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第二部
古代魔導具とロイヤル・ゼロ3
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今日は休んでいいとユベール様に言われ、俺は彼のベッドの中で微睡んでいた。本当は与えられた部屋に戻ろうとしたんだけど、足腰立たず、転んでは大変だということでユベール様の寝室で休ませてもらっている。何度か目が覚めたけど体はまだ休息を求めているらしく、起きては寝て起きては寝てを繰り返していた。
「ジャノ! ジャノ! 起きてください!」
「んん。ユベール、さま? どうか、したんですか?」
「眠っているジャノを起こすのは心苦しいですが、見てもらいたいものがあるんです!」
「見てもらいたい、もの?」
「俺の誕生日パーティーで身に付けるドレスと宝飾品です!」
「え?」
背中に手を添えられてゆっくりと起き上がる。ユベール様はとても嬉しそうな表情をしていて、微睡んでいた俺は完全に目が覚めた。ドレスと宝飾品は結局決まらなかった筈。それなのに、もう決まったのか? まさか、態々新しいドレスと宝飾品を用意したのか? 全てオーダーメイドの一級品を……
「それも考えましたが、まだ依頼していません。する必要もなくなったんです」
「そ、そうですか」
「見れば分かります! ジャノの部屋に運びましたから、一度見てください!」
「は、はい」
ベッドから降りて立ち上がろうとすると、ユベール様に抱き上げられてしまった。俺が驚いて「自分で歩けます!」と言ったら「ダメです。転んで怪我をしたら大変でしょう? 俺が連れて行きます」と返されて俺は黙るしかなかった。真剣な表情で言われたら黙るしかないもん。
ユベール様にお姫様抱っこされた状態で、俺は与えられた部屋に入室した。部屋の中にはレイモンさんとステラさんが待機していて、二人の間にユベール様が言っていたドレスと宝飾品が用意されていた。紺をベースとした生地には胸から腰にかけて白い百合の模様が入っていて、スカートにも百合の模様が入っていた。膝下から足元にかけては白いレースのような素材がふんわりと広がっている。近くでよく見ると、一部の百合と葉は銀糸で刺繍が施されていて、上品な仕上がりになっている。見れば見るほど美しくて、長い黒髪の女の子が着たら似合うだろうなあ、と思う。ジョエルちゃんとか。
「……この模様、着物の柄に似ている気がする」
「キモノ?」
「えっと、その……着物は俺の故郷の民族衣装で、花や植物が布に描かれているんです。落ち着いた柄もあれば、とっても華やかなものもあって、とても綺麗なんですよ。それに似ているな、と思って」
女性用の、だけど。この世界に着物は存在しない。俺も着物についての知識はほとんどないので、成人式のを参考に言っているだけだ。このドレスの柄は落ち着いていて上品で、今まで誰も見たことがないものだと思う。繊細な模様のレースが施されたドレスや、グラデーションになっているドレス、生地が複雑に縫われているドレスはいくつも見てきたけど、メインとなる生地自体に花の模様が入っているのはこのドレスだけかもしれない。探したら花柄のドレスもあるのかもしれないけど。
「ジャノ。着てみてください」
「え!? で、でも、これ、絶対に高いですよね? ネックレスに使われている宝石も今まで見たことがないくらい大きいし、耳飾りもブレスレットも指輪もすごく輝いているような気がするし……」
「当然です! ロイヤル・ゼロですから!」
「は?」
「これ、ロイヤル・ゼロなんですよ! 今朝、慌てたレイモンに呼ばれて保管室に入ったら、古代魔導具とロイヤル・ゼロが本来の力を取り戻していたんです!」
「え?」
「最初に見たものでも十分美しかったのですが、俺の誕生日パーティーでジャノが着るものですから妥協は一切許しませんでした! 色々と無理なお願いをしてしまいましたが、俺の要望を完璧に手直しするなんて、流石は古代魔導具! 流石はロイヤル・ゼロですね!」
「な、何をしてるんですか!? ユベール様! 古代魔導具に無理なお願いって、何をお願いしたんですか!? なんか最初に見た時息切れしているように見えたのって、そのせいなんですか!?」
「ユベール坊っちゃまは拘りが強いので」
「拘りが強いで片付けられる問題じゃないですよね!? 古代魔導具に無理強いしちゃダメですよ!」
「あぁ、ジャノ……貴方はやはり心の美しい人だ。そんなジャノだからこそ、この古代魔導具も貴方を選んだのでしょうね」
「美談にしても騙されませんからね! ブラック企業! ダメ! ゼッタイ!」
いや、本当に何をしてるんですか! この人は! 古代魔導具が本来の力を取り戻したことにも驚きだけど、世界遺産レベルのものにクレーム入れて手直しさせるとかブラックでしかない!
