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二百二十話
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レイジはどこだ。
天井の蛍光灯は不規則に点滅し、コンクリむきだしの壁は殺風景な灰色で床には埃が積もっている。荒廃した裏通路を片っ端から覗きこみレイジを捜す。いない、ここにもいない。どこにもレイジの姿が見当たらずにあせりと苛立ちが加速する。
レイジとサーシャが淫らな行為に耽っていた裏通路はどこだ?
レイジ捜索に奔走する間も時間は無為に過ぎ、会場の歓声がコンクリートの通路に反響してかすかに鼓膜に届く。ロンはまだ自分の足で立っているだろうか、意識を失っていないだろうか?気絶したならそれでもいい。
ロンが意地を張ってリングに立ち続け、最悪嬲り殺されるよりはずっとマシだ。
しかし現状では、ロンがサムライと交代しないかぎり僕らに打つ手はない。手と手を打ち合わせて交代の合図をしない限り途中退場は許されないのがペア戦のルールだ。
はやくレイジを連れ戻さなければ、ロンが負けてしまう。
脳裏に焼き付いてるのはどこまでも孤独にリングに立ち続けるロンの姿。
殴られても蹴られても泣き言ひとつ言わず、切れた唇を食いしばり、強い眼光で前だけを見続ける孤高の立ち姿。
『守ってやりたいヤツができたんだ。暗闇で泣いてるガキ』
ボロボロで口をきくのを苦しいはずなのに、ロンはそう言って少し笑った。暗闇で泣いてる子供を助けたいと決意して、その為には自分が強くならなければと覚悟を決めて、凱に無謀な戦いを挑んでいるのだ。
これ以上ロンをひとりで戦わせてはだめだ。ロンが今、いちばんそばにいて欲しい人間がそばにいなければ何の意味もない。レイジにはロンのそばで試合の一部始終を見届ける義務がある。
誰が何と言おうが、ロンがいちばん信頼してるのはレイジなのだ。たとえ本人が否定しようが、僕にはそうとしか思えない。両者の間に何があったのかわからない。決定的な誤解を生む行き違いがあったのかもしれない、誤解が誤解を生んで完全に心がすれ違ってしまったのかもしれない。
でもそれでも、ロンはレイジを嫌いになったわけではない。あのあきれるほどのお人よしが、一年半も身近にいた男をそう簡単に嫌いになれるわけがない。
今ならまだ間に合う、試合終了までにレイジを連れ戻すことができれば……
「!」
慄然と立ち止まる。
通路の壁に背中を預け、床に両足を投げだし、座り込む人影。距離は二十メートルほど離れていたがすぐに誰だかわかった。こんな時間にこんなところで暇そうにしてる男はひとりしかいない。生唾を嚥下し、慎重に足を踏み出す。一歩、二歩、三歩……緊張をごまかすため、頭の中で歩数をかぞえる。獰猛な本性を隠した豹に接近する人間の用心深さで歩を進め、対象との距離を縮める。
レイジだった。
上着は脱いだままで、上半身は裸だった。一糸纏わぬ上半身はなめらかな褐色で、猫科の獣のようにしなやかに引き締まっていた。造形美が人の形をとったような優美な肢体は同性の目にも魅力的に映る。通路に響く硬質な靴音も聞こえないのか、僕がすぐそばまで接近してもレイジは顔を上げようとすらしなかった。 ひんやり固い壁に背中を預け、両足を投げたポーズで俯いたまま、陰鬱に俯いている。だらしないポーズで座り込んだレイジを「行儀が悪い」と開口一番叱責しようとして、上半身に目がとまる。
裸の上半身には無数の痣。
淫らな行為の痕跡を留め、薄赤く発色した痣が首筋にも胸板にも脇腹にも至るところに散らばっている。これとおなじ痣を売春班でつけられたことがある。
キスマーク。
「……相当酷くされたみたいだな」
レイジの上半身から目を逸らし、呟く。声に反応し、初めてそこに僕がいることに気付いたみたいに振り向いたレイジが「よぉ」と笑う。親しげで気安げで、いつものレイジと変わりない笑顔。
猥褻な行為を見られたことに関してはなんら恥ずかしくないのか、そもそも羞恥心や倫理観や道徳観念が欠落してるのか、レイジは飄々と振る舞っていた。眼前に立ち塞がった僕を壁に凭れ掛かったまま仰ぎ見て、そろえた両手を突き出す。
「キーストア、悪いんだけどこれほどいてくんない」
レイジの手首は鎖で縛されていた。レイジが肌身はなさず身に付けていた十字架の金鎖だ。そういえばサーシャの姿が見当たらないなと周囲を見渡せば、ため息まじりにレイジが言う。
「サーシャは行っちまった」
「鎖もほどかずに?」
「手首縛ったまま放置プレイなんて難易度高いぜ」
眉をひそめた僕の問いに笑いながら肩を竦めるレイジ。鎖が食いこんだまま長時間放置された手首は鬱血し、変色を始めていた。
「……気持ちが悪い」
「あん?」
「裏通路で淫らな行為に及んだ後始末を誰あろうこの僕に、IQ180の天才たるこの鍵屋崎直にさせるとは貴様何様のつもりだ?
