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〜赤いチャンチャンコと弟の歪んだ愛情〜
怪15
しおりを挟む西棟のトイレは日当たりが悪く、昼間でも薄暗い。資料室に教材を片づけに行った帰りにトイレに立ち寄ったが、薄気味悪い雰囲気に後悔した。
(いやだわ……早く出よう)
用を済ませ、洗面台で手を洗う。蛇口を閉めたのと同時に、背後で声がした。
ひひひっ
ハンナは驚いて振り向いた。薄暗いトイレにはハンナの他に人はいない。
けれども、戸の閉まった個室の一つから、笑い声が聞こえたのだ。
『ひひひ……ひひひ……っ』
「だ……誰かいるの!?」
恐怖に身をすくませながらも、ハンナは気丈に声を上げた。
『ひひひ……ひひひひ……赤いチャンチャンコいらんかねぇ~……』
その不気味な笑い声は、しわがれた老婆の声だった。
思っていたほど酷い一日にはならなかった。
人から遠ざかられるのも、こちらを見てひそひそ囁かれるのも、ずっと前からのことだ。前と何も変わらない。
アメリアはほっと息を吐いた。
(目には見えないけれど、花子さんがいてくれるから楽に思えるのかも)
姿は目に見えなくとも、ずっと花子の気配を感じていた。それがとても心強い。
(私も、花子さんの力にならなくちゃ)
授業を終えると、アメリアは人気のない空き教室へ赴き、誰もいない空間に声をかけた。
「花子さん。出てきてちょうだい」
すると、教室の隅に赤いドレスの少女がすっと姿を現した。
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