「ジャノ! お願いです! このドレスを着てみてください!」
「は、はい」
最初から拒否権なんて用意されていない。着ないとユベール様が更に暴走しそうな気がする。俺に、着る以外の選択肢は与えられていないのだ。悲しいな。
ステラさんとレイモンさんが手伝ってくれたので、苦労せずドレスを着ることができた。背中のファスナーはユベール様が上げてくれた。というより、ユベール様が「これは俺がやるから二人は控えていてくれ」と言って聞かなかったのだ。ドレスを着せてくれた時に気付いたが、後ろには銀色のリボンがふんわりと広がっている。着物の帯を意識しているんだろうな。よく見ると小さな百合の模様がうっすら入っていた。光に反射すると金色にも見える。凝ってるなあ。
「あぁ。美しいです。ジャノ」
「どうも」
ドレス自体は綺麗なんだけどなあ。俺が着るとどうしても……ユベール様は平凡な男のドレス姿を見てどこを美しいと思っているのか。分からない。俺が遠い目をしている内に、宝飾品も飾られていく。王族や大富豪が持っていそうな宝飾品を。使われている宝石はシンプルで、サファイアとダイヤモンド。メインはサファイアで、その周囲をダイヤモンドが囲んでいる。全て同じデザインで、ブレスレットだけ小さなサファイアとダイヤモンドが交互に連なっているシンプルなものだった。それでも輝きは今まで見た宝石の中で一番美しい。ネックレスに使われているサファイアが一番大きくて、自ら輝きを放っているように見える。大きすぎて派手なんじゃないかと思ったけど、そんなことはなく、むしろドレスの上品さや美しさがより一層引き出されているような気さえする。
「どうしよう。ジャノのこんな美しい姿を、他の貴族達に見せたくない」
「それは無理なんじゃ……」
「ユベール様の気持ちも分かりますわ。まさかロイヤル・ゼロの輝きをこの目で見ることができるなんて……」
「この姿を見てしまうと、他のドレスと宝飾品では、と思ってしまいますね」
「ちなみに、ロイヤル・ゼロってどれくらいの価値があるんでしょうか?」
「この世界にたった二つしかない貴重なものです。値段なんて付けられる筈がありません」
「やっぱり世界遺産レベル!」
ロイヤルだけでもお高いのに、更に上をいくロイヤル・ゼロを身に付けることになろうとは! というか、なんで急に輝きを取り戻したんだ? 古代魔導具って約数千年もの間、白いワンピースの状態だったんだろ? ロイヤル・ゼロも石膏のような素材だったし、目覚める切っ掛けはなんだったんだ? と俺が疑問に思っていると、俺の目の前に文字が浮かび上がった。
初めまして。ご主人様。私は「古代魔導具 ロイヤル・ゼロ 弐式」通称リリーと申します。ご主人様が安心して快適に過ごせるようサポートさせていただきますので、よろしくお願いします。
「日本語?」
浮かび上がった文字は前世で見慣れた日本語だった。この世界で使われているのはアルファベットに似た文字だ。今までずっとこの世界の文字を使っていたから、久しぶりに日本語を見て懐かしさを感じる。けれど、古代魔導具がどうして日本語を知っているのかという疑問が浮上する。だって、この世界にはない文字だから。俺が首を傾げていると、また文字が浮かび上がった。
この文字は私の創造主様達が使用していたのです。今の言語に修正することも可能ですが、どうしますか?
