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StartOver
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「幸せになりたい」と願い。[双子で目鼻立ちもソックリなのだから太陽と入れ替われるに違いない]と信じて疑わなかった月は、太陽に成り変わる事が出来ず。太陽を殺した罪で処刑される事に成りました。
それでも、月は自分が本当の太陽だと言い張り…、最後に愛されていたのは自分であると訴え…、モーントの事を知らない異国の地にて、名も無き偽物として、死んだのです……。
ゾンネは、心を壊し愛される事を求めるモーントの命の灯火がゆっくり消えて行くのを静かに眺めていました。
一連の醜態を目の当たりにしたゾンネには、モーントへの恨みや憤りの感情はありません。ただ、そこには、冷め切った冷たい気持ちだけがあり、ゾンネの心に残ったのです。
そして、ふと気付くと、ゾンネは同じ場所に立っていました。モーントの様に自分の事も愛して欲しい。そう願っていた母親に「お姉ちゃんなんだから」と突き放され…、その場に立ち尽くしていたのです……。
覚えのある孤独感です。ゾンネは最初、夢かと思いました。ですが、覚める夢もありません。
如何して良いか分らず途方に暮れ、幸せそうに母親に甘えるモーントを眺めていたら、母親にまた「お姉ちゃんなんだから家の為に何かしてちょうだい」と言われ、家を追い出されてしまいました。
そう、今日は初めて家の為に、母親に自分の存在を認め、褒めて貰う為に御金を稼いで帰った日です。でも、ゾンネは動き出す事が出来ませんでした。
先行投資無しで、如何すれば稼げるか…、母親に稼いで返った総てを取上げられた為、ゾンネは何度も試行錯誤を繰り返してきたから知っています…経験し覚えているのです……。多分、これは、二度目です。若しくは、ゾンネが覚えていないだけで、何度も何度も同じ事を繰り返しているのかも知れません。
ゾンネが歩き出せずに、その場に立ち尽くしていると、家の中からモーントの楽し気な笑い声が聞こえてきました。一筋の涙がこぼれ落ちます。幼いゾンネの心が母親に愛されたいと訴えています。ですが、この先、愛されたいと願い、愛を得られず、嘆き苦しむ未来が待っているのです。それをゾンネは知っています。だから、閉め出された扉の前に座り込み、歩き出す事が出来ませんでした。
「どうして、ないてるの?ははうえにでも、おこられた?」
誰かが、まだ幼いゾンネに声を掛けます。
ゾンネが声を掛けられたのに驚いて振り返ると、そこには何処かで見た事があるような、今のゾンネより少し年上であろう少年達の姿がありました。(え?コレって…もしかして…レヒトとリンクでは?)
心臓が大きく高鳴ります。走馬灯の様に…、彼等の死を知った時、誤魔化した感情が流れてきました……。(私は…、こんなにまで、レヒトとリンクに会いたかったのか…)
溢れ止まらなくなった涙。声を上げる事も無く静かに泣くゾンネにレヒトとリンクは手を差し伸べてくれ、軽く抱き締めてもくれます。
「「だいじょうぶだから、なかなくていいよ」」
レヒトとリンクの言葉や声が、涙を拭ってくれる行動が…、ゾンネを悲しみの痛みから引き上げてくれました……。
ゾンネは立ち上がり、レヒトとリンクから繰り返す勇気と気力を得て、(…上手に生き直せるなら…今度は、愛して貰えるのかな…)と、前とは少し違う未来を歩き出すのです。
・・・Start Over・・・
それでも、月は自分が本当の太陽だと言い張り…、最後に愛されていたのは自分であると訴え…、モーントの事を知らない異国の地にて、名も無き偽物として、死んだのです……。
ゾンネは、心を壊し愛される事を求めるモーントの命の灯火がゆっくり消えて行くのを静かに眺めていました。
一連の醜態を目の当たりにしたゾンネには、モーントへの恨みや憤りの感情はありません。ただ、そこには、冷め切った冷たい気持ちだけがあり、ゾンネの心に残ったのです。
そして、ふと気付くと、ゾンネは同じ場所に立っていました。モーントの様に自分の事も愛して欲しい。そう願っていた母親に「お姉ちゃんなんだから」と突き放され…、その場に立ち尽くしていたのです……。
覚えのある孤独感です。ゾンネは最初、夢かと思いました。ですが、覚める夢もありません。
如何して良いか分らず途方に暮れ、幸せそうに母親に甘えるモーントを眺めていたら、母親にまた「お姉ちゃんなんだから家の為に何かしてちょうだい」と言われ、家を追い出されてしまいました。
そう、今日は初めて家の為に、母親に自分の存在を認め、褒めて貰う為に御金を稼いで帰った日です。でも、ゾンネは動き出す事が出来ませんでした。
先行投資無しで、如何すれば稼げるか…、母親に稼いで返った総てを取上げられた為、ゾンネは何度も試行錯誤を繰り返してきたから知っています…経験し覚えているのです……。多分、これは、二度目です。若しくは、ゾンネが覚えていないだけで、何度も何度も同じ事を繰り返しているのかも知れません。
ゾンネが歩き出せずに、その場に立ち尽くしていると、家の中からモーントの楽し気な笑い声が聞こえてきました。一筋の涙がこぼれ落ちます。幼いゾンネの心が母親に愛されたいと訴えています。ですが、この先、愛されたいと願い、愛を得られず、嘆き苦しむ未来が待っているのです。それをゾンネは知っています。だから、閉め出された扉の前に座り込み、歩き出す事が出来ませんでした。
「どうして、ないてるの?ははうえにでも、おこられた?」
誰かが、まだ幼いゾンネに声を掛けます。
ゾンネが声を掛けられたのに驚いて振り返ると、そこには何処かで見た事があるような、今のゾンネより少し年上であろう少年達の姿がありました。(え?コレって…もしかして…レヒトとリンクでは?)
心臓が大きく高鳴ります。走馬灯の様に…、彼等の死を知った時、誤魔化した感情が流れてきました……。(私は…、こんなにまで、レヒトとリンクに会いたかったのか…)
溢れ止まらなくなった涙。声を上げる事も無く静かに泣くゾンネにレヒトとリンクは手を差し伸べてくれ、軽く抱き締めてもくれます。
「「だいじょうぶだから、なかなくていいよ」」
レヒトとリンクの言葉や声が、涙を拭ってくれる行動が…、ゾンネを悲しみの痛みから引き上げてくれました……。
ゾンネは立ち上がり、レヒトとリンクから繰り返す勇気と気力を得て、(…上手に生き直せるなら…今度は、愛して貰えるのかな…)と、前とは少し違う未来を歩き出すのです。
・・・Start Over・・・
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