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4 家

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 鳥のさえずりが聞こえる。朝が来た。
 目を開けると、見知らぬ部屋にいた。机やいす、たんすなど一通りの家具がそろった部屋を見て、私は思い出した。
「そっか、楽園島に来たのだっけ。」

 朝日が、私の顔を照らす。カーテンは閉めていない。
 昨日、あまりにも星空が綺麗だからと、カーテンを開けて、星を見ながら眠ってしまったからだ。

 外を見れば、清々しい青空と輝く太陽。今日もいい天気だ。


 コンコン。部屋の扉が控えめにノックされて、次に聞こえるか聞こえないか程の小さな声がした。
「失礼、お目覚めですか?」
 その声の主は、昨日一緒に過ごした彼だとすぐにわかる。

「起きてるよ。ちょっと待ってね。」
 そう返事をして、私はテーブルの上に置いてある手鏡を手に取って、今の自分の姿を確認する。少し髪がぼさっとなっていたので、手櫛で直し鏡をもとの位置に戻した。
「いいよ、入って。」

 扉がゆっくり開き、彼が部屋の中へと入ってきた。
「おはようございます。少し早かったようですね。」
「おはよう。ごめんね、こんな格好で。」
 パジャマ姿の私は、少し照れながら言う。

「そのために、早めに来ました。お困りかと思って。」
 彼は、手に持っていた紙袋を私に渡した。

「着替えです。見繕ったものなので、気に入っていただけると嬉しいですが。あ、もちろんインナーは、他に頼みましたが。」
 その言葉で、私は着替えを持っていないことに気づいた。一応、昨日着ていた服はあるが、流石に今日も着るのは辛い。

 私は、楽園島に何も持ってきていなかったのだ。お金も必要ない島とわかっていたからだとは思うが、流石に生活用品などは準備しておくべきだった。

「ありがとう。お金が必要ないからって、着の身着のままきちゃうなんて・・・ちょっと恥ずかしいかも。」
「・・・あなたの服を選ぶのは楽しかったので、それでよかったですよ。他に欲しいものはありますか?一応、女性に必要そうなものは、一階の段ボールの中に用意していますから、後で見といてください。他に何か必要なものがあれば、言ってください。用意しますから。」
 微笑む彼の顔が眩しい。どれだけいい人なのだろうか。

「とっても助かるよ。えっと、開けていい?」
 紙袋を机に置きながら聞くと、彼は笑って頷く。私はそれを見て、紙袋を開けた。

 中には、薄手のニットと、ミニスカートが入っていた。可愛い。
 ニットの方は、通気性がよさそうで、涼しそうな感じ。この島の気候は、春に近いので環境にあった服だ。ちなみに、色は薄いピンク。

 ミニスカートの方は、学校の制服のような折り目が付いたもので、色は水色だ。

 他にも、こまごまとしたものが入っているのが見える。

「ありがとう、可愛い服だね。」
「気に入っていただけて良かったです。では、私は一階で待っていますので、ゆっくり準備してください。」
「わかった。すぐに着替えていくよ。」
「ゆっくりでいいですよ。楽園は、時間に追われる必要なんてありませんから。何もかも、ここでは自由ですから。」
 そう言って彼は部屋を出て行く。

 私は、彼にはゆっくりでいいと言われたが、自由にしていいとも言われたので、早く彼と話をしたい一心で、着替えた。3分もかかっていないと思う。

 着替えは、一度洗濯されているようで、甘い柔軟剤の香りがしてなんだかほっとする。糊の匂いやタンスの匂いがついた服でなくてよかった。

 そして、部屋を出る。寝室は二階にあり、彼がいるのは一階なので、階段を下りた。
 この家は、彼が私のために用意してくれた家で、私は楽園にいる間ここで暮らすことになっている。二階建てで、その上に物置部屋がある。各階は一人で暮らすには少し広すぎるし、余るほどの部屋がある。

 本当に至れり尽くせりだ、なんてことを考えながら、下に降りて行く。

 階段を下りた先にあるリビングで、彼は紅茶を入れて優雅に過ごしている。私が降りてくると、こちらに視線を向けて微笑んだ。

「おはよう!・・・て、さっきも言ったっけ。」
「おはようございます。いいですよ、挨拶は何度してもいいものですから。」
「そっか。」
 彼と一緒にテーブルの前に腰を掛ける。

「今日はどこを案内いたしましょうか。希望などはありますか?」
「うーん・・・今日は天気がいいし、屋外がいいかな。」
「それなら、山登りはいかがですか?登るとは言っても、舗装されているので、散歩をするのと変わりませんが、公園とは違った景色が楽しめますよ。あとは、山神亭という和食屋さんがあります。和食が大丈夫なら、そこで朝食をとりましょうか。」
「いいね。和食ならはずれもなさそうだし・・・山登りしようか!」

 今日の行き先は決まった。
 私たちは、紅茶を一杯飲み終わると、山へと向かった。まだ朝食を食べていないので、食事が先だから、山神亭に向かったと言った方が正しいかもしれない。


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