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〜メリーさんと義母のたしなみ〜

怪34

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「ついに結ばれたかに見えたユリシアとアレックス。だけど、そんな二人の元に、アレックスの前の恋人フローレンスが事故にあったと知らせがくるの。ユリシアに「必ず帰る」と約束して、フローレンスの元へ向かうアレックス。でも、フローレンスはなんと記憶喪失になっていたのよ」
「ええっ!?」
「た、確か、フローレンスは実家でないがしろにされていて、アレックスだけが頼りだったのよね?」
「その通り。記憶をなくしてしまった寄る辺のないフローレンスを見捨てられず、傍に寄り添うアレックス。ユリシアの元へ戻ろうとしても、フローレンスに泣かれるとアレックスは迷ってしまうの」
「優柔不断な男だ! ユリシアへの愛はその程度なのか!?」

『メリーさん』が現れるまでの時間潰しに、と花子が話し始めた日本の昼ドラを元にした愛憎劇『花の輪舞~愛の果てにきらめく命~』に、いつしかアメリアとハンナのみならずユリアンまでも熱中している。

「戻ってこないアレックスに不安になるユリシア……大丈夫。私はアレックスを信じる。そう思うユリシアだったけれど、そんな矢先に、衝撃の事実を知ってしまうの……」
「ど、どうなるの!?」
「お願いアレックス! ユリシアの元へ戻って!」
「僕なら愛しい相手の傍を絶対に離れないけどな!」
「突然尋ねてきたアレックスの母からユリシアは残酷な事実を知らされるの……ユリシアとアレックスは、腹違いの姉弟だったのよ!」
「「ええええええっ!?」」
「……」

 アメリアとハンナが悲鳴を上げ、ユリアンは複雑そうな表情を浮かべる。

「残酷な事実を知り苦しむユリシア。一方、フローレンスの元にかつてフローレンスを散々虐待した義妹が押し掛けてきて、アレックスには愛する相手がいるのに貴女が邪魔をしているのよ!と吹き込むのよ」
「いや~……どうなってしまうの!?」
「フローレンスはアレックスに書き置きを残して姿を消すの。そしてユリシアも、アレックスの前から姿を消す決意をするのよ……」
「そ、そんな……っ」

 衝撃の展開に胸を押さえるアメリアとハンナ。

「そして、二人を失ったアレックスはついに……」

 いよいよ花子がクライマックスを語り出そうとした。その瞬間、ハンナの眼前にはらりと手紙が落ちてきた。

「え?」

 ハンナは目の前にぽとりと落ちた手紙に愕然とする。もちろん、アメリアとユリアンも声を失う。



 だが、実は手紙は突然ハンナの目の前に現れた訳ではなかった。

 数分前に遡る。手紙は最初、アメリアの背後にある机の上に出現した。

 だが、フローレンスの記憶喪失に気を取られていたハンナはそれに気付かなかった。

 手紙は机の上からふわりと浮かび上がって、ハンナの横のチェストに着地した。

 しかし、腹違いの姉弟だったユリシアとアレックスに気を取られたハンナはそれにまったく気付かなかった。

 手紙はチェストの上からふわりと浮かび上がって、ハンナの背後をひらひらと飛び回った。

 けれど、姿を消したユリシアとフローレンスに気を取られていたハンナはそれに一向に気付かなかった。

 そのため、痺れを切らした手紙はハンナの目の前に現れたのだ。
 そんなことを知らないハンナは、突然現れた手紙に恐る恐る手を伸ばした。


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