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第5回活動報告:仮想通貨の詐欺集団を捕まえろ
民事再生
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(8) 民事再生
暗号資産の調査が行き詰まってきたので、俺たちは暗号資産交換業者から情報を入手しつつ、次の案件を探している。
最近、内部告発ホットラインに届く情報提供は、個人的な恨みを俺たちに晴らしてほしいのか?と思うものが増えてきている。内部告発と言っているのに、困ったものだ・・・。
俺が総務省の別室で会議をしていると、ロイが急いでやってきた。何かあったようだ。
場所を変えた方が良さそうだったから、俺は内部調査部に移動した。
「どうしたの?そんなに急いで。」と俺はロイに聞いた。
「大変です。ジャービット・エクスチェンジが民事再生法の適用を申請しました。会社に債権者が殺到しているようです。」
「あー。やっぱり、そうなったか。」
俺のリアクションは薄いが、特に驚くことではない。そうなる可能性もあると思っていたから。
「民事再生ということは、どこかスポンサーがいるのかな?」
「いないようです。これから、FA(Financial Advisor:財務アドバイザー)が投資家に打診するようです。」
「プレパッケージ(事前にスポンサーを確保しておく方法)じゃないんだ。スポンサーがいないと、裁判所が認可しないんじゃないの?」
「それを私に聞かれても困ります。」とロイは言った。
「そりゃそうだ。XFTの件があったから、今はどこも関わりたくないだろうし。スポンサー探しは難航しそうだ。裁判所に認可されなくて、破産手続に移行するかもしれないね。」
俺がロイと話をしていると、ルイーズがやってきた。
「スポンサーとして、手を上げてみたら?デューデリ(デューデリジェンス(Due Diligence)の略称。資産査定のこと)をして難しそうだったら、降りればいいじゃない。」
呑気に言ってくれる。
もし、他にスポンサー候補が出てこなかったら、どうするつもりだ?
ジャービット・エクスチェンジに泣きつかれたら、断りにくいじゃないか。
俺が不満に思っているのを察したのか、ルイーズが言った。
「i5とか適当に作って、入札すればいいじゃない。ジャービット・エクスチェンジには総務省も内部調査部も名前は出ないから、大丈夫。」
「へー。」俺はこの話に興味を惹かれない。
「それに、私はジャービット・エクスチェンジに訪問していないから、顔バレしてない。だから、社長してもいいよ。どう?」
いま俺は理解した。それが目的か。
内部調査部では、関連会社の社長に就任すると、毎月5万JDの社長手当が支給される。
月5万JDなので多くはないが、ボーナスが定額の公務員としては嬉しい金額だ。
今まで、ミゲル、ポール、ガブリエルが社長手当を支給されているのだが、今回はルイーズが社長手当を狙っているのか。
俺がどう返答しようか困っていると、ルイーズがこう言った。
「できちゃったの。」
静まりかえる内部調査部。
みんな息をひそめて俺とルイーズを見ている。でも、俺には身に覚えがない。
何のことか確かめよう。
「何が?」
「i5ができちゃったの。」
「え?」
「だから、こういうこともあると思って、i5を作っておいたの。」
「そう。」と俺は言った。
そうじゃない。こいつは何を言ってるんだ?
