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第4回活動報告:不正融資を取り締まれ
個人投資家(その2)
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(6) 個人投資家 <続き>
「譲渡担保の件ですね。確か、Lシリーズを10物件取得して、借入金が1億5,000万JDになってから、3年が経過したころだったと思います。無理をして借入をしていたので、元利金の返済ができなくなりました。」とディーンは言った。
「3年間もよく払えましたね。収入からするとかなり大変だったでしょう。」
「大変でした。給与だけでは賄えないので、貯蓄を取崩しながら払っていました。」
「それで、元利金が払えずに延滞した後、ロワール銀行の担当者のスティーブンから連絡がありました。スティーブンが言ってきたのは、ローンを全額一括返済するか、追加の担保を入れるか、でした。」
「それでどうしましたか?」
「全額一括返済できないので、自宅を追加担保にしました。20年前に購入した物件でしたが、市場価値として5,000万JD近くあったので、借入金の担保として使えると思ったからです。ただ、今思えば、初めから自宅の担保を狙っていたのではないかと思います。」
「というのは?」
「ロワール銀行に追加担保を入れても私の収入が増える訳ではないので、借入金の返済が楽になるわけではありません。しばらくすると、また延滞が発生しました。」
「まあ、そうなりますね。」
「延滞したら、ロワール銀行のスティーブンは前回と同じようなことを言ってきました。担保物件を売却して借入金を返済するか、追加担保を入れるか、です。」
「大変でしたね。」
「ええ。ロワール銀行からの借入金は少しずつ元本返済していたものの、その時の残高1億2,000万JDでした。全額一括で払えるはずがありません。せっかく手に入れた投資不動産だったので担保物件もしたくありません。さらに、追加担保にできる物件もありませんでした。」
「それは難しい選択でしたね。」
「ええ。私がその2択で悩んでいると、ちょうどその時に、レンソイス不動産のリードが私のところに電話をしてきて、系列のLファイナンスで1億2,000万JDを借換えしてはどうか、と提案してきました。」
「ローンの条件はどういうものでしたか?」
「Lファイナンスのローンは、期間が1年と短いものの、期中の元本返済はありませんでした。期限一括返済という元本返済条件です。借入期間は利息しか払う必要がありません。」
「ただ、借入期間が1年だと短すぎますよね?」
「短いとは思いました。リードは、1年の返済期限が到来した時に担保不動産に問題がなければ、借換えすることができると言っていました。その話を聞いた私は、1年自動更新のローンだと認識しました。でも、実際は自動更新のローンではなかった訳です。」
「何があったのですか?」
「Lファイナンスから借入をして1年が経過して期日がきました。そうしたら、Lファイナンスの担当者のジョーから、『担保不動産の価値が下がっているから、借換えはできない』と言われました。」
予想通りとはいえ、俺はディーンのことが可哀そうになってきた。ディーンは話を続ける。
「資金がありませんから、期日までに全額返済できません。返済期日を過ぎると、ジョーは私に『担保物件を競売するから、直ぐに自宅から出ていけ』と言ってきました。
そして、Lファイナンスは保有していた投資不動産と自宅を売却しはじめました。数週間すると、10物件と自宅が1億2,500万JDで売れたとジョーから連絡がありました。担保不動産の買い手は、レンソイス不動産です。」
「ローン残高よりも高くは売れたのですね。」
「不動産の決済が終わると、Lファイナンスは売却代金とローン残高の差額500万JD(1億2,500万JD-1億2,000万JD)を、私の銀行口座に振込んできました。それに前後して1億2,000万JDのローンの完済通知も届きました。」
「・・・」
俺たちはディーンに掛ける言葉が見つからなかった。
