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第5回活動報告:仮想通貨の詐欺集団を捕まえろ
情報提供者に会ってみよう
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(3) 情報提供者に会ってみよう
俺、スミスとロイの3人は内部告発ホットラインに情報提供してくれた、エミリーと会って話を聞くことになった。
エミリーの見た目は、一言でいえば、話好きな中年女性。
第13穀物倉庫のターニャや、フォーレンダム証券のIFAの3人に雰囲気が似ている。
まず、俺は自己紹介と今回の件について質問を始めた。
「はじめまして。総務省にダニエルです。同行しているのは、内部調査部のスミスとロイです。」
「こちらこそ、はじめまして。エミリーです。知人のエマから、内部調査部の話は聞いていました。」
「エマって、フォーレンダム証券のIFAをしているエマですか?」
「そうです。私はフォーレンダム証券で働いています。エマは私のフォーレンダム証券の先輩なのです。あの時は借金の金額を聞いて、ビックリしました。とても、個人で返せるような金額ではなかったですから。」とエミリーは言った。
世間は狭い。エミリーは俺たちの業務内容を理解しているらしいから、いいことだ。
「それで、内部告発ホットラインに情報提供してくれた暗号資産の件で、知っている情報があれば提供していただければと思っています。」と、俺は本題に入った。
「私自身がジャービット・コインに投資している訳ではないので、詳しいことは分かりません。私がやり取りしているフォーレンダム証券の顧客の数名が、急にジャービット・コインという、ほぼ無名の仮想通貨に投資し始めたのです。」
「うちの国名と有名な暗号資産を、足して2で割ったような名前ですね。ネーミングセンスを疑います。」と俺は、自分でも驚くくらい、どうでもいいことを言った。
「私は、いい名前だと思いますよ。ダジャレみたいで。」とエミリーは言った。
どうやら、中高年にはこういうダジャレが受けるらしい。
「失礼。脱線しました。話を進めて下さい。」と俺はエミリーを促した。
「その顧客は、互いに知り合いではないので、共通の友人に紹介されたということでもないようです。聞いてみると、最初に仮想通貨に興味を持ったのは、DMだったようです。そのDMには、取り扱っている暗号資産の過去5年間のパフォーマンスが示されていて、どれも年率50%を超えていたようです。」
「年率50%はすごいですね。」
「そうです。信じられないような状況です。普通の暗号資産は、急騰したり、急落したりします。プラスとマイナスが混在しているのが普通なのです。コンスタントに50%も上がり続けるというのは、異常です。ちなみに、有名なBコインの推移がこれの資料(図表5-3)です。」
【図表5-3:Bコインの価格推移】
「見たらわかると思いますが、価格が急騰する時もあれば、逆に急落する時もあります。要は、値動きが激しいのが普通なのです。Bコインの場合は、直近5年間で利回りを計算すると、年率10%くらいにしかなりません。」とエミリーは力説する。
「暗号資産は値動きが激しいと聞きますから、そうなのでしょうね。もし、年率50%で5年間運用すると、7.6倍(1.5×1.5×1.5×1.5×1.5)ですか。すごいですね。」
「暗号資産で安定的なパフォーマンスをキープするのはとても難しいことです。当社(フォーレンダム証券)は、数種類の暗号資産に投資する投資信託を販売していますが、パフォーマンスは全く安定しません。ジャービット・コインのようにはいきません。」
「そうすると、会社が意図的に価格を操作している、と思っている訳ですね。」と俺はエミリーに聞いた。
「そう考えるのが自然です。同業者からすると、ジャービット・コインは何かおかしいと思っています。ちなみに、ジャービット・コインは、ジャービット・エクスチェンジという暗号資産交換業者が取り扱っています。親会社はK諸島にあるジャービットという会社です。」
「K諸島はタックヘイブン(租税回避地)として有名なところですね。」
「そうです。ファンドがよく使っているところです。」とエミリーは言った。
「我々もジャービット・コインのことを分かる範囲で調べました。ただ、大した情報が得られていません。