僕は変態じゃないからSMには詳しくないし興味もないが売春班にいた関係で多少は知識もあるし経験もある。放置プレイとは通常、サディストとマゾヒストの合意で行われるものだ。貴様にそんなきわどい趣味があるとは知らなかった、軽蔑する。貴様の顔を見ただけで虫唾が走るし第三者的立場で放置プレイに関与して鎖をほどくのも不愉快だ。
結論を言おう、貴様の存在自体が不愉快極まりない。即刻僕の前から立ち去れ、視界から消えろと命令したいが現在の状態を鑑みるに物理的に不可能な要求だ。
なら選択肢はひとつ」
踵を返し、足早に立ち去る。
「帰る」
「ちょ、おい待てかってに帰んなよ!せめて鎖だけでもはずしてくれよ、あと合意ってどこをどうすりゃそう見えたんだ、鎖で縛られたのは合意じゃねえっつの!聞こえねーふりすんなよロバの耳!」
レイジの抗議を無視して廊下の途中まで戻り、そこで立ち止まる。一瞬の逡巡。答えはすぐにでた。怒りにかられて優先順位を間違えるなんていつでも冷静沈着が信条の天才にあるまじき失態だ。諦念のため息をつき、努めて平静を装いレイジのもとへ引き返し、その場にしゃがみこむ。きょとんとしたレイジの目は見ず、視線を合わせるのも避けて言い訳する。
「……誤解するなよ。もし今この場に他棟の人間が通りかかったら、貴様は東棟の恥さらしだ。上着を脱いでだらしなく座りこんで気力をなくして、挙句にあちこちにキスマークをつけて手首は縛られて何をされたか一目瞭然の破廉恥な姿じゃないか!僕も一応東棟の人間だ、トップの醜聞は避けたい」
それに、このままレイジを放っておくわけにもいかない。僕の本来の目的は会場に連れ戻すことであって、腑抜けたレイジを叱責することではない。こうしてる間も地下停留場のリングではロンがひとりで戦っている。試合終了までにレイジを連れ帰るのが本来の目的なのだから、叱責は後回しにすべきだ。
理性で言い聞かせ怒りを冷却し、通路に屈みこむ。鎖と手首の間に指をもぐらせ、束縛を緩める。手首の皮膚に鎖が食いこんで痛いのか、レイジが顔をしかめる。結び目は固い。精神的にも肉体的にもレイジを束縛したいというサーシャの願望のあらわれか?
