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63、拾った髪留め
しおりを挟むアルベルト野郎のせいでお兄様のお嫁さん探しが振り出しに戻ってしまった。ぶー。
ティアナが帰った後、口を尖らせてふてくされていると、ハンカチを持ったアンナがやってきた。
「お嬢様。スカートのポケットにこれが入っていたのですけれど、お嬢様の物ですか?」
アンナが持ってきたのはポケットに入れていたニチカの髪留めだ。見覚えのない物なのでアンナが首を傾げている。
「私のではないの。知り合いが落としていったので、後で返そうと思って」
「そうなんですか。ですが、壊れてしまっていますよ」
アンナに言われて手元を覗き込むと、確かに髪留めはまっぷたつに割れていた。あちゃあ、土手から転がり落ちて尻餅をついたからなぁ。
「仕方がないわ。似たような物を買って壊れた物と一緒に返すことにする。学園が始まるまでに用意しておいてくれる?」
「かしこまりました。でも、これ、普段使いするにはちょっと立派ですね」
言われてみれば、鼈甲で作られた髪留めは見た目は地味だが結構値の張りそうな品だった。
平民のニチカがこんなもの持ってるかな? 攻略対象の誰かにもらったとか?
「落とした方は探しているのでは?」
「うーん。そうね」
学園が始まってからでいいと思っていたけれど、早めに返して上げた方がよさそうだ。
「アンナ。私の同級生のニチカ・チューオウという方の住所を調べてくれる?」
「名字持ちの方でしたら、すぐにわかりますよ。お待ちください」
なんでも、名字持ちは貴族と同様に住んでいる場所を記録されているらしい。貴族の家の使用人は当然、他の貴族の家の場所をすべて把握している。手紙やらなんやら届けにいったりとかお使いがあるもんね。
なので、ニチカの住所も執事に聞けばすぐにわかった。
鼈甲の髪留めの価値もわからないし、とりあえず、私の手持ちの髪飾りの中からいくつか選んで持って行って、代わりに好きなのをあげると言おう。
善は急げということで、家を出ようとしたら使用人達に止められた。さっき突き落とされてずぶ濡れになって帰ってきたばかりなので皆心配してすがりついてくる。護衛二人とアンナを連れて行くことでようやく許してもらったのだった。
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