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魔法少女リョウ
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僕はリョウ、承認欲求モンスター。
「全国20万ちょっとのプリチーリョウくんファンのみんなーっ、今日も配信見てくれてありがとー!」
今日も元気にかわいこぶりっこ、とびっきりのメイクをきめて手を振れば、ハイテンションな草を生やした視聴者のコメントがノーパソ画面を埋め尽くす。
『リョウきゅんかわいい!マジ萌え!』
『ストロベリーの綿飴みたいな髪くんかくんかしたい』
『今日の服もマジサイコー☆ロリショタ好きのハートずこばこずっきゅん狙い撃ちかな?』
わー軒並み知能低そうでドン引き―……そんな心の声なんておくびにも出さず愛想笑いを振りまく。
腐ってもユーチューバー、サービス精神はてんこ盛り。若さで売れる期間は短い、今日もがっぽりガッツリ再生数稼がないと……やった、視聴者1万超え。
「あ、スパチャだー。リョウくんハァハァカッキーさんありがとねー、愛してる!」
1画面に向かって読み上げ投げキッス。視聴者ってちょろいね、ガワにしか興味ないんだもん。
「何々~リクエスト、リョウくんの自慢の舌テクでロリポップをなめてください?も~エッチなのはだめって言ったでしょ、めっ!でもでもスパチャ弾んでもらったし今回だけ特別だよ」
包装紙を剥いたロリポップを咥え、舌でいやらしく舐め上げ唾液を絡める。
ちゅぽんと口に突っこんで引き抜き、扇情的な舌遣いをアップで映す。
「んッ……こんなおっきいの入ンない」
息苦しそうに喘いで目で赤い飴玉を吸い立てる。潤んだカメラ目線を時折混ぜて挑発するのも忘れるべからず。
お口に出し入れしてさんざん唾液を塗したあと、大袈裟に息を吹き返す。
「ぷはっ、満足していただけたかな?」
画面ではスパチャ乱舞、視聴者が熱狂。ホント―馬鹿ばっか。とはいえ楽してお小遣いゲットできるのは有り難い、カッキーは毎回10万投げてくれるお得意様だから大事にしなきゃ。
「ってなわけで今日の配信はおっしまーい、また見てね!」
テディベアの片手を持って振ってみせる。別れを惜しむ視聴者に笑顔を向けたまま配信を切る。ちゃんと切れてるから二度見で確認。配信の切り忘れで人生終えた同業者いっぱい知ってるからいやでも慎重になっちゃうんだよね。
「あ゛~~喉がらがら。お疲れボク」
ベッドに大の字に寝転んでがりごりロリポップを噛み砕く。スマホがぴろりろ鳴った。パパ活相手のおじさんからだ……後回しでいいか。他のメールをチェックするとビバリーからLINEがきてた、学校へ来いって催促。
『リョウさん今日もサボりっすか?だめっすよちゃんと来ないと、勉強付いてこれなくなるっすよ!』
「うっざ」
露骨に顔を顰める。
既読スルーでシカトしようかとも思ったけど気が変わった。どうせやることないし、ビバリーをひやかしにいくのもいいかもね。
ブレザー制服に袖を通し、スクールバッグにロリポップとテディベアを突っ込む。玄関口でローファーを履いてると、出勤準備をしてるママに呼び止められた。
「学校行くのリョウちゃん?」
「ビバリーにさびしんぼコールされちゃって」
「お友達は大事にしなきゃね。朝ごはんは?お腹空いたならママの手作りスコーンがあるわよ」
「やったー、クロテッドクリームたっぷり付けてね」
ママが焼いたスコーンは最高においしい。あーんと口を開け、クロテッドクリームを塗りたくったスコーンをキャッチする。
スコーンを頬張りながらママを見上げる。
「これからお仕事?無理しないでね」
「ふふ、心配してくれてありがと。なるべく早く帰るから」
ママが前髪をかき上げて僕の額にキスをする。
この年になって子ども扱いはくすぐったいけど、親一人子一人だから大目に見てほしい。
「愛してるよママ、いってきまーす」
「愛してるわよリョウちゃん、いってらっしゃい」
コーヒー入りマグカップ片手に穏やかに送り出すママ。登校中の生徒にまじってのんびり歩いてると、後ろから肩を叩かれた。振り向かなくても誰かわかる。
「ちゃんと起きれて偉いっすねリョウさん、見直したっす!」
予感的中。背後で笑っていたのはチョコレート色の肌をした僕の友達、ビバリーだった。
何だ何だと通行人が振り返るレベルでばかでかい声を張り上げるビバリーに辟易し、片耳に指栓をしてぼやく。
