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〜紫鏡と王太子の言い分〜
怪59
しおりを挟む命を狙われた男爵令嬢を王太子と公爵令嬢と子爵令嬢が助けた。という報告を聞いたショーンはどういうことだと眉をひそめた。
メルティが命を狙われたのはわかる。消されそうになったのだろう。
しかし、クラウスとアメリアとハンナが夜の学園に乗り込んでメルティを助けたというのは理解できない。
クラウスは事前に夜の学園に立ち入る許可を得ていた。理由は「呪いを解くため」だったらしいが、彼らはわざわざ一度家に帰ってから馬車で学園にやってきた。メルティを助けにきたにしては行動がおかしい。
「いったい何を企んでいる……アメリア・アーバンフォークロア」
人気のない校舎で怪しい行動をしていた令嬢を思い出して、ショーンは呟いた。
ユリアン・アーバンフォークロアは大いに憤っていた。
自分が眠っている間に愛しい少女が危険に首を突っ込んでいたのだ。
そのことで問いただしても、アメリアは曖昧に言葉を濁すだけで詳しいことを教えてくれない。
(何故、夜の学園なんかに……また、あの子供の差し金か!?)
アメリアに付きまとう得体の知れない子供についても、アメリアは友達だというだけで何も教えてくれない。
以前はアメリアの傍にいるのは自分だけだったのに、最近はユリアンを除け者にして危険な真似ばかり。
(あの子供をアメリアから引き離さなければ……しかし、突然消えたり現れたり、得体が知れない。どうやって捕まえるべきか)
捕まえた男達についての捜査などのため、アメリアは今日まで学園を休んでいる。ユリアンは一人で登校し、放課後の教室で頭を悩ませていた。
「ふう……」
難しい顔で溜め息を吐いた。
「あら。お悩み中ね」
不意に、耳元で楽しげな声がして、ユリアンは驚いて振り向いた。
微笑みを浮かべた小柄な少女が立ってユリアンの顔を覗き込んでいた。
「誰だ?」
幼い容姿からして、一年生だろうか。金の髪に青い瞳の美しい少女だが、何故か大人の女性のような雰囲気を発している。
ユリアンは警戒を露わに少女に向かい合った。
「もしかして、禁じられた恋のお悩みかしら?」
からかうように言われて、ユリアンは顔を歪めた。
「名乗りもせずに無礼だぞ。どこの家の者だ」
「ふふふ……失礼」
少女の青い瞳がぎらりと光った。
「私はメリー。あなたの欲しいものを、手に入れる手助けをしてあげる」
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