タンブルウィード

まさみ

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とあるクラブにて。

「あ、スワローじゃんやっほー」
「キンキンくそうるせェ高周波飛ばしてると思ったらミミか」
「そうそ、アナタのスイートキャロット大好きな淫乱バニーのミミだよー。最近カオ見せてくんなくて寂しかったー、何してたの?」
「爛れたセックス」
「誰と?」
「本命と」
「ってことはヨリ戻したの?」
「さあな」
「イケズ」
「いい女は待ちぼうけてもむくれねーもんだぜ、ふくれっ面も可愛いけど」
「その調子で何十人も落としまくるからよそのお店出禁になるんだよ、スワローとのワンナイトラブめぐってあちこちでトラブル起きたの忘れちゃった?」
「数多すぎていちいち覚えちゃねー」
「色男は罪作りね」
「バンチのデマに踊らされてるミーハー女どもなんざ知ったことか。マスター、スクリュードライバー一杯」
「カルーアミルクおかわり、うんと甘くしてね。……で、例の件ちゃんと考えてくれた?」
「何の話」
「私のこと彼女にしてくれるっては・な・し」
「本気だったのか」
「悪い話じゃないでしょ?カラダの相性はぴったり、キュートな見た目でエロエロ絶倫なウサギと若いツバメのカップルなんてサイコーにイケてるじゃん。私たち話もあうし一緒にいて退屈しないと思うけど……」
「俺を連れ歩いて元カレ見返そうって腹か?」
「むしゃくしゃするから蒸し返さないで!あーもーせっかくいい感じだったのに最悪、思い出しちゃったじゃん。五股かけた上に私の貯金持ち逃げしたドクズのことはどうでもいいから、ちょっとも可能性ないかな?」
「正直そそられる提案ではある」
「でしょでしょ?」
「体位のレパートリー豊富でテクもプロ並、特にGカップのパイズリが絶品。喋りが達者で一緒にいて退屈しねえってのも同感」
「じゃあ」
「却下」
「上げて落とすパターンやめてよ、期待して損した!ちぇー」
「よーく考えなミミ、今の関係が一番ラクだろ?たまに会って飲んで騒いでヤるだけの気安い間柄、お互い束縛しねーしされねーセフレの何が不満だ」
「女の子は好きになったらカタチを欲しがるものなの、彼女とか恋人とかそーゆーポジションに憧れてやまないの」
「バニーのくせに肉食系かよ、強欲な胃袋だな」
「女の子は欲張りなの」
「とっとと諦めな、お前に目はねーよ」
「私の目が節穴ってこと?勝ち目がないってこと、どっち?ちょっとーシカトしないでよー。ねースワロー、前から疑問に思ってたんだけどその本命さんて実在するの?めんどくさい女子追っ払うためのフェイクじゃないの、みんなして会いたがっても一回もお店に連れてこないじゃん」
「見せ物じゃねえ」
「ケチ」
「うるせーとこ苦手なんだよ、夜更かしできねー体質だし」
「なにそれ子供みたーい」
「そうだよガキだよ、落ちてるものすぐ拾い食いするし」
「えっ、道端に落ちてる物も……?ドン引き」
「ドン引きってほどじゃねーだろ」
「だってその口でキスとかもっとすごいこと色々するんでしょ、絶対バイキン伝染ってるって」
「…………」
「ひょっとして今気付いた?」
「ほっとけ。アイツは十秒ルール信仰してんだよ、落ちて十秒以内に食やギリセーフなんだよ」
「育ちが悪いなあ」
「は???」
「なんでスワローがキレんのよ、事実じゃん。ね、もっといっぱい教えてよ」
「えらい興味津々だな」
「そりゃそーでしょ、今をときめくルーキー注目株、不特定多数のセフレと夜ごと浮名を流すストレイ・スワロー・バードがぞっこん惚れてるって噂の恋人だよ?絶世の美人に違いないってみんな騒いでる」