「朝からキンキンうるさいなあ、君がLINEにいやがらせしてくるからでしょ」
「失礼な、いやがらせなんてしてねっす。あえて言えばおめざコールっすよ」
「こっちは完徹で眠気MAXだっての」
「また徹夜でライブ配信っすか、目の下にクマができてるっす」
「マっ?」
「マっす、毛穴開いてるっす」
ビバリーの神妙な表情に促されて手鏡を出し、絶句。
「うわっ激やばじゃん!解像度落として証拠隠滅しなきゃ」
ビバリーは僕が学校サボるとすぐにメールを入れて来る有難ウザ迷惑な、もとい、親愛なる友達だ。
僕がおっきな生あくびをすれば、小姑のような抜け目なさですかさず小言をたれてくる。
「リョウさんしっかり義務教育なんすから、配信にかまけてないでちゃんと学校来なきゃだめっすよ」
「だって学校ってだるいんだもん。だるくない?皆でじっと机座って話聞いてさァ、僕ちやほやされるほうが好き」
「好き嫌いの問題じゃねっす」
「どーせ五十嵐に頼まれたんでしょ、問題児の面倒見てくれって」
お節介がジャージを着て歩いてる担任の名前を出せば、半ば図星だったのかビバリーが言葉に詰まる。素直なヤツ。
「そんな……いたっ!?」
後ろめたそうに口ごもるビバリーの額を弾いて茶化す。
「わかりやすいとこ嫌いじゃないよ。早くいこー」
「待ってくださいっす足元見ねえとコケるっす!」
ビバリーと追いかけっこして学校に滑り込む。
正面玄関の下駄箱で上履きに履きかけてると、学ラン着崩した三白眼のチビが、不良の凱に因縁をふっかけられていた。
「テメェ、新入りの分際で生意気だぞ!」
「でけえ図体しやがって、そっちが前塞いでたんだろ」
「誰あれ?」
「リョウさんが休んでる間に来た転校生のロンっすよ」
「あーだから制服違うのか」
凱とロンは火花バチバチで睨み合っている。一触即発の気配。
周囲の生徒がざわめいて遠巻きにする中、体格じゃ到底かないっこない凱に気迫負けせず対峙するロン。
「そもそもさァ、朝っぱらから俺は凱アンガキ大将とかこっぱずかしい替え歌がなってんじゃねえよ。無差別鼓膜破壊兵器かよ」
「ンだてめえ、凱さんに文句あっか」
「文句あっか」
「ソロリサイタルならよそでやれ」
「凱歌を奏でながら登校すんのが俺様のスタイルなんだよ!」
凱の取り巻きの残虐兄弟が吠えるのを耳をかっぽじって聞き流す。メンタル強。顔真っ赤の凱がロンの胸ぐらを掴み、上履きの靴裏が浮く。
「生意気な口叩いてっと便器にダンクシュートきめっぞ」
「どけ、低能」
そこへ通りかかった生徒が、眼鏡を鋭角に光らせと凱たちに注意する。周囲の野次馬がどよめく。
「生徒会長の鍵屋崎だ!」
「皆、不要物は隠せ!ネクタイは真っ直ぐに、ズボンとスカートの皺を消せ!」
「また難しい本を読んでる……『素数の音楽は虚数の情緒を夢に見るか』って玄人向けすぎて意味わかんねえ」
銀縁眼鏡をきざったらしく直し、廊下のど真ん中で睨みを利かす凱とロンを見下す鍵屋崎。
「凱、君は3年のはずだが?下級生に構ってる場合か、早く自分の教室に行け。問題を起こすとまた留年するぞ」
「チッ……生徒会長さまのおでましか。行くぞ野郎ども」
「「はいっ凱さん!!」」
ロンの胸ぐらを突き放した凱が大股にのし歩き、下僕を引き連れて去っていく。
期せずして鍵屋崎に救われた形となったロンは、ぶっきらぼうに吐き捨てる。
「おせっかい野郎め。礼は言わねーぞ」
「通行妨害が迷惑だっただけだ。君は転校生か?新しい制服は届いてないのか」
爪先までてっぺんまで、ロンの全身を不躾に観察するや、急に間合いを詰めて上着の裾をズボンに突っこむ。
「何すんだ!?」
「だらしない身なりは風紀を乱す。上履きを踏んで歩くのもやめたまえ、見苦しい」
鍵屋崎はロンにびしばしダメだししていく。再び本を広げて去って行く鍵屋崎を唖然と見送るロンに接近、軽く肩を叩く。
「や~朝っぱらから凱と会長に捕まっちゃうなんて災難だね新入りくん。凱はあの通り子分を引き連れてイケイケだし、生徒会長は風紀の乱れ絶許なの。平穏無事なスクールライフ送りたきゃ付き合うともだちは選びなよ」
にこにこ笑って転校生をじっくり値踏み。口はクソ悪いけど顔立ちは結構かわいい。生意気なガキを躾けたいパパたちに人気が出るかも。
「お近付きのしるしに飴ちゃんどうぞ。ところで君、割のいいバイトに興味ない?お金持ちのおじさんと会って話すだけでお小遣いがもらえるんだけどさー一口噛まない?あ、生徒会長はもちろん先生や親には内緒ね」
「ちょちょっとリョウさん!?」
