16 / 89
第16話 婚約者候補
しおりを挟む「ステラや……話を聞いたのだが、婚約したいというのは本気かね?」
「はい。お父様」
その夜、お父様に真剣な表情で尋ねられて私は即答した。
「そうか……ヒューイット・グレイの評判は知っているのか?」
「もちろんです」
未来の分まで知っているので、今現在ささやかれているものより遥かにろくでもない評価がされていたのまで知っている。
暴れた殴った暴言を吐いた、そんな噂ばかりだった。
ヒューイット様が口が悪くすぐに頭に血がのぼり、暴力的なのは確かだろう。
けれどそれがなんだって言うの。
「お父様。世間の評判がどうあれ、私にとってはヒューイット様は素晴らしい御方なのです」
ヒューイット様が誰かを傷つける発言をするなら私がお諫めするわ。
誰かを殴ろうとしたら私が体を張ってお止めするわ。
どうしようもなくて暴れるしかないような状況に、ヒューイット様を追い込んだりしないわ。
私は胸を張って微笑んだ。
お父様はしばしの間頭を抱えて悩んでいたが、やがてこう提案した。
「ステラの気持ちはわかった。しかし、父様達はまだヒューイット殿のことをよく知らん。なので、いきなり婚約者とすることはできない。そこでだ、ヒューイット殿にはまずは婚約者候補として我が家にて教育を受けてもらおう」
お父様の話はこうだ。
私と結婚するということは、公爵家に婿入りすることになる。婿として、女公爵となる私を支えることが出来るか否かを見極めるため、我が家で教育を施す。
同時に、私も公爵家を継ぐための教育を始める。
前回はこの頃からお妃教育が始まったのだし、公爵家を継ぐ教育ならコリンがやっていたのを見ていたからなんとなく想像はつくわ。
婚約者の家で教育を施すのはよくある話だし、及第点をとれるまでは候補のままにしておくのもよくある話だ。
家によっては複数の候補へ教育を施して最も優秀な者を婚約者に選ぶという形を取る場合もある。
「はい。それでかまいません」
我が家で教育を施すということは、これからヒューイット様と一緒に勉強できるということだわ。
ヒューイット様は出来が悪いと言われていたし、学園の成績も芳しくなかったのでしょうけれど、今回は私が全力でサポートさせていただくわ。
ああ、楽しみ!
「ありがとうございます、お父様!」
こうして、私とヒューイット様は正式に婚約者候補となったのだった。
80
お気に入りに追加
1,029
あなたにおすすめの小説
異世界ネット通販物語
Nowel
ファンタジー
朝起きると森の中にいた金田大地。
最初はなにかのドッキリかと思ったが、ステータスオープンと呟くとステータス画面が現れた。
そしてギフトの欄にはとある巨大ネット通販の名前が。
※話のストックが少ないため不定期更新です。
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
ぬるいラムネ
あおみなみ
恋愛
他のサイトで「炭酸飲料」をテーマにしたコンペがあり、そこで書いたものの転載です。
実話を淡々と書いたものですが、エッセイというのもピンとこないので、「恋愛」のカテゴライズになっています。
さらっとしゅわっと、お気軽にどうぞ。
婚約破棄と言うなら「時」と「場所」と「状況」を考えましょうか
ゆうぎり
恋愛
突然場所も弁えず婚約破棄を言い渡された。
確かに不仲ではあった。
お互い相性が良くないのは分かっていた。
しかし、婚約を望んできたのはそちらの家。
国の思惑も法も不文律も無視しての発言。
「慰謝料?」
貴方達が払う立場だと思うわ。
どれだけの貴族を敵に回した事か分かっているのかしら?
隣国で流行りだからといって考えなしな行動。
それとも考えての事だったのか?
とても不思議な事です。
※※※ゆるゆる設定です。
※※※オムニバス形式。
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる