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4 冒険者登録

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 納得のいかない仲間たちをそのまま引き連れて、私達は首都へと入る。私のことを見咎められないかと思ったが、どうやらSランク冒険者の信頼は厚いようで、何も聞かれず顔パスで通過した。
 有名人らしい彼らは、羨望のまなざしを道行く人から向けられながら、冒険者ギルドへと向かった。

 冒険者ギルドは、賑やかな商店の立ち並ぶ場所の中にあって、ひときわ大きな建物だ。大きさから考えて、酒場も併設されていそうだった。

「ギルドへの報告は俺がする。シーナの冒険者登録も済ませたいからな。」
「私も行きますわ、ユズフェルト様。」
「私は失礼する。」

 コリンナは上目遣いでユズフェルトに付き合うと言って、反対にナガミというエルフはさっさと歩き去った。

「いや、先に帰っていてくれ。シーナのために空き部屋を整えて欲しいのだが、頼んでもいいか?」
「なっ・・・わかりましたわ。私がやらなければ、ユズフェルト様がなさるのでしょうし・・・殿方に乙女の部屋の用意などさせられませんわ。」
「助かる。」
「俺は野暮用があるから、今夜は遅くなるよ。」
「わかった。痴情のもつれは起こすなよ。」
「はいはい。」
 アーマスは、後ろ手にひらひらと手を振って、人ごみに消えていく。それに続いて、コリンナもユズフェルトに可愛らしく挨拶をしてから、行ってしまった。

 残ったのは、私とユズフェルト、アムだけだ。アムは大荷物を抱えているから真っ先に帰るべき人だろうに、最後まで彼は残っていた。

「アム、今日は自炊するから・・・一緒に食うか?」
「はい。なら、僕は食材を買ってきます。何か希望はありますか?」
「・・・おいしそうな肉なら何でもいい。あとは、肉を柔らかくする果物が欲しいな。」
「今日はステーキですか。わかりました、適当に買ってきます。」
「あぁ。」

 アムは、ユズフェルトに一度頭を下げてから、軽い足取りで行ってしまった。あの大荷物に、さらに今夜の食材を追加するのだろうか。まさかね。

「え・・・」
「どうした?」
「いや、アムが何か買おうとしていて・・・」
「頼んだからな。聞いていなかったのか?」
「あんな大荷物なのに、可哀そうだと思うけど?」
「大丈夫だ。アムはあの程度へでもないからな。さて、俺たちもさっさと用事を済まそう。」

 何事もないように言って、ユズフェルトは扉を開けて私が入るのを待っている。それを見た周りの視線が痛い。

「あの、そんなことしなくてもいいから。」
「俺の主だからな。これくらい当然だ。」
「主・・・はぁ。この話は後にしよう。ありがとう。」

 主だなんだと話をするのは、人目がないところでするべきと考えて、扉を開けて待っていてくれたユズフェルトに礼を言って、冒険者ギルドに入った。



 冒険者ギルドの中は賑やかで、やはり酒場が併設されていた。もうすでに酔っぱらいたちがいて、歌を歌ったり机の上に乗って剣舞を披露している者もいる・・・危ないな!

「シーナ、酒場が気になるのか?」
「ちょっと物珍しくて。初めて来たのこういうところ。」
「そうか。なら今度連れて来よう。今日は、ハウスで夕食を取ることになっているからな。」
「ハウス?」
「俺たちパーティーメンバーの家だ。これが終わったら案内する。」

 ユズフェルトと話していたら、一番奥にあるカウンターの前に着いた。ユズフェルトが受付の人と話している間に、私は周囲を見回した。

 目が合う。
 目をそらした。

 目が合う。

「・・・」

 ユズフェルトの方に顔を向けた。
 あれ、なんだかすごい注目の的になっているような気がする。気のせいかな?

 チラっ。目が合った。

「シーナ。」
「え、何?」
「これが冒険者の証だ。ネックレスと同じで、肌身離さず持っていてくれ。」

 そう言って、ユズフェルトは私の首に黒い紐にドッグタグのようなものを通した、冒険者の証を付けた。紐はすでに結ばれていたので、頭をくぐらせて付けてもらった。

「紐が長すぎて落としそう。」
「大丈夫だ。落としても3時間たつと手元に戻ってくる。」
「ひっ!の、呪いでしょ、それ!」

 捨てても捨てても戻ってくる呪いのアイテム。それがこの冒険者の証だった。

「ははっ。シーナは、からかいがいがあるな!さて、登録も終わったし、俺たちのハウスに案内するよ。」
「じょ、冗談だったの?」
「どうだろう?」
「・・・」

 私は冒険者タグを見下ろした。何の変哲もないものだけど、同じように身に着けているネックレスだって、ただのネックレスにしか思えないので、見た目ではわからない。
 呪われていないといいけど・・・いや、そしたら落とした時困るな。

 冒険者タグのことを考えていたら、先ほど感じていた視線のことなど気にならなくなって、いつの間にか冒険者ギルドを出ていた。

「はぐれないようにな。」
「・・・どれだけ子ども扱いしているの!?」

 人通りの多いところは心配だと、ユズフェルトは私と手をつないだ。

「俺、方向音痴なんだ。」
「ユズフェルトが子供なのねっ!?」
「ははっ。さ、行こう。」

 またからかわれたようだ。でも、こちらの方がいいと思った。
 洞窟にいた時のユズフェルトは、罪悪感からか真面目な顔ばかりで重たいことばかり言って、押しつぶされてしまいそうな顔をしていた。
 こちらの方が心の健康にいいだろう。・・・ちょっと気に食わないけどね。


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