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 ディアンヌ様は不敵な笑みを浮かべてリリアンを見下ろす。

「アデルのドレスは私がお貸ししましたの。とっても似合っているでしょう?」
「アンタ、誰よ!?」

「リリアン……っ! 初対面の方に何という口の効き方です!」

 これ以上陛下やディアンヌ様に無礼をしないように口を塞がなければと足を踏み出し掛けた私だったが、ディアンヌ様がそれを制した。

「私はカレンス家のディアンヌです。お見知りおきを」

 ディアンヌ様はふっと笑うと、陛下の前でこう言った。

「陛下。私、彼女のことが気に入りましたの」

 ディアンヌ様が私の腕にご自分の腕を絡めた。

「是非、私の親友になっていただきたいですわ」
「ふむ、そうか」

 陛下が王妃陛下と目を見合わせた。

「アデル嬢。実は、ディアンヌはこの国のある重大な仕事に関わっている。そのため、街外れの館に一人で暮らしているのだが、アデル嬢にもその仕事を手伝ってもらいたい」

 陛下のお言葉に、私は目を瞬いた。
 ディアンヌ様が重要な仕事を任されていると聞かされて、彼女の堂々たる態度に納得がいったが、その重要な仕事を私が手伝うという命には驚いた。

「お、恐れながら陛下。我が娘、アデルはそのような大事な役目を果たすような器量はとても……」
「そうよ! お姉様がなんでここにいるのよ!」

 父が口を挟んだのはともかく、リリアンが喚くのは本当に不敬だからやめて欲しい。こっちがハラハラする。

 陛下はお父様に目を向けた。

「フェザンディック公爵夫妻、先ほどはアデル嬢は病弱でここに来れないからリリアン嬢が代わりに来たと申したな。だが、アデル嬢はずいぶん元気そうに見えるが?」

 陛下に睨まれて、お父様とお母様は真っ青になった。さすがに、ヤバいと気付いたらしい。遅すぎるけれど。
 そして、リリアンは相変わらず金切り声を上げている。

「お姉様! なんでドレスを着ていますの!? ずるいですわ!」

 意味がわからないが、とにかく黙って欲しい。会場中の視線を集めてしまっている。

「アデル嬢。そなたにはディアンヌの手伝いをしてもらう。これは王命だ」

 収拾をつけるためか、陛下は立ち上がってはっきりと声を響かせた。
 王命とまで言われてしまえば、お父様は何も言えない。私は戸惑いながらディアンヌ様を見た。
 ディアンヌ様は私と目が合うとうれしそうににっこりと笑ったけれど、私なんかがお役に立てるだろうか。

 しかし、陛下のお言葉に応えて会場から拍手が起こってしまったので、私に拒否する道はない。
 いきなりこんなことになってしまって、正直戸惑っているが、どうせ家を出て働こうと思っていたのだ。平民になる前に、陛下のお役に立てるのなら精一杯勤めさせてもらおう。

「国のために働くことが出来るのは望外の喜びです。ありがとうございます」

 両陛下へ向かって頭を下げると、お二人は満足そうに頷いてくださった。


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