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第6回活動報告:ハゲタカファンドと戦え
乗っ取りの手口(その2)
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(2)乗っ取りの手口 <続き>
「一つ質問なんだけど・・・」と俺はホセに言った。
「何でしょう?」
「非上場会社でも特殊な特許を持っている会社はあるよね。その場合は同じリスクを抱えているはずだ。なぜ上場企業なの?」
「それは、『株式取得の難易度』と『株価評価方法の違い』が原因だと思います。」
「株式取得の難易度ね。」
「非上場企業を買収しようとすると、その会社の株主に個別に交渉して売却してもらわないといけません。会社の株主が1社であれば、その親会社に交渉すればいいので、特に難しくありません。でも、株主が何十、何百の場合、個別交渉するのが現実的に難しいケースがあるのです。特に少数株主から非上場会社の株式を買取るのは至難の業です。」
「少数株主か・・・。確かに、上場会社の場合はTOB(Take-Over Bid:株式公開買付け)した後、少数株主をスクィーズアウト(Squeeze Out)すればいいだけだね。」
※TOB(Take-Over Bid)は不特定の株主に対して買付価格や期間などを公告して、保有する株式を売ってくれるように勧誘し、買い付けることです。
※スクィーズアウト(Squeeze Out)は『締め出す』という意味で、M&Aにおいて少数株主に対して金銭等を交付して排除することです。
「そうなんです。非上場会社を買収する時に少数株主から株式を買取るのが面倒なんです。」とホセは言った。
「少数株主ね。分かった。株価評価方法の違いは何となく理解できる。」と俺はホセに言った。
「よく分からないんですけど、どういうことですか?」とミゲルが言った。
最近のミゲルは積極的にいろいろ聞いてくる。
ホセイドンの仲間に入って株式投資についてベンチャー企業の経営者に聞かれるから、知っておいた方がいいのだろう。いい機会だと思って、俺はミゲルに説明することにした。
「株価評価の方法が、上場会社と非上場会社で違うんだよ。」
「どう違うんですか?」とミゲルが言った。
「会社の発行する株式を評価する場合、幾つかの評価方法があるんだけど、代表的なのは(図表6-1)の4種類だ。このうち、市場株価法は上場会社の場合に利用して、他の3つの評価方法(DCF法、倍率法、純資産額法)は非上場会社の場合にも利用する。これは大丈夫?」と俺はミゲルに聞いた。
【図表6-1:株価評価方法】
「大丈夫です。ベンチャー企業の経営者と話している時に、『DCF法で10億JDだから・・』とかよく使いますから。」とミゲル言った。
ホセイドン絡みの打ち合わせで、株価評価方法はよく聞くようだ。
「それで、非上場会社を株式評価額は、純資産額法による株式価値が下限になる場合が多い。純資産額は清算価値とみなされるからね。すなわち、PBRが1未満の非上場会社はほとんどないんだ。」
「確かに。純資産を下回わる株価を聞いたことがありませんね。ベンチャー企業の経営者と話していると、会社の純資産は1億JDでも、DCF法では100億JDとか言っています。」
「一方、上場会社は株式市場の市場株価があるから、その市場株価を基準にして株式価値が評価されることが多い。市場株価と1株当たり純資産額が乖離していても、純資産額法による株式価値は考慮しないんだ。」
「そうなんですか。」
「例えば、非上場会社の1株当たり株式価値を評価する場合、DCF法は70、倍率法は80、純資産額法は100と評価されたとする。この場合、他の手法による評価額が純資産額法の評価額よりも低くても、1株当たり株式評価額は純資産額法の評価額100になる(図表6-2)。純資産額は清算価値だからね。」
【図表6-2:非上場会社の株価評価額】
「そうですね。分かります。」
「じゃあ次に、上場会社の1株当たり株式価値を各手法で計算し、市場株価法は100、DCF法は130、倍率法は100、純資産額法は200と評価されたとする。この場合、純資産額法の評価額は他の手法による評価額よりもはるかに高いけど、採用されない。上場会社には証券取引所における市場株価があって、投資家は市場株価が会社の価値を客観的に示していると考えているからだ。上場会社をTOB(株式公開買付け)で取得する場合は、市場株価に対してプレミアム(上乗せ)を支払うのが一般的だから、DCF法の評価額130がこの上場会社の株式評価額になる。」
【図表6-3:上場会社の株式評価額(その1)】
「へー。純資産額は清算価値だけど、清算価値よりもずっと低い金額で上場会社は買えるということですか。」とミゲルは言った。
「PBRが1割れている会社の場合はそうだね。逆にPBRが10倍だったとしても、純資産額は無視する。図表6-4の場合は純資産額法の評価額は10だけど、株式価値は130で評価される。上場会社の場合は、純資産額は無視して株式価値が計算されるから、純資産額よりも高い場合も、安い場合も両方ある。」
【図表6-4:上場会社の株式評価額(その2)】