「i5もあるし、ジャービット・エクスチェンジに連絡してみようよ。」とルイーズは言った。
こうなると、コイツは誰の言うことを聞かない。俺は早々に説得するのを諦めた。
検討してダメだったら、断ればいい。やらせてみるか。
「みんな集合!」と俺はメンバーに言った。
気配を消して空気になっていたメンバーが、俺のところに集まってきた。
「この中でジャービット・エクスチェンジに面バレしていないのは、ミゲル、ロイとポールだよね。ロイとポールはルイーズと一緒にこの案件を検討してほしい。デューデリは詳細にした方がいいから、大手のデトロイト監査法人と一緒に行ってくれ。パートナーのトーマスにはこちらから連絡しておくから。」
俺がそういうと、ルイーズは早速ジャービット・エクスチェンジに電話を掛け始めた。
「ちょっと待った。ルイーズ、会社に電話したらダメだよ。申請代理人の弁護士に電話しないと。会社のホームページに連絡先が出ているはずだから、そこに電話して。」
「分かったわよ。」出鼻をくじかれたルイーズは、イライラしながら吐き捨てた。
こうして、なぜかジャービット・エクスチェンジのスポンサー候補として検討することになった。
内部調査部は、必要のない仕事を増やしていく傾向があるようだ。
暗号資産の調査が行き詰まってきたので、俺たちは暗号資産交換業者から情報を入手しつつ、次の案件を探している。
最近、内部告発ホットラインに届く情報提供は、個人的な恨みを俺たちに晴らしてほしいのか?と思うものが増えてきている。内部告発と言っているのに、困ったものだ・・・。
俺が総務省の別室で会議をしていると、ロイが急いでやってきた。何かあったようだ。
場所を変えた方が良さそうだったから、俺は内部調査部に移動した。
「どうしたの?そんなに急いで。」と俺はロイに聞いた。
「大変です。ジャービット・エクスチェンジが民事再生法の適用を申請しました。会社に債権者が殺到しているようです。」
「あー。やっぱり、そうなったか。」
俺のリアクションは薄いが、特に驚くことではない。そうなる可能性もあると思っていたから。
「民事再生ということは、どこかスポンサーがいるのかな?」
「いないようです。これから、FA(Financial Advisor:財務アドバイザー)が投資家に打診するようです。」
「プレパッケージ(事前にスポンサーを確保しておく方法)じゃないんだ。スポンサーがいないと、裁判所が認可しないんじゃないの?」
「それを私に聞かれても困ります。」とロイは言った。
「そりゃそうだ。XFTの件があったから、今はどこも関わりたくないだろうし。スポンサー探しは難航しそうだ。裁判所に認可されなくて、破産手続に移行するかもしれないね。」
俺がロイと話をしていると、ルイーズがやってきた。
「スポンサーとして、手を上げてみたら?デューデリ(デューデリジェンス(Due Diligence)の略称。資産査定のこと)をして難しそうだったら、降りればいいじゃない。」
呑気に言ってくれる。
もし、他にスポンサー候補が出てこなかったら、どうするつもりだ?
ジャービット・エクスチェンジに泣きつかれたら、断りにくいじゃないか。
俺が不満に思っているのを察したのか、ルイーズが言った。
「i5とか適当に作って、入札すればいいじゃない。ジャービット・エクスチェンジには総務省も内部調査部も名前は出ないから、大丈夫。」
「へー。」俺はこの話に興味を惹かれない。
「それに、私はジャービット・エクスチェンジに訪問していないから、顔バレしてない。だから、社長してもいいよ。どう?」
いま俺は理解した。それが目的か。
内部調査部では、関連会社の社長に就任すると、毎月5万JDの社長手当が支給される。
月5万JDなので多くはないが、ボーナスが定額の公務員としては嬉しい金額だ。
今まで、ミゲル、ポール、ガブリエルが社長手当を支給されているのだが、今回はルイーズが社長手当を狙っているのか。
俺がどう返答しようか困っていると、ルイーズがこう言った。
「できちゃったの。」
静まりかえる内部調査部。
みんな息をひそめて俺とルイーズを見ている。でも、俺には身に覚えがない。
何のことか確かめよう。
「何が?」
「i5ができちゃったの。」
「え?」
「だから、こういうこともあると思って、i5を作っておいたの。」
「そう。」と俺は言った。
そうじゃない。こいつは何を言ってるんだ?
「i5もあるし、ジャービット・エクスチェンジに連絡してみようよ。」とルイーズは言った。
こうなると、コイツは誰の言うことを聞かない。俺は早々に説得するのを諦めた。
検討してダメだったら、断ればいい。やらせてみるか。
「みんな集合!」と俺はメンバーに言った。
気配を消して空気になっていたメンバーが、俺のところに集まってきた。
「この中でジャービット・エクスチェンジに面バレしていないのは、ミゲル、ロイとポールだよね。ロイとポールはルイーズと一緒にこの案件を検討してほしい。デューデリは詳細にした方がいいから、大手のデトロイト監査法人と一緒に行ってくれ。パートナーのトーマスにはこちらから連絡しておくから。」
俺がそういうと、ルイーズは早速ジャービット・エクスチェンジに電話を掛け始めた。
「ちょっと待った。ルイーズ、会社に電話したらダメだよ。申請代理人の弁護士に電話しないと。会社のホームページに連絡先が出ているはずだから、そこに電話して。」
「分かったわよ。」出鼻をくじかれたルイーズは、イライラしながら吐き捨てた。
こうして、なぜかジャービット・エクスチェンジのスポンサー候補として検討することになった。
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