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40「いざ貧民の地へ」

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 不安定ではあるが、僕はかなり歩けるようになってきた。スキル【はいはい】を卒業しつつ【歩行】を目指す。お爺ちゃんの特訓のおかげだね。
 とはいえ、外出はまだまだベビーカーのお世話になっている。

 ドM令嬢とお母さんたちの動きがついに実った。教会が街への支援を決め、貴族の有志が更にそれを支援する、との形で援助活動が始まったのだ。その中に貴族子弟たちも、社会貢献や体験勉強として組み込まれた。
 お母さんは僕を連れて慰問へと向かう。荷馬車に物資を乗せ、お母さんと僕、屋敷の使用人たちが同乗する。

 目的地に到着し、僕は荷馬車から下ろされベビーカーに移される。
 そうか、ここの支援をするんだ。ユルクマの領地じゃん。
 貧民街はいくつかの建物が破壊されていて、住民たちが片付けをしていた。魔獣たちは警備の隙間をついて侵入し街を襲っている。僕もユルクマも手が回らないのだ。
 フェリクス叔父さんがいた。
「姉上、よく来てくれました」
「今日はブラウエル家の物資だけです。これ、クラッセン商会が明日運び込む荷のリストよ」
「うん、助かります。一部はそのまま前線にまわそう。集積所に案内させますよ」
 学院生仲間が操者に場所を説明する。
「医薬品は教会に運びますから」
「これよ。少ないけど」
「ありがたい。不足していたんです」
 叔父さんは指された木箱を抱えた。お母さんは僕の乗るカーを押す。街には武装住民に加え、剣を下げた修道士や冒険者の姿も見える。
「冒険者ギルドがクエストを発動してくれたので助かりましたよ」
「ノルーチェ様はどう?」
「皆頑張ってますよ。感心します」
 貧民街の小さな聖堂は、怪我人と病人であふれていた。貴族少年少女隊は、修道女を手伝って忙しく働いている。
 怪我人の古い包帯を外し、教えてもらいながら【ヒール癒し】をほどこす。
 なるほど一瞬で直るとか、そこまでの効果はないのか。
「周囲は有志の信者で守っています」
「騎士や兵は来ないのですか?」
 お母さんとしては気になるところだ。
「攻撃が始まれば応援が来ます。今は静かですから。それに彼らは森の中で食い止めてくれています。貴族子弟がここにいるのは、よく分かってますから」
「なら、良かったわ」
 万が一でも貴族少年少女隊に何かあれば責任問題になる。
 令嬢ノルーチェがこちらに気がつき修道女に何やら話す。
 ホントはドMなんだし、僕のお尻を叩くよりこっち方面が天職なんじゃないの?
 頭に巻いた赤いバンダナを外しながらこちらにやって来た。
「ばー、くろーさー」ご苦労様です。
「ご活躍のようですね」
「ばーぶーやー」なかなかやるじゃん
「いいえ。まだまだですわ」
 ノルーチェはお母さんの言葉に笑顔で謙遜する。
「皆様たちは教会からの信頼も厚く、もはやいなくてはならない存在です」
 叔父さんのヨイショに、ノルーチェはまんざらでもない表情だ。やりがいの丸出しだね。
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