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しおりを挟む第二王子殿下の誕生日当日。
いつものように旧カレンス邸へ向かうと、ディアンヌの姿がなかった。
「ディアンヌ様は、既に王城へ向かわれました。何やら、準備などがあるようで」
エリィがそう教えてくれる。
ああ。そうか。ディアンヌは第二王子殿下の恩人だもの。きっと今夜の夜会では第二王子殿下の隣に立つんだろう。
もしかしたら、皆の前で婚約発表とかあったりして。
「アデル様の準備は私どもに任されておりますので。ご安心ください」
エリィ始めとする侍女達が手をわきわきとさせて迫ってくる。
ひぃー。
怖いよぅ。
夜会の時間になるまで、私は侍女達の天下となった館で逃げることも出来ずに磨かれまくったのだった。
そして、いよいよあの夢のようなドレスを着付けられ、馬車に乗せられ王城へと運ばれた。
夜会が始まるまでにはまだ少し時間があると思うのだけれど、どうやらディアンヌが呼んでいるらしい。
王城へ辿り着くと、踏み入れたことのない王宮の奥へ案内されて、私は目を白黒させた。
なんだかやたらと豪華な部屋に案内されてどぎまぎしていると、ディアンヌがやってきた。
「ディアンヌっ……何、その格好?」
心細かった私はディアンヌが来てくれたことに喜んだのだが、彼女の服装を見て目を丸くした。
ディアンヌは、何故か男性の夜会服を身につけていたのだ。
「アデル……落ち着いて聞いて欲しい」
「ディアンヌ?」
ディアンヌがやけに緊張した面持ちで口を開いた。
「まず、私は貴女に嘘を吐いていた」
「え……?」
突然の告白に、私はついていけずに呆然とした。
「カレンス家の呪いについてだ。私は貴女に「呪いのせいで王子が夭逝するのを防ぐために、王子と同い年の娘をカレンス家へ置く」と説明したでしょ。あれ、嘘なの」
嘘……。
ディアンヌは申し訳なさそうに眉を下げているけれど、私はどうしてディアンヌがそんな嘘を吐いたのかわからなくて立ち尽くした。
「呪われたのは本当よ。ただ、王子は夭逝したんじゃなくて……っ」
「ディアンヌ?」
ディアンヌが急に、胸を押さえて苦しみだした。
「やだ、どうしよう。しっかりして!」
私は慌てて誰かを呼んでこようと部屋から出ようとした。
だが、ディアンヌは私の腕を掴んで引き留めた。
「……いい。大丈夫だ」
「そんなわけっ……」
「これで……呪いが……あっ」
ディアンヌが顔を押さえて呻いた。
すると、その身体が淡く輝き出した。
「な……」
何? 何が起きているの!?
私は息を飲んでその光景をみつめた。
ディアンヌの身体が光の中で膨らんでいき、そして——
光が収まった時、そこにいたのはディアンヌではなかった。
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