パパ活に勧誘したのは器量を見込んだのと、上履きのボロボロ具合から貧乏人とあてこんで。
ロンは横目でこっちをひと睨み、そっけなく手を払いやがった。
「気安くさわんなチビ」
久しぶりに学校に来たものの授業は退屈で身が入らない。三時限目ほど真面目にお務めしたらもー飽きた、さよならバイバイ。
「ふわ~ねむ……」
「まずいっすよリョウさん、もっと手で隠すとかしないと」
頬杖であくびをかましてると、後ろの席のビバリーにちょんちょん背中を突付かれる。
「あいたっ!?」
額に衝撃が炸裂。教壇に立った五十嵐がチョークを投げたのだ。
「こらリョウ、たるんでるぞ!」
「何さ芋ジャージ、今の体罰でしょ教育委員会に訴えてやる!!」
「どうせYouTubeでも見て夜更かししてるんだろ、学生の本分は勉強って忘れるんじゃない」
ぶっぶー、大ハズレ。僕自身が視聴者20万の人気ユーチューバーなんですよ、とは言わない。絶対面倒くさいことになる。
「いわんこっちゃない」と頭を抱えて嘆くビバリーをよそに、心の中で舌を出す。
「授業の前にみんなに話しておきたいことがある、最近この界隈に変質者が出没するそうだ。うちの生徒も何人か襲われたとかで、十分気を付けてほしい」
「変質者ってどんなのっすか、先生」
ビバリーがすかさず手を挙げる。
「偽警官だ。駅前の繁華街歩いてる学生を補導して裏路地に連れ込み、不埒な真似を働くらしい。お前らも十分注意しろよ、俺も娘のリカが被害に遭わないか心配で心配で今すぐ早退したい」
親馬鹿全開やってらんねー。娘語りを始めたら止まらない五十嵐にうんざりする、このぶんじゃ50分潰れるな。
暇して机の下でスマホをいじる。ポチポチ打ってパパに返信、すぐメールが来る。
「センセ―、僕急用ができたんで早退しまーす」
「待てリョウ、話はまだ終わってないぞ!リカがピアノの発表会で金賞とる山場まで離席は許さん!」
慌てて止める五十嵐にあっさり手を振り、スクールバッグを掛けて教室から飛び出す。
「リョウさんカムバック!」
ビバリーの絶叫はシカト、駅前の繁華街へ直行。待ち合わせは16時だからまだ余裕がある。適当にタピるか、バエそうなパンケーキでも食べて時間を潰すか……。
「学校は?サボったのか」
ぎくりとして振り向いてホッとする。駅前の繁華街、デブで醜男な巡査に捕まっているのは例の転校生……ロンとか言ったか。
「あはは、要領悪いね捕まってら」
ぶっといストローでじゅこーとタピオカミルクティー吸いながら笑ってやる。デ醜男巡査とロンは押し問答の真っ最中。
「るっせえな、ほっとけよ。別に迷惑かけてねーし」
「まだ中学生だろ、親御さんが心配するんじゃないか」
「お袋に限ってそりゃねーな」
「交番に来い、学校と家に電話を入れる」
「余計なことすんな」
ロンは不機嫌そうに抵抗している。デ醜男巡査の手を振り払い、さっさと先に行こうとし……一瞬の出来事だった。
デ醜男が腰の警棒を抜いてロンを殴打、倒れかけたところを抱きとめて手近な路地に引きずり込む。
「えっ、やりすぎ」
今の撮っときゃよかった、DQNお巡りが中学生に暴行とか炎上動画で稼げたのに。ストローから口をはなして驚く僕の視線の先、さらに驚くべきことが起きる。
「今のは暴行罪じゃないか?」
生徒会長……鍵屋崎がいた。何でいんの、ご都合主義だな。優等生がサボり?とひっかかるけど、鍵屋崎はお構いなしに巡査に直訴する。
「コイツの友達か。まだ学校だろ、なんで繁華街を出歩いてる」
「妹が熱を出したから早退して迎えに行く途中だ」
そういえばコイツ、ものすんごいシスコンだった。ドン引きするレベルの。
警棒でぶん殴られたロンは弱々しい顔と声で、「さっさと行けよ」と鍵屋崎を追い立てる。
「助けてくれなんて頼んでねェし目障りだ。妹が待ってんだろ」
「僕としても妹を優先したいところなのだが、もし今巡査の暴行を見過ごして君が大怪我をするか殺されでもしたら、回り回って学校の管理体制の杜撰さが問われて内申に響くのでな。他人に進路を妨げられたくない」
面倒くさいヤツ……。
「早い話、道連れになりてえんだな」
「ッ!」
巡査も同じ感情を抱いたのだろうか、警棒を振り上げて鍵屋崎の横っ面を張る。カシャンと音をたて眼鏡がアスファルトを滑り、「眼鏡、眼鏡」と鍵屋崎がしゃがみこむ。
眼鏡を手探りする鍵屋崎の肘を掴み、反対側の手で暴れるロンを掴み、薄暗い路地へと引きずり込む巡査。好奇心からひょいと覗き込めば、ズボンを下ろしてお尻を丸出しにする。
「へ、変態だー!」
