第4王子は中途半端だから探偵することにした

第４回活動報告：不正融資を取り締まれ

競売に参加しよう（その２）

(8) 競売に参加しよう　＜続き＞

「ええ。お金の話です。
先ほど説明した不動産取引の中で、不動産会社は販売価格の50%で落札しています。その不動産の市場価格は販売価格の約80%なので、不動産会社は競売でかなり安い金額で落札しているのです。
このため、我々が競売に参加して、販売価格の約70%で落札し、市場価格で売買しようと思っています。それほど多く取得するわけではないので、5億JDもあれば足りると思います。」

「今回は金額が大きくないから、特に問題ない。ただ、ダニエルのところが競売に参加することに、どういう意味があるのかが分からないのだけど。」とチャールズは言った。

「目的は、競売における入札金額の引き上げです。今回の件では、市場価格が販売価格の80%なのに、個人投資家は販売価格の50%で売却させられています。これは、我が国の競売がうまく機能していないからです。競売の参加者が多ければ、入札額も上がり、処分される金額が増えます。
競売による売却額が増加すれば、債権者や債務者が回収できる金額が増加するはずです。なので、我々が競売に参加する目的は、競売制度を活発化です。」

「そういう意味があるのか。まあ、目的はともかく、どれくらい儲かるの？」とチャールズは聞いてきた。

こいつの頭には金のことしかないのか？と思いつつも、俺は質問に答える。

「入札対象として考えているのは、レンソイス不動産が販売しているLシリーズというシングルタイプの物件です。この物件を1部屋当たり1,400万JDで落札して、1部屋当たり1,600万JDで売却する予定です。
利益は1部屋当たり200万JD、投資利益率は約14%（＝200万JD÷1,400万JD）です。売却予定価格の1,600万JDは、中古市場での取引価格よりも割安なので、販売期間は１カ月程度を見込んでいます。これを年間5回実施できれば、利益は年率70%です。」

「5億JDを投資できれば、年間の利益が3億5,000万JD(=5億JD×70%)か。いいね。Lシリーズ以外にも利益が出そうな物件があれば、積極的に競売に参加してよ。お金は必要なだけ、用意するから。」とチャールズは言った。

「ところで、競売物件の中には、元の所有者が物件を占有しているケースがあります。占有屋もいるようですし、そういう場合は、立退や強制執行の手続をお願いしてもいいですか？」

「もちろん。全面的に協力するよ。」とチャールズは機嫌良く言った。

これで競売に参加するための準備は整ったはずだ。


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ジャービス王国では、それぞれの裁判所が管轄して競売が定期的に実施されている。競売が実施されている会場は全国で4カ所あり、それぞれ月1回のペースで実施していることから、概ね毎週どこかで競売が開催されている。
競売に出てくる物件は、事前に競売物件情報サイトに公開されるため、入札に参加する前に入札対象となる不動産の情報を把握することができる。ただし、敷地の立ち入りなどは認められていないため、机上で入札金額を決めることになる。

また、第２王子のチャールズは、Lシリーズ以外の競売にも積極的に参加してほしいと言われているから、他の収益物件についても入札に参加することになる。それなりの入札件数になりそうだから、俺たちは、効率よく入札を行うために、作業を分担することにした。

まず、競売物件情報サイトから物件情報を入手して、その物件の不動産の調査を行うチームが必要だ。裁判所が公開している情報が正しいとは限らないから、現地調査も必要だ。競売物件が実は占有されているかもしれないし、不動産の実査は非常に重要だ。これは、ミゲルとロイが実施することになった。

ただし、不動産を素人だけで現地調査するのは難しいから、全国展開している不動産仲介会社のネットワークを利用することにした。競売物件は鑑定評価も行われているし、参考価格を改めて評価しなおす必要はない。こちらとしては、不動産仲介会社が顧客に売れる価格の方が重要だからだ。
ミゲルとロイが不動産仲介会社と一緒に競売物件を実査して、その不動産仲介会社から想定販売価格を聞く。想定販売価格から15%ディスカウントした金額を入札予定額とすることにした。

次に、ミゲルとロイから入手した情報をもとに、ルイーズとスミスが競売に参加する物件と入札価格を決める。占有の状況によっては、他の入札者が入ってこないだろうから、入札金額を高くする必要はない。また、状況によっては、物件の引き渡しまでにかなり時間を要する不動産は、入札を辞退した方が得策だ。

全国4カ所の競売には、ガブリエルとポールが現地に訪問して入札することになった。競売物件が落札できた場合、物件が占有されていなければ不動産仲介会社に連絡して販売を開始する。占有されていれば、内務省に連絡して明渡しの手続を依頼することになる。


このような役割分担で、全国の競売に参加して6カ月が経過した。その間に、100物件を12億JDで取得した。取得した収益物件はシングルタイプからファミリータイプまで、様々だ。
残念ながらLシリーズは1件も混ざっていない。初めはこんなものだろう。
競落した100物件のうち、80件を約12億JDで売却して2億5,000万JDの利益を確保した。

競売に参加して分かったことだが、当初予想していたよりも参加者が少ない。そのせいか、競売での落札価格は高くない。利益率を15%程度に設定して入札していたが、利益率を20%にしても落札できることが分かった。

このペースでいけば、年間5億JDの利益は確保できそうだ。

そして、そのうちLシリーズの競売にも遭遇するだろう。