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第6話 忠臣の供述
しおりを挟む「では、お茶を持って参ります」
侍女が頭を下げて退室しようとする。
「待て」
それを、王太子が呼び止めた。
「なんのつもりだ?」
「なに、とは、なんのことでしょう?」
「すっとぼけるな!!椅子とテーブルはどこへやった!?なんで応接室のど真ん中にベッドがあるんだ!!」
「はて?応セッ室は元からこういう内装では?」
「んな訳あるか!!」
いくらなんでも仕事が早すぎる。勝手に王宮の一室を改装するんじゃない。
「そもそも応接室で仕込まれる英雄なんか嫌だろうが!!」
「英雄はどこで仕込まれようと英雄です。ご安心を」
「何を安心しろってんだ!?」
ガルヴィードは「うがーっ」と頭を掻きむしった。それを見て、ルティアはドレスの裾を握り締めてぶるぶる震えた。
(なんで、こんな辱めを……)
どこの世界に、王宮の応接室に急遽運び込まれたベッドへ案内される令嬢がいるのだ。目にじわりと涙がにじんだ。
「それもこれもアンタのせいよっ!!」
「はあっ!?」
「何がどうなって私がアンタの子を産むのよっ!?」
「知らねぇよっ!!―――って、おい、よせ!落ち着けっ!」
ルティアは朝からの一連の流れでもういっぱいいっぱいだった。ぶんぶん腕を振り回してガルヴィードに殴りかかった。
ガルヴィードはルティアの拳を避けて腕を掴んで宥めようとした。
ルティアはいっぱいいっぱいだった。冷静さを失っていた。
泣きながらガルヴィードに殴りかかって、腕を掴まれて暴れた結果、足を滑らせて後ろ向きに転んだ。
「っ、おい!?」
ガルヴィードはルティアの腕を掴んでいたため、バランスを崩して一緒に倒れてしまった。
幸い、ベッドの上に倒れ込んだので、二人とも怪我はなかった。
「……テメェ!危ないだろうがっ!!」
「ガルヴィード?ここにいるのか?」
ガルヴィードは知らなかった。
侍女がいつの間にか姿を消していたことを。
そして、夢をみて「やれやれ大変なことになったな」と王太子の親友である侯爵家嫡男ルートヴィッヒ・ハウゼンが城を訪ねてきて彼を捜していたことを。
応接室の扉を開けたら部屋の真ん中に何故かどでかいベッドがあって、王太子が泣きじゃくる伯爵令嬢を組み敷いていた。
「俺は正しいことをしたと思う」
王太子にジャーマンスープレックスを決めて昏倒させた侯爵家嫡男は後にそう供述した。
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