思わずタピオカを吹きそうになった。
ミルクティーに噎せながら気を取り直し、どうしようか検討する。ロンも鍵屋崎もどっちもいけすかないヤツだ、見殺しにしたって全然別に良心は痛まない。
「トラブルに首突っ込んで待ち合わせに遅れるのやだしな~よし、無視だ!」
僕は何も見なかったと自己暗示、軽快に踵を返したら呼んでもないのにビバリー登場。
「よし無視だじゃねっすよリョウさん、愛と正義の心を忘れちゃったんすか」
「び、びっくりした~……ビバリーもサボり?」
「心配で追いかけてきたんすよ、したら案の定」
「だって僕カンケーないもん、アイツらと友達でもなんでもないし。今朝ロンにフラれたの見てたっしょ」
「初対面のヤツにパパ活勧誘されたらそりゃ断るっす」
「めんどくさ……ただの変質者でしょ、ほっときゃいいじゃん。処女喪失なんて火傷みたいなもんだって」
「悪の力に侵された変質者を駆逐するのがリョウさんのお仕事っしょ!」
「あのさビバリー、仕事ってのは労働に見返りもらえるもんなの、やったぶんだけきちんと報酬が入るの!魔法少女は仕事じゃなくボランティア活動、無償、クソみたいなタダ働き!」
僕とビバリーが口論している間にも鍵屋崎とロンは追い詰められていく。
「来んじゃねえ変態、タマ蹴るぞ!」
「通報するぞ!」
「できるもんならしてみやがれ、補導された仕返しのデマで処理してやる。さあ、俺様の股間の警棒をチュッパチャップスしな!」
まず手始めにロンに襲いかかる巡査。
「リョウさんのばかっ、意気地なし!」
頬に鋭い痛みが走る。ビバリーにぶたれたのだ。僕の眼前、目に大粒の涙をためたビバリーは怒りに震えていた。
「もし今行かないんだったら僕にも考えがあるっす」
「絶交?さっぱりする」
「リョウさんのパパ活盗撮写真SNSで拡散してやるっす」
「やめてお願いそれだけはやめて!」
スマホに指をおいてのエグい脅迫に血相変えて縋り付く。
仕方ない。
僕は腹を括り、隣の雑居ビルの階段を駆け上る。鉄扉を開け放って屋上に出、スクールバックからこんにちはしたテディベアの背中のジッパーを引き下げる。中から取り出したのはファンシーなピンクのバイブレーター……もとい、魔法のステッキ。
ステッキを空に翳して目を瞑る。全身をカラフルな光が纏い、ブレザー制服が勝手に脱げて、赤いリボンが裸を包んでいく。遅れて屋上に滑り込んだビバリーがボルテージ急上昇の奇声を上げる。
「キターッ、ジャンキー系魔法少女リョウさん爆誕ッ!」
ある時は20万の登録者を抱える人気ユーチューバー、ある時はパパ活に励む男子中学生、そんな僕の正体は割と気まぐれに悪を裁く魔法少女なのだ。ボランティアってホント大嫌い。
「よっと」
屋上の柵に飛び乗って跳躍、逆光を背負い華麗に舞って急降下。
「おいアレ」
ロンと鍵屋崎が驚愕の相でこちらを仰ぐ。
「まずい棒が裏社会の窓からくぱァ現行犯の変態巡査、YouTube規約にのっとっておしおきしちゃうよ!」
「ぐはっ!?」
無防備な巡査の後頭部に飛び蹴り炸裂、反動に任せて一回転で着地。
「くっ……くくく、3Pおっぱじめようとした矢先に男の娘が飛び入りか、ツイてるぜ」
「こりないなあ」
「君はリョウだな!!」
鍵屋崎が貞操の恩人に指を突き付け、あっさり正体をばらするもんで超脱力。
「あのさあ~~魔法少女の正体は気付いてもお口チャックがマナーでしょ?知らない?魔法少女アニメとか見ないわけ?変身後と変身前で変わるのせいぜい髪の色位なのに、みんな空気読んで知らんぷりでしょ」
「恵も何故服と髪色を変えるだけで擬態できるのか不思議がっていたな」
「なんで女装してんだ、パパとやらの趣味か」
ロンの顔が強張ってる。ほっとこ。巡査は下半身裸のまま、両手を掲げて突進してくる。その眉間・胸・鳩尾に音速の三段キック、胸ぐら掴んで軽々と投げ飛ばす。
地面に突っ伏した背中をぎゅむと踏んで罵る。
「警棒ケツに突っこまれたくなかったら泣き寝入りしなよ、おまわりさん」
「畜生……覚えてろ、公務執行妨害で全員ぶちこんでやる!」
捨て台詞を吐いて逃げてく巡査にひらひら手を振り、ぽかんとしてるロンと鍵屋崎に向き直る。
「[[rb:処女 > オトメ]]のピンチ救ってやったんだから感謝してよね。とりまお助け料1万でいいや」
「持ってねえ」
「じゃあこの後付き合って?僕のパパ複数プレイもオッケーどんとこいな人だから!だいじょーぶ、君たちなら売れっ子になるって」
鍵屋崎とロンの肩を抱いて囁けば、二人とも嫌な顔をする。