「話をまとめると、3年間で1億5,000万JDを借入して、投資不動産を2億JDで購入しました。借入金はローンの元本を3,000万返済して、時価5,000万JDの自宅を追加担保に入れました。でも、最終的に戻ってきたのは500万JDだけです。自宅からも追い出されました。」とディーンは言った。
「トータルの損失を計算すると、物件購入時の自己資金5,000万JD、借入金返済3,000万JD、追加担保の自宅の時価5,000万JDに対して、500万JDの回収だから、1億2,500万JD(=5,000+3,000+5,000-500万JD)ですか。」と俺は言った。
「大体それくらいの損失でしょう。今考えると、最初から仕組まれていたのではないかと思います。自宅を担保に追加させることも、販売したLシリーズを半額で買い戻すことも、最初からレンソイス不動産が計画したのでしょう。」
「そうかもしれませんね。ところで、レンソイス不動産が購入した後は、どうなったかご存じですか?」
「その後は、知りません。というよりも、調べられるような精神状態ではありませんでした。」
「自宅の件は今すぐには分かりませんが、Lシリーズの方は、登記簿謄本を見る限り既にレンソイス不動産から、個人投資家に売却されているようです。10件のLシリーズの不動産にはロワール銀行の抵当権が付いていて、借入金が1億6,000万JDと記載されています。投資用不動産の全額を借入で賄うことはないので、約2億JDでレンソイス不動産は個人投資家に売却したのでしょう。」
「本当にふざけた会社ですね。新しい被害者を出さないためにも、迅速な調査を私からもお願いします。私の手伝えることであれば、何でも協力しますから。」とディーンは怒りに震えながら言った。
「我々も全力を尽くします。」と俺は言った。
ディーンの件は、可哀そうな結末になってしまったのは残念だ。
ただ、我々の調査は不正融資の証拠を掴むことだ。被害者を出さないことではないのだが、ディーンにそれを言っても仕方ないだろう。
ディーンからは、一連の取引の流れを聞くことができた。
どうやら、レンソイス不動産→ロワール銀行→Lファイナンス→レンソイス不動産でお金を個人投資家から吸い上げる仕組みのようだ。
念のために、あと4人からも話を聞いて、取引の流れがディーンのケースと同じかどうかを、確認しよう。
「譲渡担保の件ですね。確か、Lシリーズを10物件取得して、借入金が1億5,000万JDになってから、3年が経過したころだったと思います。無理をして借入をしていたので、元利金の返済ができなくなりました。」とディーンは言った。
「3年間もよく払えましたね。収入からするとかなり大変だったでしょう。」
「大変でした。給与だけでは賄えないので、貯蓄を取崩しながら払っていました。」
「それで、元利金が払えずに延滞した後、ロワール銀行の担当者のスティーブンから連絡がありました。スティーブンが言ってきたのは、ローンを全額一括返済するか、追加の担保を入れるか、でした。」
「それでどうしましたか?」
「全額一括返済できないので、自宅を追加担保にしました。20年前に購入した物件でしたが、市場価値として5,000万JD近くあったので、借入金の担保として使えると思ったからです。ただ、今思えば、初めから自宅の担保を狙っていたのではないかと思います。」
「というのは?」
「ロワール銀行に追加担保を入れても私の収入が増える訳ではないので、借入金の返済が楽になるわけではありません。しばらくすると、また延滞が発生しました。」
「まあ、そうなりますね。」
「延滞したら、ロワール銀行のスティーブンは前回と同じようなことを言ってきました。担保物件を売却して借入金を返済するか、追加担保を入れるか、です。」
「大変でしたね。」
「ええ。ロワール銀行からの借入金は少しずつ元本返済していたものの、その時の残高1億2,000万JDでした。全額一括で払えるはずがありません。せっかく手に入れた投資不動産だったので担保物件もしたくありません。さらに、追加担保にできる物件もありませんでした。」
「それは難しい選択でしたね。」
「ええ。私がその2択で悩んでいると、ちょうどその時に、レンソイス不動産のリードが私のところに電話をしてきて、系列のLファイナンスで1億2,000万JDを借換えしてはどうか、と提案してきました。」