子会社のジャービット・エクスチェンジは、純粋な暗号資産交換業者として当局に登録されていて、提出された決算書にも目立った資産・負債はありませんでした。
親会社ジャービットの方は、要約した財務データのみが記載されているため、詳細は分かりません。ただ、ここ数年で資産規模が増加しているので、発行しているジャービット・コインの評価額を反映したものだと、推測しています。フォーレンダム証券で何か会社の情報を把握していますか?」
「当方もあまり情報がありません。当社の顧客から会社情報を入手したので、それをお渡しします。ただ、既に入手している情報と同じかも知れません。」とエミリーは言った。
それはそうだろう。非上場企業だから情報を積極的に公開する必要はないし、国外の親会社の詳細な財務情報を、外部が入手できるとは思えない。少し行き詰まってきたので、俺はエミリーに別の質問をした。
「ありがとうございます。ちなみに、他に気になっている暗号資産はありますか?ジャービット・コイン以外で、我々が調査対象にした方が良い暗号資産、という意味です。」
「新しく出てきている暗号資産は幾つかありますが、ジャービット・コインほど怪しくはありません。」
「そうですか。それでは、我々はジャービット・コインについての調査を開始するとします。」
俺が話を終わろうとすると、「最後に一つよろしいですか?」とエミリーが聞いてきた。
「何でしょうか?」
「ジャービット・コインについての調査はいつから開始しますか?」
「情報を集め次第なので、来週にはスタートできると思います。」と俺は答えた。
「そうですか。暗号資産は、今のところインサイダー取引には該当しないので、当社の顧客には知らせておこうと思います。早めに売却してもらった方が、いいかも知れませんし。」とエミリーは言った。
暗号資産は、問題が発生すると価格が急落する。エミリーは、内部調査部の動きを顧客に伝えて、恩を売ろうという考えなのだろう。
まあ、法律違反でもないし、何の調査も進んでない現時点では、内部調査部の動きがインサイダー情報には該当しないだろう。俺が気にすることじゃない。
それに、エミリーはジャービット・コインのせいで自社商品が売れないから、邪魔でしかたないのだろう。女性の思考回路は、男性と少し違う。
俺たちは、エミリーに礼を言って分かれた。
まずは、ジャービット・コインを詳しく調べよう。
俺、スミスとロイの3人は内部告発ホットラインに情報提供してくれた、エミリーと会って話を聞くことになった。
エミリーの見た目は、一言でいえば、話好きな中年女性。
第13穀物倉庫のターニャや、フォーレンダム証券のIFAの3人に雰囲気が似ている。
まず、俺は自己紹介と今回の件について質問を始めた。
「はじめまして。総務省にダニエルです。同行しているのは、内部調査部のスミスとロイです。」
「こちらこそ、はじめまして。エミリーです。知人のエマから、内部調査部の話は聞いていました。」
「エマって、フォーレンダム証券のIFAをしているエマですか?」
「そうです。私はフォーレンダム証券で働いています。エマは私のフォーレンダム証券の先輩なのです。あの時は借金の金額を聞いて、ビックリしました。とても、個人で返せるような金額ではなかったですから。」とエミリーは言った。
世間は狭い。エミリーは俺たちの業務内容を理解しているらしいから、いいことだ。
「それで、内部告発ホットラインに情報提供してくれた暗号資産の件で、知っている情報があれば提供していただければと思っています。」と、俺は本題に入った。
「私自身がジャービット・コインに投資している訳ではないので、詳しいことは分かりません。私がやり取りしているフォーレンダム証券の顧客の数名が、急にジャービット・コインという、ほぼ無名の仮想通貨に投資し始めたのです。」
「うちの国名と有名な暗号資産を、足して2で割ったような名前ですね。ネーミングセンスを疑います。」と俺は、自分でも驚くくらい、どうでもいいことを言った。
「私は、いい名前だと思いますよ。ダジャレみたいで。」とエミリーは言った。
どうやら、中高年にはこういうダジャレが受けるらしい。
「失礼。脱線しました。話を進めて下さい。」と俺はエミリーを促した。
「その顧客は、互いに知り合いではないので、共通の友人に紹介されたということでもないようです。聞いてみると、最初に仮想通貨に興味を持ったのは、DMだったようです。そのDMには、取り扱っている暗号資産の過去5年間のパフォーマンスが示されていて、どれも年率50%を超えていたようです。」