人助けをしても報われない、魔法少女って損なお仕事だよね。
「全国20万ちょっとのプリチーリョウくんファンのみんなーっ、今日も配信見てくれてありがとー!」
今日も元気にかわいこぶりっこ、とびっきりのメイクをきめて手を振れば、ハイテンションな草を生やした視聴者のコメントがノーパソ画面を埋め尽くす。
『リョウきゅんかわいい!マジ萌え!』
『ストロベリーの綿飴みたいな髪くんかくんかしたい』
『今日の服もマジサイコー☆ロリショタ好きのハートずこばこずっきゅん狙い撃ちかな?』
わー軒並み知能低そうでドン引き―……そんな心の声なんておくびにも出さず愛想笑いを振りまく。
腐ってもユーチューバー、サービス精神はてんこ盛り。若さで売れる期間は短い、今日もがっぽりガッツリ再生数稼がないと……やった、視聴者1万超え。
「あ、スパチャだー。リョウくんハァハァカッキーさんありがとねー、愛してる!」
1画面に向かって読み上げ投げキッス。視聴者ってちょろいね、ガワにしか興味ないんだもん。
「何々~リクエスト、リョウくんの自慢の舌テクでロリポップをなめてください?も~エッチなのはだめって言ったでしょ、めっ!でもでもスパチャ弾んでもらったし今回だけ特別だよ」
包装紙を剥いたロリポップを咥え、舌でいやらしく舐め上げ唾液を絡める。
ちゅぽんと口に突っこんで引き抜き、扇情的な舌遣いをアップで映す。
「んッ……こんなおっきいの入ンない」
息苦しそうに喘いで目で赤い飴玉を吸い立てる。潤んだカメラ目線を時折混ぜて挑発するのも忘れるべからず。
お口に出し入れしてさんざん唾液を塗したあと、大袈裟に息を吹き返す。
「ぷはっ、満足していただけたかな?」
画面ではスパチャ乱舞、視聴者が熱狂。ホント―馬鹿ばっか。とはいえ楽してお小遣いゲットできるのは有り難い、カッキーは毎回10万投げてくれるお得意様だから大事にしなきゃ。
「ってなわけで今日の配信はおっしまーい、また見てね!」
テディベアの片手を持って振ってみせる。別れを惜しむ視聴者に笑顔を向けたまま配信を切る。ちゃんと切れてるから二度見で確認。配信の切り忘れで人生終えた同業者いっぱい知ってるからいやでも慎重になっちゃうんだよね。
「あ゛~~喉がらがら。お疲れボク」
ベッドに大の字に寝転んでがりごりロリポップを噛み砕く。スマホがぴろりろ鳴った。パパ活相手のおじさんからだ……後回しでいいか。他のメールをチェックするとビバリーからLINEがきてた、学校へ来いって催促。
『リョウさん今日もサボりっすか?だめっすよちゃんと来ないと、勉強付いてこれなくなるっすよ!』
「うっざ」
露骨に顔を顰める。
既読スルーでシカトしようかとも思ったけど気が変わった。どうせやることないし、ビバリーをひやかしにいくのもいいかもね。
ブレザー制服に袖を通し、スクールバッグにロリポップとテディベアを突っ込む。玄関口でローファーを履いてると、出勤準備をしてるママに呼び止められた。
「学校行くのリョウちゃん?」
「ビバリーにさびしんぼコールされちゃって」
「お友達は大事にしなきゃね。朝ごはんは?お腹空いたならママの手作りスコーンがあるわよ」
「やったー、クロテッドクリームたっぷり付けてね」
ママが焼いたスコーンは最高においしい。あーんと口を開け、クロテッドクリームを塗りたくったスコーンをキャッチする。
スコーンを頬張りながらママを見上げる。
「これからお仕事?無理しないでね」
「ふふ、心配してくれてありがと。なるべく早く帰るから」
ママが前髪をかき上げて僕の額にキスをする。
この年になって子ども扱いはくすぐったいけど、親一人子一人だから大目に見てほしい。
「愛してるよママ、いってきまーす」
「愛してるわよリョウちゃん、いってらっしゃい」
コーヒー入りマグカップ片手に穏やかに送り出すママ。登校中の生徒にまじってのんびり歩いてると、後ろから肩を叩かれた。振り向かなくても誰かわかる。
「ちゃんと起きれて偉いっすねリョウさん、見直したっす!」
予感的中。背後で笑っていたのはチョコレート色の肌をした僕の友達、ビバリーだった。
何だ何だと通行人が振り返るレベルでばかでかい声を張り上げるビバリーに辟易し、片耳に指栓をしてぼやく。
「朝からキンキンうるさいなあ、君がLINEにいやがらせしてくるからでしょ」
「失礼な、いやがらせなんてしてねっす。あえて言えばおめざコールっすよ」
「こっちは完徹で眠気MAXだっての」
