上 下
25 / 33

021+

しおりを挟む
 続きまして、万能薬の薬効を残して不味さを消すと言う研究で寝不足に成っているエリニュエスの周囲の人の御話を御送りいたしましょう。

 先ずは…、万が一、再び…自分達が飲まなければいけない事態を想定したのと…、高級品の棚にティシー商会の新商品として[不味くない万能薬]を並べる為…、エリニュエスの研究にメガイラ&パイディアが参戦…、ティーシポネーとディアスケダスィは御茶をしながら気軽に応援、アレークトー&エフティヒアが夜食を持って支援…、最後にエーピオテースが時間を見て「そろそろ寝なきゃ駄目だろ!」と研究を一時的に強制終了させた深夜の話……。

 話し掛けて来た相手に対して視線も意識も向ける事無く「大丈夫、後…ちょっとやし……」と繰り返すエリニュエスの背後を取り、エーピオテースが溜息交じりに「本当に大丈夫だって言うなら試しに、全身の力を抜いて30秒だけ目を閉じて証明してみてくれないか?」と言いながら実験道具を取上げ、エリニュエスの体を抱き込む様にして支え、空いた手で目を覆い、水魔法でエリニュエスの目を優しく冷やすと、エリニュエスは俗に言う[おやすみ3秒]夢の中。速攻で意識を手放して寝入ってしまった。

 それを今回、初めて目撃してしまった皆は「それ、うたげの余興で見た事がありますわ…、まじっくしょう?でしたっけ?」「ん~…手品の事かな?」「ディアス…それを言うなら催眠術の方では?」と動揺を見せ驚き、興味津々な御様子。

 実家で家令ハウス・スチュワードのセヴァスモスが遣り始め…、兄や義理の姉も同じ事が出来る為…、そう言う手段が存在する事を昔から知ってたエフティヒアは最初「エリスを引き取って帰るよ」と平然とし、妹に引き渡しを要求するがエーピオテースに「大丈夫、問題無い…、寝かし付けた責任を持って、ちゃんと部屋に送り届けてあげるから」と断られる。
そして、エフティヒアは「エース?何を勘違いしているのかな?妹と婚約者の部屋に入らせる訳が無いだろ?」と口調を強めた。

 ここで密かに注意するポイントは…、エフティヒアの妹エリニュエスと、エフティヒアの婚約者アレークトーは同室であるのだが…、そもそも、兄であろうが婚約者であろうが、女生徒の寮の部屋への侵入は校則で認められていない…と、言う事だろう……。

「エフィ?若しかして疑ってる?大丈夫、エフィの婚約者に手を出す訳がないだろ?」
「それは信じてるけど…、妹に対して魔が差すかもしれないだろ?」
「いやいや…、妹だよ?」
「妹だけど…って…え?それはエリスに魅力が無いと言いたいのか?ちょっと納得いかないぞ!」
「何言ってんの?エリスに魅力が無い分けがないだろ?エリス程に可愛い妹はいない!」
「エースこそ、何言ってんの?可愛ければこそ!魔が差すモノだろ?」
深夜のテンション。エフティヒアとエーピオテースの不毛で意味不明な論議が続き…、エーピオテースの腕の中で目を覚ましたエリニュエスが眉間と鼻面に皺を寄せ…「うるせっ…」と呟き、慌てて謝る2人を振り払い退出、自室に自力で帰って行ったのは…、ある意味で御愛嬌(?)と言うモノだろう……。

 その場に残されて誰よりも凹むエフティヒアにアレークトーは「ウチに剣術の訓練に来始めた頃の事を考えれば、毒も吐かなく成ったし舌打ち回数も減りましたしエリスの態度は大分マシに成って来てるんです…、気を落とさないで……」と言う。
学園に入ってからしか面識の無いティーシポネーとメガイラは「最近怪我してから、丸く成った感はありますけど…」[もっと前は、そんなに酷かったのですか?]と言う疑問を呈した。学園に入学した後の今より、昔を知らない者達に取って、この心境的は分らなく無い事も無い。