「年率50%はすごいですね。」
「そうです。信じられないような状況です。普通の暗号資産は、急騰したり、急落したりします。プラスとマイナスが混在しているのが普通なのです。コンスタントに50%も上がり続けるというのは、異常です。ちなみに、有名なBコインの推移がこれの資料(図表5-3)です。」
【図表5-3:Bコインの価格推移】
「見たらわかると思いますが、価格が急騰する時もあれば、逆に急落する時もあります。要は、値動きが激しいのが普通なのです。Bコインの場合は、直近5年間で利回りを計算すると、年率10%くらいにしかなりません。」とエミリーは力説する。
「暗号資産は値動きが激しいと聞きますから、そうなのでしょうね。もし、年率50%で5年間運用すると、7.6倍(1.5×1.5×1.5×1.5×1.5)ですか。すごいですね。」
「暗号資産で安定的なパフォーマンスをキープするのはとても難しいことです。当社(フォーレンダム証券)は、数種類の暗号資産に投資する投資信託を販売していますが、パフォーマンスは全く安定しません。ジャービット・コインのようにはいきません。」
「そうすると、会社が意図的に価格を操作している、と思っている訳ですね。」と俺はエミリーに聞いた。
「そう考えるのが自然です。同業者からすると、ジャービット・コインは何かおかしいと思っています。ちなみに、ジャービット・コインは、ジャービット・エクスチェンジという暗号資産交換業者が取り扱っています。親会社はK諸島にあるジャービットという会社です。」
「K諸島はタックヘイブン(租税回避地)として有名なところですね。」
「そうです。ファンドがよく使っているところです。」とエミリーは言った。
「我々もジャービット・コインのことを分かる範囲で調べました。ただ、大した情報が得られていません。
子会社のジャービット・エクスチェンジは、純粋な暗号資産交換業者として当局に登録されていて、提出された決算書にも目立った資産・負債はありませんでした。
親会社ジャービットの方は、要約した財務データのみが記載されているため、詳細は分かりません。ただ、ここ数年で資産規模が増加しているので、発行しているジャービット・コインの評価額を反映したものだと、推測しています。フォーレンダム証券で何か会社の情報を把握していますか?」
「当方もあまり情報がありません。当社の顧客から会社情報を入手したので、それをお渡しします。ただ、既に入手している情報と同じかも知れません。」とエミリーは言った。
それはそうだろう。非上場企業だから情報を積極的に公開する必要はないし、国外の親会社の詳細な財務情報を、外部が入手できるとは思えない。少し行き詰まってきたので、俺はエミリーに別の質問をした。
「ありがとうございます。ちなみに、他に気になっている暗号資産はありますか?ジャービット・コイン以外で、我々が調査対象にした方が良い暗号資産、という意味です。」
「新しく出てきている暗号資産は幾つかありますが、ジャービット・コインほど怪しくはありません。」
「そうですか。それでは、我々はジャービット・コインについての調査を開始するとします。」
俺が話を終わろうとすると、「最後に一つよろしいですか?」とエミリーが聞いてきた。
「何でしょうか?」
「ジャービット・コインについての調査はいつから開始しますか?」
「情報を集め次第なので、来週にはスタートできると思います。」と俺は答えた。
「そうですか。暗号資産は、今のところインサイダー取引には該当しないので、当社の顧客には知らせておこうと思います。早めに売却してもらった方が、いいかも知れませんし。」とエミリーは言った。
暗号資産は、問題が発生すると価格が急落する。エミリーは、内部調査部の動きを顧客に伝えて、恩を売ろうという考えなのだろう。
まあ、法律違反でもないし、何の調査も進んでない現時点では、内部調査部の動きがインサイダー情報には該当しないだろう。俺が気にすることじゃない。
それに、エミリーはジャービット・コインのせいで自社商品が売れないから、邪魔でしかたないのだろう。女性の思考回路は、男性と少し違う。
俺たちは、エミリーに礼を言って分かれた。
まずは、ジャービット・コインを詳しく調べよう。
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