「また徹夜でライブ配信っすか、目の下にクマができてるっす」
「マっ?」
「マっす、毛穴開いてるっす」
ビバリーの神妙な表情に促されて手鏡を出し、絶句。
「うわっ激やばじゃん!解像度落として証拠隠滅しなきゃ」
ビバリーは僕が学校サボるとすぐにメールを入れて来る有難ウザ迷惑な、もとい、親愛なる友達だ。
僕がおっきな生あくびをすれば、小姑のような抜け目なさですかさず小言をたれてくる。
「リョウさんしっかり義務教育なんすから、配信にかまけてないでちゃんと学校来なきゃだめっすよ」
「だって学校ってだるいんだもん。だるくない?皆でじっと机座って話聞いてさァ、僕ちやほやされるほうが好き」
「好き嫌いの問題じゃねっす」
「どーせ五十嵐に頼まれたんでしょ、問題児の面倒見てくれって」
お節介がジャージを着て歩いてる担任の名前を出せば、半ば図星だったのかビバリーが言葉に詰まる。素直なヤツ。
「そんな……いたっ!?」
後ろめたそうに口ごもるビバリーの額を弾いて茶化す。
「わかりやすいとこ嫌いじゃないよ。早くいこー」
「待ってくださいっす足元見ねえとコケるっす!」
ビバリーと追いかけっこして学校に滑り込む。
正面玄関の下駄箱で上履きに履きかけてると、学ラン着崩した三白眼のチビが、不良の凱に因縁をふっかけられていた。
「テメェ、新入りの分際で生意気だぞ!」
「でけえ図体しやがって、そっちが前塞いでたんだろ」
「誰あれ?」
「リョウさんが休んでる間に来た転校生のロンっすよ」
「あーだから制服違うのか」
凱とロンは火花バチバチで睨み合っている。一触即発の気配。
周囲の生徒がざわめいて遠巻きにする中、体格じゃ到底かないっこない凱に気迫負けせず対峙するロン。
「そもそもさァ、朝っぱらから俺は凱アンガキ大将とかこっぱずかしい替え歌がなってんじゃねえよ。無差別鼓膜破壊兵器かよ」
「ンだてめえ、凱さんに文句あっか」
「文句あっか」
「ソロリサイタルならよそでやれ」
「凱歌を奏でながら登校すんのが俺様のスタイルなんだよ!」
凱の取り巻きの残虐兄弟が吠えるのを耳をかっぽじって聞き流す。メンタル強。顔真っ赤の凱がロンの胸ぐらを掴み、上履きの靴裏が浮く。
「生意気な口叩いてっと便器にダンクシュートきめっぞ」
「どけ、低能」
そこへ通りかかった生徒が、眼鏡を鋭角に光らせと凱たちに注意する。周囲の野次馬がどよめく。
「生徒会長の鍵屋崎だ!」
「皆、不要物は隠せ!ネクタイは真っ直ぐに、ズボンとスカートの皺を消せ!」
「また難しい本を読んでる……『素数の音楽は虚数の情緒を夢に見るか』って玄人向けすぎて意味わかんねえ」
銀縁眼鏡をきざったらしく直し、廊下のど真ん中で睨みを利かす凱とロンを見下す鍵屋崎。
「凱、君は3年のはずだが?下級生に構ってる場合か、早く自分の教室に行け。問題を起こすとまた留年するぞ」
「チッ……生徒会長さまのおでましか。行くぞ野郎ども」
「「はいっ凱さん!!」」
ロンの胸ぐらを突き放した凱が大股にのし歩き、下僕を引き連れて去っていく。
期せずして鍵屋崎に救われた形となったロンは、ぶっきらぼうに吐き捨てる。
「おせっかい野郎め。礼は言わねーぞ」
「通行妨害が迷惑だっただけだ。君は転校生か?新しい制服は届いてないのか」
爪先までてっぺんまで、ロンの全身を不躾に観察するや、急に間合いを詰めて上着の裾をズボンに突っこむ。
「何すんだ!?」
「だらしない身なりは風紀を乱す。上履きを踏んで歩くのもやめたまえ、見苦しい」
鍵屋崎はロンにびしばしダメだししていく。再び本を広げて去って行く鍵屋崎を唖然と見送るロンに接近、軽く肩を叩く。
「や~朝っぱらから凱と会長に捕まっちゃうなんて災難だね新入りくん。凱はあの通り子分を引き連れてイケイケだし、生徒会長は風紀の乱れ絶許なの。平穏無事なスクールライフ送りたきゃ付き合うともだちは選びなよ」
にこにこ笑って転校生をじっくり値踏み。口はクソ悪いけど顔立ちは結構かわいい。生意気なガキを躾けたいパパたちに人気が出るかも。
「お近付きのしるしに飴ちゃんどうぞ。ところで君、割のいいバイトに興味ない?お金持ちのおじさんと会って話すだけでお小遣いがもらえるんだけどさー一口噛まない?あ、生徒会長はもちろん先生や親には内緒ね」
「ちょちょっとリョウさん!?」
パパ活に勧誘したのは器量を見込んだのと、上履きのボロボロ具合から貧乏人とあてこんで。
ロンは横目でこっちをひと睨み、そっけなく手を払いやがった。
「気安くさわんなチビ」
