器が並べられ、特別メニューのフルコースが振る舞われた。どの料理にもジャノが言っていた「飾り切り」が盛り付けられていて、味覚だけでなく視覚でも楽しめて、お父様やお母様達も大喜びだ。
「あぁ。またこの味を楽しめる日が来るとは……」
「本当。フェルナンさんはなんでも作れるんですね」
「私達が挨拶に行った時もフルコースを用意してくれたんですよ? メニューにはないのに『今回だけの特別メニューだ』ってフェルナンさんが言ってくれて」
「俺の両親も喜んでいました。彼の作る料理は芸術だって」
「彼奴の店、普通のメニューより裏メニューの方が多いんですよ」
「確かに。メニュー表にはパスタとサンドイッチしかなくて、種類も五、六種類だけだったな」
「ふぅん。じゃあ、この前ユベールと一緒に食べた『カツカレー』も裏メニューだったのかな?」
「それは彼奴が食べる為に作っていたもので、裏メニューでもなかったと思います」
前菜やスープ、魚料理に肉料理を楽しんでデザートを待っている間、みんなフェルナンの話で盛り上がっていた。確かに最初にあの店を訪れた時、彼は定休日にも関わらずカツカレーを作ってくれた。あの料理も本当に美味しかったな。悔しいが、また食べに行きたいと思うほどに。リゼット嬢達は「カツカレー」を食べたことがないのか「どんな料理だったんですか!?」と興味津々だ。
「興味があるなら今度来た時に作ってやろうか?」
「え!? いいんですか!?」
「作らないとずっと言い続けるだろ? 食べたいって」
「バレてしまいましたか」
「隠す気もなかったでしょう? ジルベール様」
「フェルナンくん、その時は私達も……」
「日程だけ教えてくだされば用意してお待ちしております。クレマン様」
テーブルに置かれたデザートを見て、俺達はあまりの美しさに見惚れてしまった。ホールの端の端に置かれていたホールケーキだ。人数分に切り分けられているが、全てに二羽の孔雀と薄紅色の牡丹の飴細工が飾られている。他にもチョコレートで作られたバラや、クリームで再現した鈴蘭など。細部にまで拘って作られていて、食べるのが勿体ない。
「お前って何時からパティシエになったの?」
「いやいや。俺はただの料理人だから。これは先輩の課題を手伝っていた時に偶々……」
「先輩の課題? あ、もしかしてパティシエ目指してたあの先輩?」
「そうそう。手先が器用だから手伝ってくれって言われて、一緒に作ったら先生達から『コンクールに出す』って言われて少しだけ騒動になったあの先輩」
「あー、違った意味で可哀想な先輩。あの先輩はすごくいい人だったよな?」
「次の年には自分の実力だけで作品を作り上げて、コンクールでも優勝して、卒業後は本当にパティシエになったからな。あの先輩は凄いよ。俺も尊敬してるんだ」
「分かる。俺も一度だけ会ったけど、本当にいい先輩だったよな。面倒見がよくて、課題を手伝ってくれたお礼だからと焼肉店に連れて行ってくれて、俺まで招待してくれて」
「卒業した後も時々先輩から教えてもらってたんだ。飴細工とかチョコレート細工とか。まあ、先輩に比べたら俺の腕なんて素人同然なんだけど」
「嘘吐くなよ。お前、先輩から勧誘されてたじゃねえか。『俺が独立して自分の店を開いたら一緒に働いてくれないか?』って」
「パティシエは専門外だから断ったよ」
ジャノとフェルナンは時々二人だけしか分からない話をする。先ほどフェルナンの料理のレシピを盗もうと企んでいた名前だけの先輩とは別人のようだ。嬉しそうに先輩のことを語っているのを見ると、本当に心から尊敬できる先輩なんだろう。
「ねえ、フェル。僕もその『先輩』に会ってみたいんだけど、会えるのかな?」
「…………」
「…………」
殿下が「会いたい」と言った瞬間、二人の表情が凍りついた。二人とも何も語らず、お互いに顔を見合わせて困惑した表情を浮かべるだけ。どう説明すればいいのか分からない、という表情だ。前にもこんな顔をしていたことを思い出して、二人が隠しておきたいことなんだろうと察する。ジャノもフェルナンも、頑に祖国の話をしようとしない。ふんわりとした話をしてくれるだけで、具体的なことは何一つ教えてくれなかった。
「もしかして、その『先輩』は祖国の?」
「……はい。俺達と同じ国の人で、もう会うことはできない人です」
「先輩はちゃんと生きてますからね! 二度と会えないっていうのは、えっと遠すぎて会えないというか、俺達が帰れない場所に住んでいるというか」
「まあ、昔のことを考えても仕方ありません。気にしないでください」
「それより、ケーキを食べましょう! 折角フェルナンが作ってくれたんですから!」
また、二人は話を逸らした。やはり知られたくないことなんだろう。俺には話してくれてもいいのに、と少し不機嫌になってしまうが、無理矢理聞き出すことはしたくない。ジルベールとリゼット嬢も知りたそうな顔をしているが、結局何も聞かなかった。
「なあ、フェルナン」
「なんだ? ニコラ」
「いつか、話してくれるか? お前の、祖国の話」
「……んー、必要と判断した時は話してやるよ。面白い話なんてないけどな」
それは逆を言えば、必要ないと判断した場合は一生話してくれないということではないのか? そう疑問に思うものの、また誤魔化されると分かっているから俺は聞かなかった。
「ユベール様。この後、二人だけになったら話します。祖国のこととか、俺のこととか、色々」
「え?」
俺にしか聞こえない声で、ジャノは「祖国について話す」と言ってくれた。昨日も「話したいことがある」と言っていたが、ジャノは最初から俺にだけは話すつもりでいたのだろうか。ジャノとフェルナンが隠していたことをやっと知れる。そう思うと嬉しくて、不安な気持ちも消えてケーキを堪能することができた。恐らく殿下も似たようなことをフェルナンに耳打ちされたのだろう。傷ついたような表情から明るい表情に変わって「美味しい、美味しい」とケーキを食べている。場の雰囲気が明るくなり、ジルベールやリゼット嬢もケーキを口にしてあまりの美味しさに表情が緩んでいる。ニコラとジョエル嬢も同じくケーキを楽しんでいて、全員で楽しい時間を過ごした。
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