俺の知りたかったことを教えてくれて、ちょっと驚いてしまう。古代魔導具はやっぱり凄い。そう感心しつつ、俺は心の中で「日本語のままで大丈夫だよ」とリリーちゃんに伝えた。リリーちゃんは「分かりました。変更希望があれば教えてください。直ぐに対応します」という文字を浮かび上がらせた。この文字はユベール様達にも見えるのか疑問に思って聞いてみると、俺にしか読めないと教えてくれた。
他にも幾つか気になることをリリーちゃんに聞いてみた。古代魔導具とロイヤル・ゼロについて。原動力になっているのはネックレスの一番大きな宝石。この宝石には膨大な魔力が溜め込まれていて、その魔力を使って古代魔導具を様々な衣装に作り変えることができるのだという。魔力は空気中に充満しているから魔力が枯渇することはないこと。一度作った衣装は記憶され、二回目以降は瞬時にその衣装に変えることが可能であること。リリーちゃんが宿っているのはロイヤル・ゼロで、古代魔導具と連動していること。弐式ということは、壱式も存在するのかと俺が聞いてみると「それはローズお姉様のことですね」と教えてくれた。ミシェル家に保管されているロイヤル・ゼロはリリーちゃんのお姉さんらしい。ローズさんとリリーちゃんは姉妹なのだそう。
「ジャノ? どうしたんですか?」
「え? あ、ごめんなさい! リリーちゃんの説明を読んでいたら、つい夢中になっちゃって」
「リリーちゃん?」
「えっと、教えても大丈夫?」
リリーちゃんに聞いたら「問題ありません」と答えが返ってきたので、俺はユベール様達に説明した。リリーちゃんと意思疎通ができることと、古代魔導具とロイヤル・ゼロについて。リリーちゃんが俺をご主人様と呼んでいることも伝えると、ユベール様とステラさんが感動して涙を流してしまった。な、何故!?
「ロイヤル・ゼロは別名『生きた宝石』と呼ばれているんです。宝石自身が主を選ぶからだと言い伝えられていたのですが、まさか本当のことだったとは……」
「そ、そうですか。確かに『生きた宝石』ですね」
リリーちゃんの本体? 心臓部分? がネックレスのサファイアであることもユベール様達に説明した。消費した魔力は空気中に漂う魔力で補えることも。ユベール様は驚いていた。今の技術では意思を持った魔導具を作れないのは勿論、自動で魔力を補う魔方陣も技術も開発されていない。と、いうことは、以前ユベール様が言った通り、古代文明は今よりもかなり発展していた可能性が非常に高い。今まで解明できなかった謎も、リリーちゃんが目覚めたことで解明されていくかもしれない。
「ジャノ! ジャノ! 起きてください!」
「んん。ユベール、さま? どうか、したんですか?」
「眠っているジャノを起こすのは心苦しいですが、見てもらいたいものがあるんです!」
「見てもらいたい、もの?」
「俺の誕生日パーティーで身に付けるドレスと宝飾品です!」
「え?」
背中に手を添えられてゆっくりと起き上がる。ユベール様はとても嬉しそうな表情をしていて、微睡んでいた俺は完全に目が覚めた。ドレスと宝飾品は結局決まらなかった筈。それなのに、もう決まったのか? まさか、態々新しいドレスと宝飾品を用意したのか? 全てオーダーメイドの一級品を……
「それも考えましたが、まだ依頼していません。する必要もなくなったんです」
「そ、そうですか」
「見れば分かります! ジャノの部屋に運びましたから、一度見てください!」
「は、はい」
ベッドから降りて立ち上がろうとすると、ユベール様に抱き上げられてしまった。俺が驚いて「自分で歩けます!」と言ったら「ダメです。転んで怪我をしたら大変でしょう? 俺が連れて行きます」と返されて俺は黙るしかなかった。真剣な表情で言われたら黙るしかないもん。
ユベール様にお姫様抱っこされた状態で、俺は与えられた部屋に入室した。部屋の中にはレイモンさんとステラさんが待機していて、二人の間にユベール様が言っていたドレスと宝飾品が用意されていた。紺をベースとした生地には胸から腰にかけて白い百合の模様が入っていて、スカートにも百合の模様が入っていた。膝下から足元にかけては白いレースのような素材がふんわりと広がっている。近くでよく見ると、一部の百合と葉は銀糸で刺繍が施されていて、上品な仕上がりになっている。見れば見るほど美しくて、長い黒髪の女の子が着たら似合うだろうなあ、と思う。ジョエルちゃんとか。