「痛っ……」
「我慢しろ」
ロンの方がもっと痛い。サーシャとレイジが互いの体を貪り快楽に溺れているあいだも、たったひとり戦っていたのだから。手首と鎖が擦れる痛みにレイジが弱音を吐き、額にうっすらと汗が滲む。苦痛の色濃く吐息を噛み殺すレイジの表情は被虐の官能に酔い痴れてるようにも……何を言ってるんだ僕は、レイジの表情を観察してる暇があるなら手先に集中しろ。じれた手つきで鎖をいじり、ひどく苦労して結び目をほどく。
ようやくほどけた鎖が手首をすべりおち、鈍くきらめきながら床に落下。
「ふう。晴れて自由の身だ」
鬱血した手首に吐息を吹きかけるレイジをよそにそばの上着を拾い上げ、投げる。頭に上着が被さったレイジを一瞥、そっけなく命じる。
「服を着ろ。着たら行くぞ」
「どこへ」
上着に袖を通しながらレイジが聞く。
「試合会場に決まってる。今リングではロンが戦っている。戦局は不利だ。ロンの相棒なら彼の試合を見守る義務が……」
「行かねえ」
……なんだと。
耳を疑った僕をよそに、上着を纏ったレイジが壁に背中を預けて薄暗い天井を仰ぐ。足元に落ちた十字架のネックレスにはもはや見向きもせず、何もかもどうでもいいと投げ出し、かすかに微笑み。
「……何故だ」
レイジの横顔に魅入られ、上の空で聞き返す。いや、本当に魅入られたのはその瞳だ。灰色の壁を通り越し、ここではないどこかを見ているように漠然とした目つき。
色硝子の瞳に映るのは、茫漠と広がる虚無。
「飽きた」
片膝を立て、もう片方の足を伸ばし、レイジはさらりと言った。
「飽きたんだよ、それだけのこと。ペア戦もロンもどうでもいい、俺がいなくても全部なるようになる。ロンにひっついてうざがられてどつきあいして、それが結構楽しくて、いつのまにか東京プリズンの生活にすっかり馴染んだ気でいたけどやっぱこういう生ぬるいの性にあわないんだわ、俺」
レイジは淡々と言う。一抹の未練もなく、ひとかけらの感傷もなく、明日の天気の話でもするように現在の心境を語る。壁に背中を凭せ掛け、鬱血した手首をさすりながら、乾ききった笑顔で続ける。
「笑顔のフリもしんどくなってきたし、ここらが引き際かなって思うんだ。お前だって気付いてんだろ天才、俺の笑顔がぎこちないこと。ロンはとっくに見破ってたみたいだけど……やっぱ俺、あいつのダチのフリするの無理。限界」
頭が真っ白になった。
「貴様、正気か」
レイジは今、ロンの友人のふりをするのは無理だと、もう限界だと吐露した。友人のふり?僕の目に映るレイジは、とてもロンの友人のふりをしてるようには見えなかった。本当の友人のように見えた。青空の下に寝転がり、ロンが本当に大事だと打ち明けたはにかむような笑顔はにせものだったのか?ロンの前で見せた、あの子供っぽい笑顔すらも全部偽りの芝居だったと言うのか?
胸裏で激情が荒れ狂う。行き場のない焦燥に苛まれ、白く強張るほどに五指を握り締め、俯く。
「ロンは今、ひとりで戦ってる。君がいなくて不安がってる」
「うそつけ。俺がいなくて不安がるわけねーよ、安心するならわかるけど」
「安心する?」
不審げに問い返した僕へとレイジが微笑む。残酷なまでに優しい笑顔。
「殺されずにすんで安心したろ」
限界だった。
理性が一片残らず蒸発し感情が爆発し、気付けばレイジに殴りかかっていた。腕を振りかぶりこぶしを握り固め、丸腰で座り込んだレイジの顔面めがけて殴りかかったはずが僕のこぶしは虚しく空をきり、腰が泳いだ。眼前から消失したレイジが尋常ならざるスピードで背後に回りこみ僕の両手首を腰の後ろで一本にまとめ抵抗を封じる。
後頭部の髪を掴み、壁面に顔を押し付ける。
両手は腰の後ろに回され、レイジの左手でひとまとめに拘束される。獣じみた敏捷性を発揮し、抜群の瞬発力で僕の死角をとったレイジが耳元で囁く。
「二度もおなじ手食うかよ」
「意外と学習能力があるじゃないか。一度殴られて懲りたのか?」
挑発的に口角をつりあげ、背中で両手首を押さえこまれた苦しい体勢から肩越しに振り返る。レイジは活き活きと笑っていた。欠伸しそうに退屈な演技をかなぐり捨て、獰猛な本性を曝け出し、壁に凭れるような前傾姿勢をとった僕の背中に体を寄せる。
「……悪いが遊んでる暇はない、僕は必ず君を連れ帰るとサムライに約束した。ロンは今もひとりで戦っている。君たち二人の間になにがあったかは知らないし第三者の僕が関与するのは本意ではないが、」