「訂正しろ、ぞっこん惚れてんのはあっちだ。こっちはお情けで相手してやってるだけ、一人じゃなんもできねー甘ちゃんだかんな」
「具体的には?」
「夜道に立たせとくとウリと間違われてケツ揉みしだかれる」
「放置プレイ?いきなり難易度高……」
「ただの仕事だっての、賞金首のたまり場ンなってるバーの見張りを頼んだんだよ」
「てことは、その人も賞金稼ぎ?」
「ったく、手ェ使えんだからテメェで払やいいのに。何度払っても無駄だって泣き入れてきたがどこまで本当だかわかったもんじゃねえ、なんたって救いのねえド淫乱だからな、酒くせえ酔っ払いに可愛がられて案外興奮してたのかも……あ―――思い出しただけでムカムカしてきたテキーラ追加」
「えー……すごい趣味だなあ。そーゆープレイなの?」
「生粋のドМだな」
「見た目は?」
「髪はピンクゴールドのストレート、瞳は錆びた夕日のようなラスティネイル。肌は色白で……顔は並。体は結構エロい」
「エロいんだ?詳しく」
「何年もかけてたっぷり仕込んでやったから感度抜群、ちょっといじっただけで乳首がビンビンに勃起する。特にやべーのは腰付き、キュッと形良くくびれて……ベッドの上でしなやかに反るトコなんて絶品だ、無自覚にフェロモン垂れ流して男を誘いまくる」
「へえ」
「自分じゃノーマルだって嘯いちゃいるがその実立派なドМ、いじめられて興奮すんだから処置なしよ。雌犬みてーに後ろから突っこんでやるとシーツ掻き毟っていーい声出すんだ。騎乗位もノリノリ。ロデオみてーにガンガン突き上げてやっと前髪がふわっと捲れて、汗と涎まみれの素顔がチラ見える。一番いいトコにゴリゴリ当たるとギュッと締まって前屈みになンのもたまんねー。涙ぐんで縋り付いてくるのをシカトして、奥まで抉りこんでフィニッシュだ。ドロっドロにとろけただらしねー顔で、繋がったまんま俺の胸に突っ伏してくるんだぜ?」
「うわあ……」
「アイツ見てるとなんかこー、すげえムラムラ……ちげー、ムズムズ……ムカムカ?とにかくわかれわかんだろ、じっとしてらんなくなるんだ。ぐちゃぐちゃにしたくなるんだよ。俺のことまるごと受け止めてやるってスカした偽善者顔……殴って犯して、全部めちゃくちゃにしたくてたまらねェ」
「スワローDVする人……?えっと、性格は」
「クソ真面目。グズ。ノロマ。泣き虫」
「悪口じゃん」
「死ぬほどお人好し。ウンザリするくれェ優しくて嫌になる。役立たずの足手まとい、言うことだきゃあいっちょまえ」
「あのさあ……そんな人のどこが好きなの、ちっともわかんない」
「わかんなくていい」
「え?」
「俺だけわかってりゃいい。他のヤツなんかにわからせてたまるもんか」
「ハイハイぞっこん惚れてるってわけねごちそうさま、そんなに好きなら早く家族になっちゃえば」
「……」
「何その顔。変なこと言った?」
「お生憎様、とっくに家族以上恋人未満の関係さ」
「妬けちゃうなあ、どうあがいても勝ち目ないって?」
「俺のいちばんは生まれた時から決まってんだ。コレばっかりは動かねーよ、絶対に。アイツがいるから世の中まんざら捨てたもんじゃねーって思える……」
「酔っ払ってる?顔赤いよ」
「俺のいちばんはアイツ、アイツのいちばんは俺。いちばん同士がくっ付きゃ最強になるのがスジだろ」
「うわーのろけだ引くわー」
「テメェが聞いてきたんだろが」
「好きなら浮気しなきゃいいのに。彼女が泣くよ」
「拗ねんなら可愛げあるけどな」
「わざと怒らせて振り向かせるの?構ってもらいたがりの子供みたい、あまのじゃくなんだから」
「大切にするってどうやんだよ」
「えぇ、それ聞く?いまさら?」
「いいから教えろ」
「えーと……腕枕でおねんね」
「痺れんじゃん」
