上 下
48 / 64

47「魔のアジト発見」

しおりを挟む
 深夜の庶民街。僕はちょっとずつ移動しながら建物に接近。一つ一つ中を探っていく。全く気が遠くなるような地道な作業であるが、人気者になるためには仕方ない。
 人目を避けつつ、闇に紛れて路地を徘徊。魔の気配を探った。
 こんなところ誰かに見られたら、また悪役認定されてしまいそうだ。我ながら怪しすぎる。
 でも、噂は本当みたいだね。夜は見事に人がいない。それだけ皆は警戒しているんだ。

 どうかな?
『おかしな魔力は感じないである』
 空振りが多いので少々作戦を変えた。敵は魔力が外に漏れないようにしている、とはシャンタルの説明だ。
『近くに寄れば感じられる』
 うん。
 路地を走り建物の裏側で、漏れないように行使している魔力を探る。素人目にも高い技術だと思う。
『ここである』
 やっとだ。今度は当たりかな?
 裏口の扉を通り抜ける。壁抜けできるんだけど、習慣とは恐ろしい。人気のない家に入り込むなんて、まるで空き巣だなあ。
 当然誰もいなかった。家具もほとんどない。結構大きな屋敷なのに。
 ここは、空き家なのか……。もったいない。
 空気が澱んでいない。まあまあ掃除もしてある。
 人の出入りがあるみたいだけど、誰も住んでいない?
『調べるである』
 うん。
 廊下にある扉を抜けると階段が下に向かっていた。
 地下があるじゃん。怪しいなあ。
『注意するである』
 石造りの階段を降りると扉に突き当たった。
『何かがいるであるな……』
 ホント~?
 夜は住民が避難している? いやいや、ここまで引っ張ってそんなオチはないでしょう。そろりとドアノブに手をかけ、ゆっくりと回す。
 通り抜けはやめて、扉の隙間から内部を覗く。照明の魔力もあるけど、暗視ゴーグルみたいな力も便利だ。
 倉庫――だよね? 中に入りピンク子猫も続いた。
 なんだよ。拷問道具もなければ鉄格子の監禁部屋が並んでいるわけでもない。奴隷少女を助け出す展開はまるハズレだ。ここってホントに異世界なの?
 全くの期待はずれだねっ!
『床を見るである』
 ん?
 ほこりの上に足跡が多数。それと何かを引きずったような跡がある。これぞまさに足がつくだね。
 見つけた。ここで当たりっぽいね。名探偵もウッカリだ。
 床の一部が木造で開くようになってるのか。ここから更に下に行ける。
 さて……。
 床の蓋を開けると梯子が見えた。このまま降りるのはどうかと思い、首を突っ込む。何事も慎重に。
 なんというか……。
『どうであるか?』
 地下というより洞窟みたいになってるね。結構広いよ。
『ダンジョンの一部、であるか……』
 ダンジョン?
『かつてこの地のダンジョンを制圧し、その上にあった街を整理してこの王都ハウゼンを作り上げたのである』
 へー。ファンタジー世界の設定っぽいね。
『この王都の地下には、いくつもの洞窟が存在している』
 地上に現れている開口の上に、木製の床で蓋をしたようになっている。縦穴は深さ二メートルくらいか……。
 横穴があるみたい。行ってみるよ。
『頼むである』
 跳び降りると、ピンク子猫が肩に乗った。
 広いな。
 一応周囲を確認してから、横穴へと進む。しかしすぐに行き止まりだった。
 落盤があったみたいだけど、風が流れているなあ。先があるよ。
 大きな石をちょっと動かせば、ぎりぎり通れそうだ。
 やってみる?
『すぐ戻るのである。魔の気配が動いている』
 えっ、どこに?
『上に戻るのだ』
 梯子まで引き返し、手を掛けて一気に上に跳ぶ。
 岩肌に人間の目だけが見えた。もう二つ、そして四つ。
 これは、一体……
『ここの壁全体が具現である』
 やっ、べっ!
 一気に飛び上がり、屋敷の床をブチ抜いた。一階の床に戻る。
 逃げる? 戦う? どうしようか?
『あのアバターは厄介である。逃げるである』
 穴からぶっとい触手が何本も湧き出してきた。そのまま廊下を走り表玄関の扉をぶち破って、僕は外に転げ出る。
 建物全体がブルブル震え、壊した玄関の先に密集した触手が見えた。
 参ったな。いきなり始まってしまった。心の準備がまだだよ。
 ぼちぼち敵が出てくるだけだと思ってたけど、建物全体が気味悪い魔獣の巣になっていたんだ。
 あれがボスキャラだよ~。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~

つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。 このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。 しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。 地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。 今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い

八神 凪
ファンタジー
   旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い  【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】  高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。    満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。  彼女も居ないごく普通の男である。  そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。  繁華街へ繰り出す陸。  まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。  陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。  まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。  魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。  次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。  「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。  困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。    元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。  なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。  『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』  そう言い放つと城から追い出そうとする姫。    そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。  残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。  「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」  陸はしがないただのサラリーマン。  しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。  今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――

元勇者のデブ男が愛されハーレムを築くまで

あれい
ファンタジー
田代学はデブ男である。家族には冷たくされ、学校ではいじめを受けてきた。高校入学を前に一人暮らしをするが、高校に行くのが憂鬱だ。引っ越し初日、学は異世界に勇者召喚され、魔王と戦うことになる。そして7年後、学は無事、魔王討伐を成し遂げ、異世界から帰還することになる。だが、学を召喚した女神アイリスは元の世界ではなく、男女比が1:20のパラレルワールドへの帰還を勧めてきて……。

神様に転生させてもらった元社畜はチート能力で異世界に革命をおこす。賢者の石の無限魔力と召喚術の組み合わせって最強では!?

不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
ファンタジー
●あらすじ ブラック企業に勤め過労死してしまった、斉藤タクマ。36歳。彼は神様によってチート能力をもらい異世界に転生をさせてもらう。 賢者の石による魔力無限と、万能な召喚獣を呼べる召喚術。この二つのチートを使いつつ、危機に瀕した猫人族達の村を発展させていく物語。だんだんと村は発展していき他の町とも交易をはじめゆくゆくは大きな大国に!? フェンリルにスライム、猫耳少女、エルフにグータラ娘などいろいろ登場人物に振り回されながらも異世界を楽しんでいきたいと思います。 タイトル変えました。 旧題、賢者の石による無限魔力+最強召喚術による、異世界のんびりスローライフ。~猫人族の村はいずれ大国へと成り上がる~ ※R15は保険です。異世界転生、内政モノです。 あまりシリアスにするつもりもありません。 またタンタンと進みますのでよろしくお願いします。 感想、お気に入りをいただけると執筆の励みになります。 よろしくお願いします。 想像以上に多くの方に読んでいただけており、戸惑っております。本当にありがとうございます。 ※カクヨムさんでも連載はじめました。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

処理中です...