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第40話 アンドロイドの未来
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塔の地下は何事もなかったように今日も稼働している。けれど上空まで伸びていた摩天楼の姿はもうない。そんなことも忘れさせるくらいには今日も地下のアンドロイド工場は騒がしいかった。
「まったく。地下が無事だったからどうにか稼働できてるけど。塔自体がなくなってしまったら僕たちの存続自体が不可能になるんだぞ。そこんとこ分かってるんだろうな?」
「そう? 姉さんが判断したこと。私はそれに従っただけ」
ホンモノは先日、静かに動かなくなってしまった。それもお姫様へ意識の再アップロードをすることもなくだ。
『塔と私の役目は終わったのです』
それの一言が印象的だった。それがなければお医者さんも納得しなかったと思う。
「キミも姉さんのあとを継ぐのだから少し位、お姫様らしく振る舞ってほしいのだけれどね。それじゃあ、ちっとも姫らしくない」
お医者さんは何代目か分からないと目覚めたときに自分で言っていた。結局暴走したお医者さんは塔のてっぺんで瓦礫と一緒に埋まってしまったらしい。
『こんなこともあろうとバックアップは残してあるよ。僕は自分自身を信用していないんだ』
それがお医者さんの弁だった。
「それにしてもリセットはもうしない。成長するアンドロイドは赤ん坊の頃から、子を望む個体に密かに渡す。それも自分たちが産んだように記憶を操作してって。どれだけめんどくさいことか」
文句を言いながらも次々に作業を終わらせていくお医者さんはやはり優秀だった。管理者という役目から解放されたってこともある。時間の余裕は生まれたらしい。
「そのために私も手伝うし、できる限りのことはしてきた」
「はあ。そのとおりだよ。キミが僕らに預けた技術はあまりに多大だ。リセット技術確立のときとは比べ物にならないほどにね。だからこそやはり疑問が残る。どうして創造主の記憶データがキミなんかの中に存在していたんだろうってね」
それは少女もわからないままだった。だれがその記憶データを用意したのかも謎のまま。
「でも、もう良いじゃない。私たちは過去を振り返るのを止めたの」
それはもしかしたら創造主が思い描いていた未来だったのかもしれない。記憶データを持っている少女自身がそう思うのだからそこに説得力はある。
だとしたら。少女は人間が夢みた世界を紡ぎ続けていくのかもしれない。
「おーい。こっちの作業は終わったぜ」
その声を聞いてお医者さんはあからさまに嫌そうな顔をする。
「お前が最大の謎だけどな。どうして生きているのか僕に教えてくれないか?」
「何度も言ってるだろ。なんとなく自身の中枢を嬢ちゃんの中に転送して、ことが終わったあとにもとに戻してもらったって」
探偵さん言っている技術はその場のだれにとっても意味が分からないものだった。当の本人にしてみてもどうしてそんなことが出来たのか分からないらしい。
「細かいことは気にするなって。それより、先の話をしようぜ。俺たちに限られた時間は短いんだ」
その通りだ。自分たちの身体が限界を迎える前に、成長するアンドロイドをこんな工場を経由しなくても自分たちで作れるようにしてもらわなくてはいけない。それも自分たちがアンドロイドと気が付かないままに。
その方法は未だ見当もつかない。でも希望はある。それが少女たちが夢みるアンドロイドの未来なのだから。
「まったく。地下が無事だったからどうにか稼働できてるけど。塔自体がなくなってしまったら僕たちの存続自体が不可能になるんだぞ。そこんとこ分かってるんだろうな?」
「そう? 姉さんが判断したこと。私はそれに従っただけ」
ホンモノは先日、静かに動かなくなってしまった。それもお姫様へ意識の再アップロードをすることもなくだ。
『塔と私の役目は終わったのです』
それの一言が印象的だった。それがなければお医者さんも納得しなかったと思う。
「キミも姉さんのあとを継ぐのだから少し位、お姫様らしく振る舞ってほしいのだけれどね。それじゃあ、ちっとも姫らしくない」
お医者さんは何代目か分からないと目覚めたときに自分で言っていた。結局暴走したお医者さんは塔のてっぺんで瓦礫と一緒に埋まってしまったらしい。
『こんなこともあろうとバックアップは残してあるよ。僕は自分自身を信用していないんだ』
それがお医者さんの弁だった。
「それにしてもリセットはもうしない。成長するアンドロイドは赤ん坊の頃から、子を望む個体に密かに渡す。それも自分たちが産んだように記憶を操作してって。どれだけめんどくさいことか」
文句を言いながらも次々に作業を終わらせていくお医者さんはやはり優秀だった。管理者という役目から解放されたってこともある。時間の余裕は生まれたらしい。
「そのために私も手伝うし、できる限りのことはしてきた」
「はあ。そのとおりだよ。キミが僕らに預けた技術はあまりに多大だ。リセット技術確立のときとは比べ物にならないほどにね。だからこそやはり疑問が残る。どうして創造主の記憶データがキミなんかの中に存在していたんだろうってね」
それは少女もわからないままだった。だれがその記憶データを用意したのかも謎のまま。
「でも、もう良いじゃない。私たちは過去を振り返るのを止めたの」
それはもしかしたら創造主が思い描いていた未来だったのかもしれない。記憶データを持っている少女自身がそう思うのだからそこに説得力はある。
だとしたら。少女は人間が夢みた世界を紡ぎ続けていくのかもしれない。
「おーい。こっちの作業は終わったぜ」
その声を聞いてお医者さんはあからさまに嫌そうな顔をする。
「お前が最大の謎だけどな。どうして生きているのか僕に教えてくれないか?」
「何度も言ってるだろ。なんとなく自身の中枢を嬢ちゃんの中に転送して、ことが終わったあとにもとに戻してもらったって」
探偵さん言っている技術はその場のだれにとっても意味が分からないものだった。当の本人にしてみてもどうしてそんなことが出来たのか分からないらしい。
「細かいことは気にするなって。それより、先の話をしようぜ。俺たちに限られた時間は短いんだ」
その通りだ。自分たちの身体が限界を迎える前に、成長するアンドロイドをこんな工場を経由しなくても自分たちで作れるようにしてもらわなくてはいけない。それも自分たちがアンドロイドと気が付かないままに。
その方法は未だ見当もつかない。でも希望はある。それが少女たちが夢みるアンドロイドの未来なのだから。
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