「おいしいご飯いっぱい作ってあげる」
「餌付けて肥やす?」
「素敵な洋服や靴やアクセたくさん買ってくれる!」
「一年中モッズコートでファッションセンス死んでる」
「毎日一緒にお風呂に入ってかわいがってくれて~」
「いちいち湯をためてたら水道代馬鹿にならねー、シャワーで十分」
「私の為にドアを支えてエスコートしてくれるの」
「蹴破る方が早ェ」
「トラムのシートに座る時だってレディファーストよ」
「立ちんぼだと痴漢される」
「で、毎日キスして愛してるって囁いてくれたら完璧」
「もうしてる」
「ホントに?いまいち伝わってなくない?どんな状況でしてんのよ」
「ベッドでケツ剥いてガツガツ攻め立てながら」
「はいダメー」
「はァあ?何がダメだよ」
「毎日セックスとか正気?腰にきちゃうでしょ。スワローのことだからどーせ相手の都合や体調考えずヤりまくってんでしょ、いちいちここがいいのかいいんだろおらよイっちまえってネチネチ寒い言葉責めしてさあ……本音ぶっちゃけるとヤッてる最中にいいのか聞いてくる男ってちょー萎える、反応でわかれっての」
「はっ、ガッツく男は嫌われるってか」
「私は精力絶倫ウサちゃんだからアリだけどさーフツーの女の子はセックスなんて週二か週三でじゅーぶんだって、なんなら週一でいいかも。挿れて出すだけの男と違って受ける方はナイーブなの、デリケートなの、繊細なの!イくまで時間かかるしイったあとはへばって起き上がれないし」
「テメェにいちいち言われねーでもちゃんと考えてるさ、床ずれしねーように体位だってまめに変えてやってっし至れり尽くせりだろーが」
「至れり尽くしてないし何がダメって言ったら全部ダメ。いーいスワロー、女の子はシチュ萌えなの。ロマンスを求めるの。ベッド以外で恋人さんといちゃいちゃしてる?優しい言葉かけてあげた?一緒にデートとかしたことある?女の子にとっちゃセックスなんて二の次、大事なのは愛してるの言葉かけとキスよ。そのオラオラ俺様な態度改めないと私のことラブドールとしか見てないのねって幻滅されちゃうんだから」
「……いちゃいちゃしてるよ、台所で」
「不衛生だね」
「ちっげーよ、アイツがメシ作ってるとき後ろから抱き付いたりイタズラしてんだよ」
「いちゃいちゃの基準おかしくない?それ迷惑だからね、うっかり火傷したり指切っちゃったら大参事でしょ。いちゃいちゃってのは合意の上でいちゃ付くことなの、一方的にじゃれ付いたらただの妨害行為、ファウル、デッドボール。そのぶんじゃろくにデートもしたことないでしょ?」
「近所のダイナーやデリカッセンに」
「ただの外食と買い物でしょ?マジでまともなデートしたことないの?」
「お互い暇なくてそれどころじゃなかったんだよ。せっかく部屋借りたのにアイツはすぐ出て行っちまうし、戻ってくるまでこっちはひとりっきりだし、もどってきたらもどってきたですれ違いまくって上手くいかねーし」
「スワローの愛情表現は空振りね」
「……何したらアイツが喜ぶかなんてわかんねーよ。優しくって……どうすりゃいいんだ」
「ハグしてキスして愛してる」
「柄じゃねーよ気持ちワリィ」
「好きなひとに優しくするの、そんなにむずかしい?」
「好きなヤツあとことんいじめてえ」
「重症だなあ……」
「ハグしてキスして愛してるじゃ……さんとおんなじ……二番煎じじゃ伝わんねー……」
空っぽのグラスが倒れ、カウンターに突っ伏したスワローが気持ち良さそうに寝息をたてはじめる。
スツールに掛けた女は、飲みかけのグラスを退屈そうにいじって中身を一気に干す。
「ごちそうさま」
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