「……この模様、着物の柄に似ている気がする」
「キモノ?」
「えっと、その……着物は俺の故郷の民族衣装で、花や植物が布に描かれているんです。落ち着いた柄もあれば、とっても華やかなものもあって、とても綺麗なんですよ。それに似ているな、と思って」
女性用の、だけど。この世界に着物は存在しない。俺も着物についての知識はほとんどないので、成人式のを参考に言っているだけだ。このドレスの柄は落ち着いていて上品で、今まで誰も見たことがないものだと思う。繊細な模様のレースが施されたドレスや、グラデーションになっているドレス、生地が複雑に縫われているドレスはいくつも見てきたけど、メインとなる生地自体に花の模様が入っているのはこのドレスだけかもしれない。探したら花柄のドレスもあるのかもしれないけど。
「ジャノ。着てみてください」
「え!? で、でも、これ、絶対に高いですよね? ネックレスに使われている宝石も今まで見たことがないくらい大きいし、耳飾りもブレスレットも指輪もすごく輝いているような気がするし……」
「当然です! ロイヤル・ゼロですから!」
「は?」
「これ、ロイヤル・ゼロなんですよ! 今朝、慌てたレイモンに呼ばれて保管室に入ったら、古代魔導具とロイヤル・ゼロが本来の力を取り戻していたんです!」
「え?」
「最初に見たものでも十分美しかったのですが、俺の誕生日パーティーでジャノが着るものですから妥協は一切許しませんでした! 色々と無理なお願いをしてしまいましたが、俺の要望を完璧に手直しするなんて、流石は古代魔導具! 流石はロイヤル・ゼロですね!」
「な、何をしてるんですか!? ユベール様! 古代魔導具に無理なお願いって、何をお願いしたんですか!? なんか最初に見た時息切れしているように見えたのって、そのせいなんですか!?」
「ユベール坊っちゃまは拘りが強いので」
「拘りが強いで片付けられる問題じゃないですよね!? 古代魔導具に無理強いしちゃダメですよ!」
「あぁ、ジャノ……貴方はやはり心の美しい人だ。そんなジャノだからこそ、この古代魔導具も貴方を選んだのでしょうね」
「美談にしても騙されませんからね! ブラック企業! ダメ! ゼッタイ!」
いや、本当に何をしてるんですか! この人は! 古代魔導具が本来の力を取り戻したことにも驚きだけど、世界遺産レベルのものにクレーム入れて手直しさせるとかブラックでしかない!
「ジャノ! お願いです! このドレスを着てみてください!」
「は、はい」
最初から拒否権なんて用意されていない。着ないとユベール様が更に暴走しそうな気がする。俺に、着る以外の選択肢は与えられていないのだ。悲しいな。
ステラさんとレイモンさんが手伝ってくれたので、苦労せずドレスを着ることができた。背中のファスナーはユベール様が上げてくれた。というより、ユベール様が「これは俺がやるから二人は控えていてくれ」と言って聞かなかったのだ。ドレスを着せてくれた時に気付いたが、後ろには銀色のリボンがふんわりと広がっている。着物の帯を意識しているんだろうな。よく見ると小さな百合の模様がうっすら入っていた。光に反射すると金色にも見える。凝ってるなあ。
「あぁ。美しいです。ジャノ」
「どうも」
ドレス自体は綺麗なんだけどなあ。俺が着るとどうしても……ユベール様は平凡な男のドレス姿を見てどこを美しいと思っているのか。分からない。俺が遠い目をしている内に、宝飾品も飾られていく。王族や大富豪が持っていそうな宝飾品を。使われている宝石はシンプルで、サファイアとダイヤモンド。メインはサファイアで、その周囲をダイヤモンドが囲んでいる。全て同じデザインで、ブレスレットだけ小さなサファイアとダイヤモンドが交互に連なっているシンプルなものだった。それでも輝きは今まで見た宝石の中で一番美しい。ネックレスに使われているサファイアが一番大きくて、自ら輝きを放っているように見える。大きすぎて派手なんじゃないかと思ったけど、そんなことはなく、むしろドレスの上品さや美しさがより一層引き出されているような気さえする。
「どうしよう。ジャノのこんな美しい姿を、他の貴族達に見せたくない」
「それは無理なんじゃ……」