レイジの体温は高い。上着越しでも、火照った肌の温度が背中に伝わってくる。体と体が密着し心音が重なり、レイジの息遣いで耳朶が湿る。
僕の説得がレイジに伝わるか自信はない。
が、やってみる価値はある。
乾いた唇を舌で湿らし、慎重に唾を嚥下し、無言のレイジに再度説得を試みる。
「冷静になれレイジ、君は自暴自棄になっている。君とサーシャの性行為を目撃した直後に僕は吐いた」
「ひとの情事見て吐くなよ、失礼だな」
「黙れこの低能、天才の話は謙虚に最後まで聞け。自己分析の結果、ひとつの回答に辿り着いた。僕が嘔吐した本当の理由は、サーシャに体を許した君の姿に自分が重なったからだ」
そうだ。レイジとサーシャの性行為を目撃した僕が逃げるようにその場を後にしたのは、サーシャに体を許したレイジの姿が自分と重なったからだ。銃の情報を入手するために僕は体を売ろうとした。性行為に対する抵抗がなくなり、自分の体を粗末にすることに抵抗がなくなり、自分で自分の価値を貶めていた僕と今のレイジはよく似ている。
僕は馬鹿だ。
レイジを見て初めて、それまで自分がしてきたことがどれだけ滑稽か自覚するなんて。
自分で自分を傷つける自罰行為で、得られるものはなにもないというのに。
喪失を喪失で埋めようとするから、心が虚無に呑まれるのに。
「レイジ、自分に嘘をつくな。君が本心からロンをどうでもいいと思うはずがない。サーシャとの性行為に溺れてる間もロンのことが脳裏を離れなかったくせ、に……!?」
熱い唇が首のうしろに触れ、言葉が途切れた。
「知ったふうな口きくなよ」
手首を掴む五指に握力がこもり、骨が軋む激痛にたまらず苦鳴が漏れる。何をされているんだ僕は、何をしているんだレイジは?僕の首の後ろに唇を這わせ、レイジが呟く。
「ロンなんかどうでもいいって言ったろ。もう飽きたんだよ、懐かない猫かまうのは。一度きりの人生だ、ひとりでも多くの人間と一回でも多く気持ちイイことしたほうが楽しいってわかったんだ。だからサーシャとも試してみた。三回。アイツはやくて物足りなかったけど、鎖で縛られた俺にナイフ這わせて興奮してたぜ」
「変態の寝言など聞きたくな、い」
「よっく言うぜ。俺たちがヤッてるとこ見て勃ったくせに」
「僕は不感症だ、反応するわけがない!」
レイジの手を振り解こうとはげしく暴れるが、壁際に押さえこまれた体勢では無駄な抵抗でしかなく、暴れれば暴れるほどレイジを喜ばせることになる。熱い唇が敏感なうなじを愛撫し、甘く湿った吐息が漏れそうになるのを唇を噛んでこらえれば、壁に顔を埋めて快楽に逆らう僕の強がりが面白かったのか、レイジが低く笑う。
「きれいなうなじ」
「!っあ、く」
首の後ろを噛まれた。
汗を味見する甘噛みではなく、鮮明な歯形を残す噛み方。執拗に首のうしろを舐めていたレイジが、空いた片手を前に回し、僕の上着の内側へともぐりこませる。手際良く上着をはだけた手が脇腹を撫で、ズボンの内側にもぐりこんで下肢を這い、巧みな動きで性感帯を探る。
「男と男がヤッてるとこ見ても勃たないんだよな?じゃあ男の手でも勃たねーよな。本当かどうか試してやる」
気持ちが悪い、吐きそうだ。骨張った手で太股をまさぐられ、嫌悪感が膨張する。レイジは何を考えてるんだ、ロンのことは本当にどうでもいいのか?ロンは今も必死に戦ってるのに、リングに立ち続けてるのに、レイジは今……
「最低だ」
憎悪で声がかすれる。僕は必ずレイジを連れ戻すとサムライに約束したのに、ロンに誓ったのに……
「試合のことなんか忘れちまえよ、最高に気持ちよくしてやるからさ」
上着の内側にもぐりこんだ手が愛撫のはげしさを増し、首の後ろを強く吸われ、恥辱に体が火照る。サーシャと三回もしたくせにまだ物足りないのかと罵りたいがその余裕もない。くそ、僕には何もできないのか?レイジを説得し連れ帰ることもできず、ロンを安心させることもできず……
「そこまでだ」
レイジの手がズボンにかかると同時に固い声が響く。
「!」
レイジの首に小揺るぎもせず木刀を突き付け、行為を中断した人物は他でもない……
「退け下郎。直にふれていいのは俺だけだ」
怒りをあらわにしたサムライだった。
天井の蛍光灯は不規則に点滅し、コンクリむきだしの壁は殺風景な灰色で床には埃が積もっている。荒廃した裏通路を片っ端から覗きこみレイジを捜す。いない、ここにもいない。どこにもレイジの姿が見当たらずにあせりと苛立ちが加速する。
レイジとサーシャが淫らな行為に耽っていた裏通路はどこだ?