久しぶりに学校に来たものの授業は退屈で身が入らない。三時限目ほど真面目にお務めしたらもー飽きた、さよならバイバイ。
「ふわ~ねむ……」
「まずいっすよリョウさん、もっと手で隠すとかしないと」
頬杖であくびをかましてると、後ろの席のビバリーにちょんちょん背中を突付かれる。
「あいたっ!?」
額に衝撃が炸裂。教壇に立った五十嵐がチョークを投げたのだ。
「こらリョウ、たるんでるぞ!」
「何さ芋ジャージ、今の体罰でしょ教育委員会に訴えてやる!!」
「どうせYouTubeでも見て夜更かししてるんだろ、学生の本分は勉強って忘れるんじゃない」
ぶっぶー、大ハズレ。僕自身が視聴者20万の人気ユーチューバーなんですよ、とは言わない。絶対面倒くさいことになる。
「いわんこっちゃない」と頭を抱えて嘆くビバリーをよそに、心の中で舌を出す。
「授業の前にみんなに話しておきたいことがある、最近この界隈に変質者が出没するそうだ。うちの生徒も何人か襲われたとかで、十分気を付けてほしい」
「変質者ってどんなのっすか、先生」
ビバリーがすかさず手を挙げる。
「偽警官だ。駅前の繁華街歩いてる学生を補導して裏路地に連れ込み、不埒な真似を働くらしい。お前らも十分注意しろよ、俺も娘のリカが被害に遭わないか心配で心配で今すぐ早退したい」
親馬鹿全開やってらんねー。娘語りを始めたら止まらない五十嵐にうんざりする、このぶんじゃ50分潰れるな。
暇して机の下でスマホをいじる。ポチポチ打ってパパに返信、すぐメールが来る。
「センセ―、僕急用ができたんで早退しまーす」
「待てリョウ、話はまだ終わってないぞ!リカがピアノの発表会で金賞とる山場まで離席は許さん!」
慌てて止める五十嵐にあっさり手を振り、スクールバッグを掛けて教室から飛び出す。
「リョウさんカムバック!」
ビバリーの絶叫はシカト、駅前の繁華街へ直行。待ち合わせは16時だからまだ余裕がある。適当にタピるか、バエそうなパンケーキでも食べて時間を潰すか……。
「学校は?サボったのか」
ぎくりとして振り向いてホッとする。駅前の繁華街、デブで醜男な巡査に捕まっているのは例の転校生……ロンとか言ったか。
「あはは、要領悪いね捕まってら」
ぶっといストローでじゅこーとタピオカミルクティー吸いながら笑ってやる。デ醜男巡査とロンは押し問答の真っ最中。
「るっせえな、ほっとけよ。別に迷惑かけてねーし」
「まだ中学生だろ、親御さんが心配するんじゃないか」
「お袋に限ってそりゃねーな」
「交番に来い、学校と家に電話を入れる」
「余計なことすんな」
ロンは不機嫌そうに抵抗している。デ醜男巡査の手を振り払い、さっさと先に行こうとし……一瞬の出来事だった。
デ醜男が腰の警棒を抜いてロンを殴打、倒れかけたところを抱きとめて手近な路地に引きずり込む。
「えっ、やりすぎ」
今の撮っときゃよかった、DQNお巡りが中学生に暴行とか炎上動画で稼げたのに。ストローから口をはなして驚く僕の視線の先、さらに驚くべきことが起きる。
「今のは暴行罪じゃないか?」
生徒会長……鍵屋崎がいた。何でいんの、ご都合主義だな。優等生がサボり?とひっかかるけど、鍵屋崎はお構いなしに巡査に直訴する。
「コイツの友達か。まだ学校だろ、なんで繁華街を出歩いてる」
「妹が熱を出したから早退して迎えに行く途中だ」
そういえばコイツ、ものすんごいシスコンだった。ドン引きするレベルの。
警棒でぶん殴られたロンは弱々しい顔と声で、「さっさと行けよ」と鍵屋崎を追い立てる。
「助けてくれなんて頼んでねェし目障りだ。妹が待ってんだろ」
「僕としても妹を優先したいところなのだが、もし今巡査の暴行を見過ごして君が大怪我をするか殺されでもしたら、回り回って学校の管理体制の杜撰さが問われて内申に響くのでな。他人に進路を妨げられたくない」
面倒くさいヤツ……。
「早い話、道連れになりてえんだな」
「ッ!」
巡査も同じ感情を抱いたのだろうか、警棒を振り上げて鍵屋崎の横っ面を張る。カシャンと音をたて眼鏡がアスファルトを滑り、「眼鏡、眼鏡」と鍵屋崎がしゃがみこむ。
眼鏡を手探りする鍵屋崎の肘を掴み、反対側の手で暴れるロンを掴み、薄暗い路地へと引きずり込む巡査。好奇心からひょいと覗き込めば、ズボンを下ろしてお尻を丸出しにする。
「へ、変態だー!」
思わずタピオカを吹きそうになった。
ミルクティーに噎せながら気を取り直し、どうしようか検討する。ロンも鍵屋崎もどっちもいけすかないヤツだ、見殺しにしたって全然別に良心は痛まない。