 寮の方にも設えられている実験室に残された他のメンバー達は口々に「出会った頃も、そうだった」「エースが構い倒して、まだマシに成った」とか、「あの見下した表情には背筋が凍るモノがあったな」「払い除けるだけじゃ飽き足らず、冷水ぶっ掛ける事もあったよね」「今さっきみたいな表情も、もっと頻繁に見せてたのですよ」と言い。エフティヒアに至っては「もっと昔は、エウデ兄さんに対する様に甘えてくれる事もあったって言うのに…」と呟いていた。
「「いやいや、それは有り得なく無いか?」」
この突っ込みはディアスケダスィとパイディアである。
「いえいえ、そう言う時期もあったって事ですよ」
エーピオテースはエフティヒアと従兄弟であり。嫌われる前を遠くから乍ら見た事があった上、エフティヒアと知り合いに成って暫くは、仲良し期間が継続中だった事もあって、それが変わってしまった理由にもエーピオテースは拘っていた事からエフティヒアに何時も同情的で、こう言う時は基本エフティヒアの味方である。

 ここで話が少し変化する。パイディアが「何て言うか、それって…ディアスの初恋の女の子の存在並みに信憑性が無いですよ」と言ったのだ。
「パディ!ホント、嘘じゃないんだって!!」とディアスケダスィ。と同時に「そこの所を詳しく御願いしたいですわ!」と野次馬根性で興味を示したのはティーシポネーだった。「ディアス兄様ってば、そう言う事を話して下さらないのですよ」との事だ。

 再度確認しておこう。深夜である。酒を飲んでいる訳では無いのだが、この場に残った者達は深夜のテンションである。
パイディア以外の、その場に居合わせたそれぞれがディアスケダスィの初恋の話に興味を持ってしまった。

「パディが従僕としてウチに預けられる前に出会ったんだ」と話し出したディアスケダスィが言うには、中心部に世界樹の大木が聳え立つ王家の森にて、周囲が茜色に染まる夕刻、妹であるティーシポネー程度に見える年齢の幼女と出会ったらしい。

「あの子は僕を守る為に雪が降る中、氷の刃で狼を串刺しにし、凍らせた向日葵を武器に次々と魔物を殴り倒して…」
「ちょっと待って下さい!ディアス兄様!季節設定は何時に成るのですか?それにそれ、御幾つの時の御話です?」
「5歳かな?」
「それですと、御相手が人間ならば3歳と言う事に成りますので人類種では有り得ませんよね…、でもエルフ系…は、そう言う暴力的な事をする種属じゃありませんし…、ドワーフ系…に氷の魔法を使える者は存在しません…、と成ると…獣人や魔族系と言う解釈で宜しいでしょうか?」
「違うと思う…、夜空に流れる星の河を閉じ込めた様な瞳はちゃんと、人間のソレだったと記憶しているんだ」
そう言い切るディアスケダスィに対して「真実味が無い」「幾らか美化や妄想が入っているのでは?」等の感想を残し、周囲の興味は失われて行った。

 こうして「ね?信憑性が妖しいでしょ?」と言うパイディアの意見に皆が賛同し、今夜の所は皆、そろそろ寮の自分の部屋へと帰る事にする。
「パディ、ホントなんだって!」
「はいはい…ディアス、了解してますよぉ…(こう言う時、同室だと逃げるに逃げられなくて辛いんだよなぁ~)…」
但し、他の皆と違って…パイディアの受難は、もう暫く続くらしい……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】貴方たちはお呼びではありませんわ。攻略いたしません!

宇水涼麻
ファンタジー
アンナリセルはあわてんぼうで死にそうになった。その時、前世を思い出した。 前世でプレーしたゲームに酷似した世界であると感じたアンナリセルは自分自身と推しキャラを守るため、攻略対象者と距離を置くことを願う。 そんな彼女の願いは叶うのか? 毎日朝方更新予定です。

悪役令嬢は所詮悪役令嬢

白雪の雫
ファンタジー
「アネット=アンダーソン!貴女の私に対する仕打ちは到底許されるものではありません!殿下、どうかあの平民の女に頭を下げるように言って下さいませ!」 魔力に秀でているという理由で聖女に選ばれてしまったアネットは、平民であるにも関わらず公爵令嬢にして王太子殿下の婚約者である自分を階段から突き落とそうとしただの、冬の池に突き落として凍死させようとしただの、魔物を操って殺そうとしただの──・・・。 リリスが言っている事は全て彼女達による自作自演だ。というより、ゲームの中でリリスがヒロインであるアネットに対して行っていた所業である。 愛しいリリスに縋られたものだから男としての株を上げたい王太子は、アネットが無実だと分かった上で彼女を断罪しようとするのだが、そこに父親である国王と教皇、そして聖女の夫がやって来る──・・・。 悪役令嬢がいい子ちゃん、ヒロインが脳内お花畑のビッチヒドインで『ざまぁ』されるのが多いので、逆にしたらどうなるのか?という思い付きで浮かんだ話です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】 乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。 ※他サイトでも投稿中

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

処理中です...