レイジ捜索に奔走する間も時間は無為に過ぎ、会場の歓声がコンクリートの通路に反響してかすかに鼓膜に届く。ロンはまだ自分の足で立っているだろうか、意識を失っていないだろうか?気絶したならそれでもいい。
ロンが意地を張ってリングに立ち続け、最悪嬲り殺されるよりはずっとマシだ。
しかし現状では、ロンがサムライと交代しないかぎり僕らに打つ手はない。手と手を打ち合わせて交代の合図をしない限り途中退場は許されないのがペア戦のルールだ。
はやくレイジを連れ戻さなければ、ロンが負けてしまう。
脳裏に焼き付いてるのはどこまでも孤独にリングに立ち続けるロンの姿。
殴られても蹴られても泣き言ひとつ言わず、切れた唇を食いしばり、強い眼光で前だけを見続ける孤高の立ち姿。
『守ってやりたいヤツができたんだ。暗闇で泣いてるガキ』
ボロボロで口をきくのを苦しいはずなのに、ロンはそう言って少し笑った。暗闇で泣いてる子供を助けたいと決意して、その為には自分が強くならなければと覚悟を決めて、凱に無謀な戦いを挑んでいるのだ。
これ以上ロンをひとりで戦わせてはだめだ。ロンが今、いちばんそばにいて欲しい人間がそばにいなければ何の意味もない。レイジにはロンのそばで試合の一部始終を見届ける義務がある。
誰が何と言おうが、ロンがいちばん信頼してるのはレイジなのだ。たとえ本人が否定しようが、僕にはそうとしか思えない。両者の間に何があったのかわからない。決定的な誤解を生む行き違いがあったのかもしれない、誤解が誤解を生んで完全に心がすれ違ってしまったのかもしれない。
でもそれでも、ロンはレイジを嫌いになったわけではない。あのあきれるほどのお人よしが、一年半も身近にいた男をそう簡単に嫌いになれるわけがない。
今ならまだ間に合う、試合終了までにレイジを連れ戻すことができれば……
「!」
慄然と立ち止まる。
通路の壁に背中を預け、床に両足を投げだし、座り込む人影。距離は二十メートルほど離れていたがすぐに誰だかわかった。こんな時間にこんなところで暇そうにしてる男はひとりしかいない。生唾を嚥下し、慎重に足を踏み出す。一歩、二歩、三歩……緊張をごまかすため、頭の中で歩数をかぞえる。獰猛な本性を隠した豹に接近する人間の用心深さで歩を進め、対象との距離を縮める。
レイジだった。
上着は脱いだままで、上半身は裸だった。一糸纏わぬ上半身はなめらかな褐色で、猫科の獣のようにしなやかに引き締まっていた。造形美が人の形をとったような優美な肢体は同性の目にも魅力的に映る。通路に響く硬質な靴音も聞こえないのか、僕がすぐそばまで接近してもレイジは顔を上げようとすらしなかった。 ひんやり固い壁に背中を預け、両足を投げたポーズで俯いたまま、陰鬱に俯いている。だらしないポーズで座り込んだレイジを「行儀が悪い」と開口一番叱責しようとして、上半身に目がとまる。
裸の上半身には無数の痣。
淫らな行為の痕跡を留め、薄赤く発色した痣が首筋にも胸板にも脇腹にも至るところに散らばっている。これとおなじ痣を売春班でつけられたことがある。
キスマーク。
「……相当酷くされたみたいだな」
レイジの上半身から目を逸らし、呟く。声に反応し、初めてそこに僕がいることに気付いたみたいに振り向いたレイジが「よぉ」と笑う。親しげで気安げで、いつものレイジと変わりない笑顔。
猥褻な行為を見られたことに関してはなんら恥ずかしくないのか、そもそも羞恥心や倫理観や道徳観念が欠落してるのか、レイジは飄々と振る舞っていた。眼前に立ち塞がった僕を壁に凭れ掛かったまま仰ぎ見て、そろえた両手を突き出す。
「キーストア、悪いんだけどこれほどいてくんない」
レイジの手首は鎖で縛されていた。レイジが肌身はなさず身に付けていた十字架の金鎖だ。そういえばサーシャの姿が見当たらないなと周囲を見渡せば、ため息まじりにレイジが言う。
「サーシャは行っちまった」
「鎖もほどかずに?」
「手首縛ったまま放置プレイなんて難易度高いぜ」
眉をひそめた僕の問いに笑いながら肩を竦めるレイジ。鎖が食いこんだまま長時間放置された手首は鬱血し、変色を始めていた。
「……気持ちが悪い」
「あん?」
「裏通路で淫らな行為に及んだ後始末を誰あろうこの僕に、IQ180の天才たるこの鍵屋崎直にさせるとは貴様何様のつもりだ?