「ユベール様の気持ちも分かりますわ。まさかロイヤル・ゼロの輝きをこの目で見ることができるなんて……」
「この姿を見てしまうと、他のドレスと宝飾品では、と思ってしまいますね」
「ちなみに、ロイヤル・ゼロってどれくらいの価値があるんでしょうか?」
「この世界にたった二つしかない貴重なものです。値段なんて付けられる筈がありません」
「やっぱり世界遺産レベル!」
ロイヤルだけでもお高いのに、更に上をいくロイヤル・ゼロを身に付けることになろうとは! というか、なんで急に輝きを取り戻したんだ? 古代魔導具って約数千年もの間、白いワンピースの状態だったんだろ? ロイヤル・ゼロも石膏のような素材だったし、目覚める切っ掛けはなんだったんだ? と俺が疑問に思っていると、俺の目の前に文字が浮かび上がった。
初めまして。ご主人様。私は「古代魔導具 ロイヤル・ゼロ 弐式」通称リリーと申します。ご主人様が安心して快適に過ごせるようサポートさせていただきますので、よろしくお願いします。
「日本語?」
浮かび上がった文字は前世で見慣れた日本語だった。この世界で使われているのはアルファベットに似た文字だ。今までずっとこの世界の文字を使っていたから、久しぶりに日本語を見て懐かしさを感じる。けれど、古代魔導具がどうして日本語を知っているのかという疑問が浮上する。だって、この世界にはない文字だから。俺が首を傾げていると、また文字が浮かび上がった。
この文字は私の創造主様達が使用していたのです。今の言語に修正することも可能ですが、どうしますか?
俺の知りたかったことを教えてくれて、ちょっと驚いてしまう。古代魔導具はやっぱり凄い。そう感心しつつ、俺は心の中で「日本語のままで大丈夫だよ」とリリーちゃんに伝えた。リリーちゃんは「分かりました。変更希望があれば教えてください。直ぐに対応します」という文字を浮かび上がらせた。この文字はユベール様達にも見えるのか疑問に思って聞いてみると、俺にしか読めないと教えてくれた。
他にも幾つか気になることをリリーちゃんに聞いてみた。古代魔導具とロイヤル・ゼロについて。原動力になっているのはネックレスの一番大きな宝石。この宝石には膨大な魔力が溜め込まれていて、その魔力を使って古代魔導具を様々な衣装に作り変えることができるのだという。魔力は空気中に充満しているから魔力が枯渇することはないこと。一度作った衣装は記憶され、二回目以降は瞬時にその衣装に変えることが可能であること。リリーちゃんが宿っているのはロイヤル・ゼロで、古代魔導具と連動していること。弐式ということは、壱式も存在するのかと俺が聞いてみると「それはローズお姉様のことですね」と教えてくれた。ミシェル家に保管されているロイヤル・ゼロはリリーちゃんのお姉さんらしい。ローズさんとリリーちゃんは姉妹なのだそう。
「ジャノ? どうしたんですか?」
「え? あ、ごめんなさい! リリーちゃんの説明を読んでいたら、つい夢中になっちゃって」
「リリーちゃん?」
「えっと、教えても大丈夫?」
リリーちゃんに聞いたら「問題ありません」と答えが返ってきたので、俺はユベール様達に説明した。リリーちゃんと意思疎通ができることと、古代魔導具とロイヤル・ゼロについて。リリーちゃんが俺をご主人様と呼んでいることも伝えると、ユベール様とステラさんが感動して涙を流してしまった。な、何故!?
「ロイヤル・ゼロは別名『生きた宝石』と呼ばれているんです。宝石自身が主を選ぶからだと言い伝えられていたのですが、まさか本当のことだったとは……」
「そ、そうですか。確かに『生きた宝石』ですね」
リリーちゃんの本体? 心臓部分? がネックレスのサファイアであることもユベール様達に説明した。消費した魔力は空気中に漂う魔力で補えることも。ユベール様は驚いていた。今の技術では意思を持った魔導具を作れないのは勿論、自動で魔力を補う魔方陣も技術も開発されていない。と、いうことは、以前ユベール様が言った通り、古代文明は今よりもかなり発展していた可能性が非常に高い。今まで解明できなかった謎も、リリーちゃんが目覚めたことで解明されていくかもしれない。
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