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 悩んだもののそうした方が煩わしさが減るような気がして、ルイゼルが了承すると、カインはさっさと婚約を整えてしまった。いきなり公爵家から婚約の打診が来て、両親が腰を抜かしていたしメリッサは失神した。

 という訳で、八度目のルイゼルは正式にカインの婚約者となった。

(まさか、こんなことになるとは……)

 思いがけない展開に戸惑いつつも、今のルイゼルはカインのそばが一番落ち着く場所だと感じていたので婚約が嫌ではなかった。

「ルイゼル!どういうことだ!」

 カインと婚約してすぐに、アクセルが血相変えて迫ってきた。

「何故、カインなんかと……あいつは俺を殺そうとしていた奴だぞ!」

 確かにそうだが、今のカインはもうあの頃のカインではない。

(そして私も、もう一度目の私じゃないんだわ……)

 アクセルに夢中だった最初のルイゼルはもういない。何度も喪失を経験して、カインの孤独を知り、愛した人達の知らなかった一面を知って、傷つけられて苦しんだ。そうして、今の自分が出来た。

「アクセル……私はカインに救ってもらったの」

 ルイゼルがそう言うと、アクセルははっと顔を上げた。

「前のことはもう忘れましょう。せっかく乗り越えてきたんだから、今を大事にしなくちゃ」

 ルイゼルは決意した。もう二度と繰り返さないためにも、今この時を大事に生きて、皆で未来を掴み取ろうと。

 アクセルは悔しそうに顔を歪めたが、ルイゼルは七度目までのことはすべて水に流すと決めた。

「今まで避けていてごめんなさい。これからはクラスメイトとして改めてよろしくね」
「……」

 アクセルはまだ納得できないようだったが、ルイゼルはすっきりした気分だった。カインがずっと味方でいてくれたおかげで、傷ついた心が癒されたに違いない。そして、カインを見ていてわかったことがある。人は変わることが出来るのだ。

 その後のルイゼルは、前のことを引きずるのをやめて自然に学園生活を送った。

 その傍らには、いつもカインがいてくれた。



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