僕は変態じゃないからSMには詳しくないし興味もないが売春班にいた関係で多少は知識もあるし経験もある。放置プレイとは通常、サディストとマゾヒストの合意で行われるものだ。貴様にそんなきわどい趣味があるとは知らなかった、軽蔑する。貴様の顔を見ただけで虫唾が走るし第三者的立場で放置プレイに関与して鎖をほどくのも不愉快だ。
結論を言おう、貴様の存在自体が不愉快極まりない。即刻僕の前から立ち去れ、視界から消えろと命令したいが現在の状態を鑑みるに物理的に不可能な要求だ。
なら選択肢はひとつ」
踵を返し、足早に立ち去る。
「帰る」
「ちょ、おい待てかってに帰んなよ!せめて鎖だけでもはずしてくれよ、あと合意ってどこをどうすりゃそう見えたんだ、鎖で縛られたのは合意じゃねえっつの!聞こえねーふりすんなよロバの耳!」
レイジの抗議を無視して廊下の途中まで戻り、そこで立ち止まる。一瞬の逡巡。答えはすぐにでた。怒りにかられて優先順位を間違えるなんていつでも冷静沈着が信条の天才にあるまじき失態だ。諦念のため息をつき、努めて平静を装いレイジのもとへ引き返し、その場にしゃがみこむ。きょとんとしたレイジの目は見ず、視線を合わせるのも避けて言い訳する。
「……誤解するなよ。もし今この場に他棟の人間が通りかかったら、貴様は東棟の恥さらしだ。上着を脱いでだらしなく座りこんで気力をなくして、挙句にあちこちにキスマークをつけて手首は縛られて何をされたか一目瞭然の破廉恥な姿じゃないか!僕も一応東棟の人間だ、トップの醜聞は避けたい」
それに、このままレイジを放っておくわけにもいかない。僕の本来の目的は会場に連れ戻すことであって、腑抜けたレイジを叱責することではない。こうしてる間も地下停留場のリングではロンがひとりで戦っている。試合終了までにレイジを連れ帰るのが本来の目的なのだから、叱責は後回しにすべきだ。
理性で言い聞かせ怒りを冷却し、通路に屈みこむ。鎖と手首の間に指をもぐらせ、束縛を緩める。手首の皮膚に鎖が食いこんで痛いのか、レイジが顔をしかめる。結び目は固い。精神的にも肉体的にもレイジを束縛したいというサーシャの願望のあらわれか?