「トラブルに首突っ込んで待ち合わせに遅れるのやだしな~よし、無視だ!」
僕は何も見なかったと自己暗示、軽快に踵を返したら呼んでもないのにビバリー登場。
「よし無視だじゃねっすよリョウさん、愛と正義の心を忘れちゃったんすか」
「び、びっくりした~……ビバリーもサボり?」
「心配で追いかけてきたんすよ、したら案の定」
「だって僕カンケーないもん、アイツらと友達でもなんでもないし。今朝ロンにフラれたの見てたっしょ」
「初対面のヤツにパパ活勧誘されたらそりゃ断るっす」
「めんどくさ……ただの変質者でしょ、ほっときゃいいじゃん。処女喪失なんて火傷みたいなもんだって」
「悪の力に侵された変質者を駆逐するのがリョウさんのお仕事っしょ!」
「あのさビバリー、仕事ってのは労働に見返りもらえるもんなの、やったぶんだけきちんと報酬が入るの!魔法少女は仕事じゃなくボランティア活動、無償、クソみたいなタダ働き!」
僕とビバリーが口論している間にも鍵屋崎とロンは追い詰められていく。
「来んじゃねえ変態、タマ蹴るぞ!」
「通報するぞ!」
「できるもんならしてみやがれ、補導された仕返しのデマで処理してやる。さあ、俺様の股間の警棒をチュッパチャップスしな!」
まず手始めにロンに襲いかかる巡査。
「リョウさんのばかっ、意気地なし!」
頬に鋭い痛みが走る。ビバリーにぶたれたのだ。僕の眼前、目に大粒の涙をためたビバリーは怒りに震えていた。
「もし今行かないんだったら僕にも考えがあるっす」
「絶交?さっぱりする」
「リョウさんのパパ活盗撮写真SNSで拡散してやるっす」
「やめてお願いそれだけはやめて!」
スマホに指をおいてのエグい脅迫に血相変えて縋り付く。
仕方ない。
僕は腹を括り、隣の雑居ビルの階段を駆け上る。鉄扉を開け放って屋上に出、スクールバックからこんにちはしたテディベアの背中のジッパーを引き下げる。中から取り出したのはファンシーなピンクのバイブレーター……もとい、魔法のステッキ。
ステッキを空に翳して目を瞑る。全身をカラフルな光が纏い、ブレザー制服が勝手に脱げて、赤いリボンが裸を包んでいく。遅れて屋上に滑り込んだビバリーがボルテージ急上昇の奇声を上げる。
「キターッ、ジャンキー系魔法少女リョウさん爆誕ッ!」
ある時は20万の登録者を抱える人気ユーチューバー、ある時はパパ活に励む男子中学生、そんな僕の正体は割と気まぐれに悪を裁く魔法少女なのだ。ボランティアってホント大嫌い。
「よっと」
屋上の柵に飛び乗って跳躍、逆光を背負い華麗に舞って急降下。
「おいアレ」
ロンと鍵屋崎が驚愕の相でこちらを仰ぐ。
「まずい棒が裏社会の窓からくぱァ現行犯の変態巡査、YouTube規約にのっとっておしおきしちゃうよ!」
「ぐはっ!?」
無防備な巡査の後頭部に飛び蹴り炸裂、反動に任せて一回転で着地。
「くっ……くくく、3Pおっぱじめようとした矢先に男の娘が飛び入りか、ツイてるぜ」
「こりないなあ」
「君はリョウだな!!」
鍵屋崎が貞操の恩人に指を突き付け、あっさり正体をばらするもんで超脱力。
「あのさあ~~魔法少女の正体は気付いてもお口チャックがマナーでしょ?知らない?魔法少女アニメとか見ないわけ?変身後と変身前で変わるのせいぜい髪の色位なのに、みんな空気読んで知らんぷりでしょ」
「恵も何故服と髪色を変えるだけで擬態できるのか不思議がっていたな」
「なんで女装してんだ、パパとやらの趣味か」
ロンの顔が強張ってる。ほっとこ。巡査は下半身裸のまま、両手を掲げて突進してくる。その眉間・胸・鳩尾に音速の三段キック、胸ぐら掴んで軽々と投げ飛ばす。
地面に突っ伏した背中をぎゅむと踏んで罵る。
「警棒ケツに突っこまれたくなかったら泣き寝入りしなよ、おまわりさん」
「畜生……覚えてろ、公務執行妨害で全員ぶちこんでやる!」
捨て台詞を吐いて逃げてく巡査にひらひら手を振り、ぽかんとしてるロンと鍵屋崎に向き直る。
「[[rb:処女 > オトメ]]のピンチ救ってやったんだから感謝してよね。とりまお助け料1万でいいや」
「持ってねえ」
「じゃあこの後付き合って?僕のパパ複数プレイもオッケーどんとこいな人だから!だいじょーぶ、君たちなら売れっ子になるって」
鍵屋崎とロンの肩を抱いて囁けば、二人とも嫌な顔をする。
人助けをしても報われない、魔法少女って損なお仕事だよね。
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