「ローンの条件はどういうものでしたか?」
「Lファイナンスのローンは、期間が1年と短いものの、期中の元本返済はありませんでした。期限一括返済という元本返済条件です。借入期間は利息しか払う必要がありません。」
「ただ、借入期間が1年だと短すぎますよね?」
「短いとは思いました。リードは、1年の返済期限が到来した時に担保不動産に問題がなければ、借換えすることができると言っていました。その話を聞いた私は、1年自動更新のローンだと認識しました。でも、実際は自動更新のローンではなかった訳です。」
「何があったのですか?」
「Lファイナンスから借入をして1年が経過して期日がきました。そうしたら、Lファイナンスの担当者のジョーから、『担保不動産の価値が下がっているから、借換えはできない』と言われました。」
予想通りとはいえ、俺はディーンのことが可哀そうになってきた。ディーンは話を続ける。
「資金がありませんから、期日までに全額返済できません。返済期日を過ぎると、ジョーは私に『担保物件を競売するから、直ぐに自宅から出ていけ』と言ってきました。
そして、Lファイナンスは保有していた投資不動産と自宅を売却しはじめました。数週間すると、10物件と自宅が1億2,500万JDで売れたとジョーから連絡がありました。担保不動産の買い手は、レンソイス不動産です。」
「ローン残高よりも高くは売れたのですね。」
「不動産の決済が終わると、Lファイナンスは売却代金とローン残高の差額500万JD(1億2,500万JD-1億2,000万JD)を、私の銀行口座に振込んできました。それに前後して1億2,000万JDのローンの完済通知も届きました。」
「・・・」
俺たちはディーンに掛ける言葉が見つからなかった。
「話をまとめると、3年間で1億5,000万JDを借入して、投資不動産を2億JDで購入しました。借入金はローンの元本を3,000万返済して、時価5,000万JDの自宅を追加担保に入れました。でも、最終的に戻ってきたのは500万JDだけです。自宅からも追い出されました。」とディーンは言った。
「トータルの損失を計算すると、物件購入時の自己資金5,000万JD、借入金返済3,000万JD、追加担保の自宅の時価5,000万JDに対して、500万JDの回収だから、1億2,500万JD(=5,000+3,000+5,000-500万JD)ですか。」と俺は言った。
「大体それくらいの損失でしょう。今考えると、最初から仕組まれていたのではないかと思います。自宅を担保に追加させることも、販売したLシリーズを半額で買い戻すことも、最初からレンソイス不動産が計画したのでしょう。」
「そうかもしれませんね。ところで、レンソイス不動産が購入した後は、どうなったかご存じですか?」
「その後は、知りません。というよりも、調べられるような精神状態ではありませんでした。」
「自宅の件は今すぐには分かりませんが、Lシリーズの方は、登記簿謄本を見る限り既にレンソイス不動産から、個人投資家に売却されているようです。10件のLシリーズの不動産にはロワール銀行の抵当権が付いていて、借入金が1億6,000万JDと記載されています。投資用不動産の全額を借入で賄うことはないので、約2億JDでレンソイス不動産は個人投資家に売却したのでしょう。」
「本当にふざけた会社ですね。新しい被害者を出さないためにも、迅速な調査を私からもお願いします。私の手伝えることであれば、何でも協力しますから。」とディーンは怒りに震えながら言った。
「我々も全力を尽くします。」と俺は言った。
ディーンの件は、可哀そうな結末になってしまったのは残念だ。
ただ、我々の調査は不正融資の証拠を掴むことだ。被害者を出さないことではないのだが、ディーンにそれを言っても仕方ないだろう。
ディーンからは、一連の取引の流れを聞くことができた。
どうやら、レンソイス不動産→ロワール銀行→Lファイナンス→レンソイス不動産でお金を個人投資家から吸い上げる仕組みのようだ。
念のために、あと4人からも話を聞いて、取引の流れがディーンのケースと同じかどうかを、確認しよう。
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