「痛っ……」
「我慢しろ」
ロンの方がもっと痛い。サーシャとレイジが互いの体を貪り快楽に溺れているあいだも、たったひとり戦っていたのだから。手首と鎖が擦れる痛みにレイジが弱音を吐き、額にうっすらと汗が滲む。苦痛の色濃く吐息を噛み殺すレイジの表情は被虐の官能に酔い痴れてるようにも……何を言ってるんだ僕は、レイジの表情を観察してる暇があるなら手先に集中しろ。じれた手つきで鎖をいじり、ひどく苦労して結び目をほどく。
ようやくほどけた鎖が手首をすべりおち、鈍くきらめきながら床に落下。
「ふう。晴れて自由の身だ」
鬱血した手首に吐息を吹きかけるレイジをよそにそばの上着を拾い上げ、投げる。頭に上着が被さったレイジを一瞥、そっけなく命じる。
「服を着ろ。着たら行くぞ」
「どこへ」
上着に袖を通しながらレイジが聞く。
「試合会場に決まってる。今リングではロンが戦っている。戦局は不利だ。ロンの相棒なら彼の試合を見守る義務が……」
「行かねえ」
……なんだと。
耳を疑った僕をよそに、上着を纏ったレイジが壁に背中を預けて薄暗い天井を仰ぐ。足元に落ちた十字架のネックレスにはもはや見向きもせず、何もかもどうでもいいと投げ出し、かすかに微笑み。
「……何故だ」
レイジの横顔に魅入られ、上の空で聞き返す。いや、本当に魅入られたのはその瞳だ。灰色の壁を通り越し、ここではないどこかを見ているように漠然とした目つき。
色硝子の瞳に映るのは、茫漠と広がる虚無。
「飽きた」
片膝を立て、もう片方の足を伸ばし、レイジはさらりと言った。
「飽きたんだよ、それだけのこと。ペア戦もロンもどうでもいい、俺がいなくても全部なるようになる。ロンにひっついてうざがられてどつきあいして、それが結構楽しくて、いつのまにか東京プリズンの生活にすっかり馴染んだ気でいたけどやっぱこういう生ぬるいの性にあわないんだわ、俺」
レイジは淡々と言う。一抹の未練もなく、ひとかけらの感傷もなく、明日の天気の話でもするように現在の心境を語る。壁に背中を凭せ掛け、鬱血した手首をさすりながら、乾ききった笑顔で続ける。
「笑顔のフリもしんどくなってきたし、ここらが引き際かなって思うんだ。お前だって気付いてんだろ天才、俺の笑顔がぎこちないこと。ロンはとっくに見破ってたみたいだけど……やっぱ俺、あいつのダチのフリするの無理。限界」
頭が真っ白になった。
「貴様、正気か」
レイジは今、ロンの友人のふりをするのは無理だと、もう限界だと吐露した。友人のふり?僕の目に映るレイジは、とてもロンの友人のふりをしてるようには見えなかった。本当の友人のように見えた。青空の下に寝転がり、ロンが本当に大事だと打ち明けたはにかむような笑顔はにせものだったのか?ロンの前で見せた、あの子供っぽい笑顔すらも全部偽りの芝居だったと言うのか?
胸裏で激情が荒れ狂う。行き場のない焦燥に苛まれ、白く強張るほどに五指を握り締め、俯く。
「ロンは今、ひとりで戦ってる。君がいなくて不安がってる」
「うそつけ。俺がいなくて不安がるわけねーよ、安心するならわかるけど」
「安心する?」
不審げに問い返した僕へとレイジが微笑む。残酷なまでに優しい笑顔。
「殺されずにすんで安心したろ」
限界だった。
理性が一片残らず蒸発し感情が爆発し、気付けばレイジに殴りかかっていた。腕を振りかぶりこぶしを握り固め、丸腰で座り込んだレイジの顔面めがけて殴りかかったはずが僕のこぶしは虚しく空をきり、腰が泳いだ。眼前から消失したレイジが尋常ならざるスピードで背後に回りこみ僕の両手首を腰の後ろで一本にまとめ抵抗を封じる。
後頭部の髪を掴み、壁面に顔を押し付ける。
両手は腰の後ろに回され、レイジの左手でひとまとめに拘束される。獣じみた敏捷性を発揮し、抜群の瞬発力で僕の死角をとったレイジが耳元で囁く。
「二度もおなじ手食うかよ」
「意外と学習能力があるじゃないか。一度殴られて懲りたのか?」
挑発的に口角をつりあげ、背中で両手首を押さえこまれた苦しい体勢から肩越しに振り返る。レイジは活き活きと笑っていた。欠伸しそうに退屈な演技をかなぐり捨て、獰猛な本性を曝け出し、壁に凭れるような前傾姿勢をとった僕の背中に体を寄せる。
「……悪いが遊んでる暇はない、僕は必ず君を連れ帰るとサムライに約束した。ロンは今もひとりで戦っている。君たち二人の間になにがあったかは知らないし第三者の僕が関与するのは本意ではないが、」
