【完結】見世物見世物少女の転移逆転記

製作する黒猫

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 今日も一人で勉強をしようかと考えて、朝食のパンを食べ終えました。すると、向かい側ですでに朝食を済ませて新聞を読んでいる彼が声をかけてきます。



「今日は出かけようと思う。」

「あぁ、今日はお休みなんですね。いってらっしゃいませ。」

「・・・誘っているのだが。」

「え・・・私も行っていいのですか?」



 この屋敷に来てから、ずっと外出していません。魔物園でも外に出ることなどなかったので気にしていませんが、彼はどうやら気になっていたようです。



「家にこもっていると、気が滅入るだろう。少しは外の空気を吸わせてやろうかと思ってな。それに、せっかく別の世界に来たのだから、色々見て周ったらいい。」

「ありがとうございます!・・・私は魔物園のことしか知りませんので、あちらとこちらの違いはほとんどわからないでしょうが、人間がどのような生活をしているのかは実際見てみたかったんです。」

「・・・そうか。なら、この一週間もそれなりに楽しんでいたのか?」



 この一週間、何も勉強だけしていたわけではありません。世話を焼いてくれる人間の観察や屋敷で働く人間の観察、つまり人間観察をしていました。



「はい!人間は、色々な仕事や役割があって面白いですね。私たちは、見世物一択だったので。人間は、同じ種族でもメイドや執事、洗濯婦、料理人・・・貴族と学生・・・いろいろな仕事や役割があるんですね。」

「そうだな。だが、今お前が挙げたのはごく一部だ。もっと多くの仕事と役割が人間社会にはある。」

「この屋敷だけでもこれですから・・・世界にはたくさんの仕事がありそうですね。」

「あぁ。・・・お前、人間が好きなのか?」

「どうしてですか?」

「人間に興味がありそうだからだ。興味があるということは、好きなのだろうかと思ったが違うのか?」



 人間に興味がある、好きだなんて考えたこともありませんでした。

 確かに、人間の言葉を学んだり、その生活の話を聞くのは好きです。でも、それは人間が好きだということなのですか?わかりません。ただ・・・



 いつも、人間の話を聞くたび思うことがあります。なぜ、私たちリスフィと人間でこうも違いがあるのかと。



 一度、飼育員様にそのことを聞いたことがあります。

 リスフィと人間、羽があるのとないの、能力の差・・・他に何が違うのかと。なぜ、私は人間にはなれないのかと聞いたことがあります。



 お前はリスフィで、魔物だからだ。一番の違いは、魔物であることだ。



 それだけの違いで、私たちは見世物にされることになったのです。







「とりあえず、今日は出かけるからそのつもりで。朝食は食べ終えたな?だったら、あと一時間後に出発するから、準備をしておいてくれ。」

「わかりました。・・・あの、準備って何をすればいいのですか?」

「そうだな・・・一般的には身だしなみを整えて、手持ちの金を確認するだろうが、お前にはどちらも必要ないな。」

「・・・?」

「お前は、十分整っているし、金は俺が払う。心の準備だけはしておいてくれ。」

「わかりました。」



 褒められたのでしょうか?ですが、リスフィの容姿が整っているのは当たり前なので、特に何も感じません。



「えーと、あなたは準備をしないのですか?」

「俺は、もうすでに準備を終えた。」



 確かに、彼は外出用の服装になっています。室内用だとシャツとズボンですが、外出用だとベストを着て、ジャケットを羽織ります。シャツも、ちょっと洒落たもののように感じますが、よくわかりません。なんとなく、外出用なんだなと分かる程度です。



 確かに準備はできているようなので、私は気になっていることを聞くことにしました。



「そうですか。なら、出かける前に少しいいですか?」

「かまわない。」

「実は、お金に興味があって。お金について詳しく教えてもらえませんか?」



 お金。

 食べ物や衣服を買うことができるものという知識はあります。ですが、実際にそれを見たことはありませんので、とても興味がありました。



 彼は少し眉をひそめて私の顔を見つめましたが、唐突に笑って懐から布袋を取り出しました。



「本当に知りたいだけのようだな。」

「はい?」

「いや、悪かった。何か企んでいるのかと思ってな。お前がそんなことするわけないのに、悪かったな。」

「企むって、何を企むのですか?」

「まぁ、逃亡とか?」

「・・・意味が分かりません。」

「そうか。」



 彼は嬉しそうに笑って、布袋から中身を取り出します。机に置いたそれは、丸い形をした平べったい金属でした。後に、これが金貨と呼ばれるものだと知ります。



「これが金だ。」

「これが・・・」

「手に取ってもいいぞ。」



 手に取ると、そこそこの重みがあって、驚きました。一枚ならまだしも、これを何十枚と持ち歩くのは、重くて大変そうです。



 私がお金の重みに驚いたのを見て、彼はまた面白そうに笑ってお金の説明をしてくれました。一通り説明されて、いまいち理解はできませんでしたが、いつでも教えてやるからと頭をなでられて、お金の説明は終わりました。



 もう、出発の時間が来ていたのですね。あっという間の時間でした。





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