「じゃあ、上場している割安な会社はお買い得なんですね。」ミゲルは納得したようだ。
<続く>
「一つ質問なんだけど・・・」と俺はホセに言った。
「何でしょう?」
「非上場会社でも特殊な特許を持っている会社はあるよね。その場合は同じリスクを抱えているはずだ。なぜ上場企業なの?」
「それは、『株式取得の難易度』と『株価評価方法の違い』が原因だと思います。」
「株式取得の難易度ね。」
「非上場企業を買収しようとすると、その会社の株主に個別に交渉して売却してもらわないといけません。会社の株主が1社であれば、その親会社に交渉すればいいので、特に難しくありません。でも、株主が何十、何百の場合、個別交渉するのが現実的に難しいケースがあるのです。特に少数株主から非上場会社の株式を買取るのは至難の業です。」
「少数株主か・・・。確かに、上場会社の場合はTOB(Take-Over Bid:株式公開買付け)した後、少数株主をスクィーズアウト(Squeeze Out)すればいいだけだね。」
※TOB(Take-Over Bid)は不特定の株主に対して買付価格や期間などを公告して、保有する株式を売ってくれるように勧誘し、買い付けることです。
※スクィーズアウト(Squeeze Out)は『締め出す』という意味で、M&Aにおいて少数株主に対して金銭等を交付して排除することです。
「そうなんです。非上場会社を買収する時に少数株主から株式を買取るのが面倒なんです。」とホセは言った。
「少数株主ね。分かった。株価評価方法の違いは何となく理解できる。」と俺はホセに言った。
「よく分からないんですけど、どういうことですか?」とミゲルが言った。
最近のミゲルは積極的にいろいろ聞いてくる。
ホセイドンの仲間に入って株式投資についてベンチャー企業の経営者に聞かれるから、知っておいた方がいいのだろう。いい機会だと思って、俺はミゲルに説明することにした。
「株価評価の方法が、上場会社と非上場会社で違うんだよ。」
「どう違うんですか?」とミゲルが言った。
「会社の発行する株式を評価する場合、幾つかの評価方法があるんだけど、代表的なのは(図表6-1)の4種類だ。このうち、市場株価法は上場会社の場合に利用して、他の3つの評価方法(DCF法、倍率法、純資産額法)は非上場会社の場合にも利用する。これは大丈夫?」と俺はミゲルに聞いた。
【図表6-1:株価評価方法】
「大丈夫です。ベンチャー企業の経営者と話している時に、『DCF法で10億JDだから・・』とかよく使いますから。」とミゲル言った。
ホセイドン絡みの打ち合わせで、株価評価方法はよく聞くようだ。
「それで、非上場会社を株式評価額は、純資産額法による株式価値が下限になる場合が多い。純資産額は清算価値とみなされるからね。すなわち、PBRが1未満の非上場会社はほとんどないんだ。」
「確かに。純資産を下回わる株価を聞いたことがありませんね。ベンチャー企業の経営者と話していると、会社の純資産は1億JDでも、DCF法では100億JDとか言っています。」
「一方、上場会社は株式市場の市場株価があるから、その市場株価を基準にして株式価値が評価されることが多い。市場株価と1株当たり純資産額が乖離していても、純資産額法による株式価値は考慮しないんだ。」
「そうなんですか。」
「例えば、非上場会社の1株当たり株式価値を評価する場合、DCF法は70、倍率法は80、純資産額法は100と評価されたとする。この場合、他の手法による評価額が純資産額法の評価額よりも低くても、1株当たり株式評価額は純資産額法の評価額100になる(図表6-2)。純資産額は清算価値だからね。」
【図表6-2:非上場会社の株価評価額】
「そうですね。分かります。」
「じゃあ次に、上場会社の1株当たり株式価値を各手法で計算し、市場株価法は100、DCF法は130、倍率法は100、純資産額法は200と評価されたとする。この場合、純資産額法の評価額は他の手法による評価額よりもはるかに高いけど、採用されない。上場会社には証券取引所における市場株価があって、投資家は市場株価が会社の価値を客観的に示していると考えているからだ。上場会社をTOB(株式公開買付け)で取得する場合は、市場株価に対してプレミアム(上乗せ)を支払うのが一般的だから、DCF法の評価額130がこの上場会社の株式評価額になる。」
【図表6-3:上場会社の株式評価額(その1)】
「へー。純資産額は清算価値だけど、清算価値よりもずっと低い金額で上場会社は買えるということですか。」とミゲルは言った。
「PBRが1割れている会社の場合はそうだね。逆にPBRが10倍だったとしても、純資産額は無視する。図表6-4の場合は純資産額法の評価額は10だけど、株式価値は130で評価される。上場会社の場合は、純資産額は無視して株式価値が計算されるから、純資産額よりも高い場合も、安い場合も両方ある。」
【図表6-4:上場会社の株式評価額(その2)】
「じゃあ、上場している割安な会社はお買い得なんですね。」ミゲルは納得したようだ。
<続く>
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