【完結】見世物見世物少女の転移逆転記

製作する黒猫

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3 この世界

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 この世界では、人間の国と魔物の国があり戦争をしている。それぞれ、人間の国は19ヵ国、魔物の国は7カ国あるが、同族同士での戦争は10年以上行われておらず、今は人間対魔物の戦争のみを行っている。



「人間は、魔法の力を手に入れてないのですか?」

「魔法とか、おとぎ話だな。俺たちは武器を使って戦っている。剣や弓、銃。戦争になれば、ミサイルなどを使っているな。ただ、ミサイルの数は少ないから、ミサイルを使えば絶対に勝てる戦いと、絶対に負けられない戦いにのみ使用している。」

「みさいる?」



 説明を聞いてもよくわからなかったですが、どうやらそれは多くの命を奪うために作られたもののようです。



「・・・それにしても、俺は勇者なんて信じていなかったが、こういうこともあるんだな。魔物だから勇者ではないようだが。」

「勇者ですか?」

「こっちの世界のおとぎ話だ。異世界から来た勇者が魔物を倒して、平和な世界にしてくれるっていう・・・予言めいた話だな。結構人気の題材で、色々な作家が同じような物語を書いている。俺は興味がないがな。」

「なら、その勇者は魔法の力を持っているのですね。」



 ここが別の世界だとは思えませんが、私は話を合わせることにしました。

 そもそも、別の世界という意味がよくわかりません。人間と私たち魔物の生活が違うというのを、別の世界と表現されるのをよく聞きますが、そういう意味ではないようですし。



 魔物を倒せる人間といえば、魔法が使える人間です。

 人間より高い身体能力と不思議な力を持つ私たち魔物に人間が勝つには、魔法が必要です。



 不思議な力とは、魔技(マギ)と呼ばれるものです。マギは、口から火を噴いたり、鋭い爪を瞬時に生やしたりなど、魔物それぞれに備わっている技のことです。

 魔法は魔力というものを消費しますが、マギは何も消費することなくそれを使うことができます。その代わり、魔法よりは威力が小さめらしいです。

 実際はどうか知りませんが。



「魔法か。・・・寒くなってきたな。」

「そうですね、日が暮れてきました。」



 魔物園でお披露目された時は真昼間でしたが、今は空の色が変わって赤くなっているので、夕方ですね。

 どれだけ穴が深かったのでしょうか。いや、過去に来ているようなので、時間帯などあまり気にしては駄目ですね。



 過去といえば、昔寝物語で聞かされた話にそういう話がありました。魔物園で育った少女が、タイムスリップして戦争時代、まだ魔物が負けていない時代に行くのです。そこで、少女は人間が魔法を手に入れるのを阻止するのですが、残念ながらそれは失敗に終わりました。

 過去は変わらない。歴史は変えることができないということが言いたかったのですかね?



「お前、これからどうするんだ?俺は、もう帰らなければならないが。」

「・・・どうすればいいですか?」



 どうすればいいのか、わかりません。

 過去に来たとして、異世界とやらに来たとしても、何をすればいいのかわかりません。ずっと魔物園にいた私には、野宿というものがあるのは知っていますが、実際どうやればいいのかはわかりませんし、行くところもありません。



 どうすればいいのでしょうか?



「俺の家に・・・いや、目立つか。その羽さえどうにかなれば、何とか人間だとごまかせるが・・・羽はしまえないよな?」

「羽は隠せますよ。」



 首輪のスイッチを押します。すると、一瞬で私の羽が見えなくなりました。消えたわけではありませんが、周囲の感覚を騙す魔法が展開されているので、羽がないと認識されます。



「な、ホログラムだったのか!?」

「ほろぐらむ?よくわかりませんが、羽がないように認識させているだけで、羽はちゃんとついていますよ。」

「本当か?」



 疑うように羽があった場所に手をやる彼ですが、そこには何もないように感じたのでしょう。顔をしかめます。



「感覚を騙す魔法なので、触れても触れていないと騙されてしまうのです。」

「魔法は、科学より上をいっているのか。何はともあれ、これなら問題はない。俺と一緒に・・・俺の家に来るか?」

「はい!」

「即答か!?もう少し警戒するものかと思ったが。」

「なぜですか?」

「なぜって・・・まぁ、その話は後にするか。」



 彼は、唐突に人差し指と親指を口の方にやって、高い笛のような音を鳴らしました。すると、一頭の馬が駆け寄ってきます。



「マカだ。」

「馬の名前ですか?」

「そうだよ。馬に乗ったことはあるか?」

「ありません。実物も初めて見ました。」



 人を乗せる動物で、移動手段として人は利用するらしいですね。私よりも大きな動物なのでもっと怖いかと思っていましたが、マカは優しげな瞳を持っているので怖くありません。



 マカを見つめていると、体の向きが変えられていつの間にか地面を見ていました。



「え?」

「軽いな。」



 すぐそば、頭上から呟きが聞こえたかと思えば、今度は地面が一気に遠ざかります。



「ひ、ひぃっ!?」

「そんなに驚くことか?」



 何かの上にまたがるように座った私は、どうやらマカに乗っているようでした。しかも、背後には彼がいます。



「あ、あの?」

「しっかり捕まっとけ。」

「ど、どこに!?」

「マカに。毛はむしるなよ。」



 私がマカの体にへばりつくと、背後で噴き出す音が聞こえました。何か?



「全く。背筋を伸ばせ。」

「は、はい。」



 背筋を伸ばして、いったんマカから体を離します。すると、彼が私のお腹のあたりを腕で拘束しました。え、なんで?



「絶対落とさないから心配するな。行くぞ。」

「え、あの、え?」



 左腕で私を支えて?右手で手綱を握るという器用なことを彼は行って、マカを進めます。



 私は、行き場のない手をどうするか悩んで、私の体を支える彼の手を掴みました。



「そんなに心配か。」

「え、えーと。どうすればいいのかわからないのです。」

「まぁ、いいが。」

「・・・あの。」

「なんだ?」

「さっきから胸がドキドキするのですが、なぜでしょうか?」

「・・・!?そ、そういうことは、言うな。」

「も、申し訳ありません!」

「いや・・・別に悪いことじゃない。悪いことじゃないが・・・魔物とはこういうものなのか?」

「?」





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