レイジの体温は高い。上着越しでも、火照った肌の温度が背中に伝わってくる。体と体が密着し心音が重なり、レイジの息遣いで耳朶が湿る。
僕の説得がレイジに伝わるか自信はない。
が、やってみる価値はある。
乾いた唇を舌で湿らし、慎重に唾を嚥下し、無言のレイジに再度説得を試みる。
「冷静になれレイジ、君は自暴自棄になっている。君とサーシャの性行為を目撃した直後に僕は吐いた」
「ひとの情事見て吐くなよ、失礼だな」
「黙れこの低能、天才の話は謙虚に最後まで聞け。自己分析の結果、ひとつの回答に辿り着いた。僕が嘔吐した本当の理由は、サーシャに体を許した君の姿に自分が重なったからだ」
そうだ。レイジとサーシャの性行為を目撃した僕が逃げるようにその場を後にしたのは、サーシャに体を許したレイジの姿が自分と重なったからだ。銃の情報を入手するために僕は体を売ろうとした。性行為に対する抵抗がなくなり、自分の体を粗末にすることに抵抗がなくなり、自分で自分の価値を貶めていた僕と今のレイジはよく似ている。
僕は馬鹿だ。
レイジを見て初めて、それまで自分がしてきたことがどれだけ滑稽か自覚するなんて。
自分で自分を傷つける自罰行為で、得られるものはなにもないというのに。
喪失を喪失で埋めようとするから、心が虚無に呑まれるのに。
「レイジ、自分に嘘をつくな。君が本心からロンをどうでもいいと思うはずがない。サーシャとの性行為に溺れてる間もロンのことが脳裏を離れなかったくせ、に……!?」
熱い唇が首のうしろに触れ、言葉が途切れた。
「知ったふうな口きくなよ」
手首を掴む五指に握力がこもり、骨が軋む激痛にたまらず苦鳴が漏れる。何をされているんだ僕は、何をしているんだレイジは?僕の首の後ろに唇を這わせ、レイジが呟く。
「ロンなんかどうでもいいって言ったろ。もう飽きたんだよ、懐かない猫かまうのは。一度きりの人生だ、ひとりでも多くの人間と一回でも多く気持ちイイことしたほうが楽しいってわかったんだ。だからサーシャとも試してみた。三回。アイツはやくて物足りなかったけど、鎖で縛られた俺にナイフ這わせて興奮してたぜ」
「変態の寝言など聞きたくな、い」
「よっく言うぜ。俺たちがヤッてるとこ見て勃ったくせに」
「僕は不感症だ、反応するわけがない!」
レイジの手を振り解こうとはげしく暴れるが、壁際に押さえこまれた体勢では無駄な抵抗でしかなく、暴れれば暴れるほどレイジを喜ばせることになる。熱い唇が敏感なうなじを愛撫し、甘く湿った吐息が漏れそうになるのを唇を噛んでこらえれば、壁に顔を埋めて快楽に逆らう僕の強がりが面白かったのか、レイジが低く笑う。
「きれいなうなじ」
「!っあ、く」
首の後ろを噛まれた。
汗を味見する甘噛みではなく、鮮明な歯形を残す噛み方。執拗に首のうしろを舐めていたレイジが、空いた片手を前に回し、僕の上着の内側へともぐりこませる。手際良く上着をはだけた手が脇腹を撫で、ズボンの内側にもぐりこんで下肢を這い、巧みな動きで性感帯を探る。
「男と男がヤッてるとこ見ても勃たないんだよな?じゃあ男の手でも勃たねーよな。本当かどうか試してやる」
気持ちが悪い、吐きそうだ。骨張った手で太股をまさぐられ、嫌悪感が膨張する。レイジは何を考えてるんだ、ロンのことは本当にどうでもいいのか?ロンは今も必死に戦ってるのに、リングに立ち続けてるのに、レイジは今……
「最低だ」
憎悪で声がかすれる。僕は必ずレイジを連れ戻すとサムライに約束したのに、ロンに誓ったのに……
「試合のことなんか忘れちまえよ、最高に気持ちよくしてやるからさ」
上着の内側にもぐりこんだ手が愛撫のはげしさを増し、首の後ろを強く吸われ、恥辱に体が火照る。サーシャと三回もしたくせにまだ物足りないのかと罵りたいがその余裕もない。くそ、僕には何もできないのか?レイジを説得し連れ帰ることもできず、ロンを安心させることもできず……
「そこまでだ」
レイジの手がズボンにかかると同時に固い声が響く。
「!」
レイジの首に小揺るぎもせず木刀を突き付け、行為を中断した人物は他でもない……
「退け下郎。直にふれていいのは俺だけだ」
怒りをあらわにしたサムライだった。
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