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 原作主人公フィリア的には攻略対象を一人も落とせず、無情にも時間が過ぎて、タイムリミット迫る局面。
この物語の主人公エリニュエス的には [ざまぁ]される事は無かったが…思う様に[ざまぁ]して、その[ざまぁ]を特別に実感できるチャンスも無かった原作ゲームの時間枠の後半……。

 エリニュエスは突然、フィリアに「男の制服を着て紛らわしい!アンタ、女だったのね!」と言われた。
クラスは一緒だが、寮が別だから、私生活で気付けるチャンスが無く…、学校生活でも、エリニュエスは着替えや男女分けが存在する授業を選択してはおらず…、既に騎士で、学生と兼業している職業な為に騎士を目指す騎士学を専攻する必要は無く、エリニュエスが専攻しているのは帝王学や経済学…魔法学を専攻するフィリアとは接点が少なく…フィリアがエリニュエスの性別に気付けるイベントが無かったのだろうと思われる……。
「よくも騙してくれたわね!」とエリニュエスに言い掛かりを付けるフィリア。
周囲は、それに同意する者がそれ成りに少なく…、最初から知ってた者、皇女であるティーシポネー御一行と授業からプライベートまで終始行動を共にしていた事から[そうじゃないか]と疑っていたり、思っていたり、気付いていたりしていた者が殆どであった。

「それにアンタ!自分の周囲に何したの!メインの攻略対象全員が仮攻略状態って何!状態異常でシスコンに御主人様命?仮親って何なのよ!!意味分かんない!」
(意味は私も分らんけど…シスコンとかて状態異常なん?)とエリニュエスが疑問に思う中、次ぎにフィリアの標的になったのはアレークトーだった。
「え?私?」
「アンタ以外は皆、状態異常持ちで仮攻略状態状態じゃないの!」と訴えたフィリアの主張は以下の通りと成っている。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 [状態異常と組み合わせ一覧]
*シスコン*
 ディアスケダスィ(対象 ティーシポネー・ケラヴノス)
 エフティヒア  (対象 エリニュエス・ヒュドール)

*ブラコン*
 ティーシポネー (対象 ディアスケダスィ・ケラヴノス)

*仮親*
 エーピオテース (対象 エリニュエス・ヒュドール)

*御主人様命*
 パイディア   (対象 ディアスケダスィ・ケラヴノス) 
 メガイラ    (対象 ティーシポネー・ケラヴノス)

*依存*
 エリニュエス  (対象 セヴァスモス・ヒーメロス)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 フィリアの下僕によって黒板に書き出されたモノを見たエリニュエスは(マジでか!私も状態異常なん?あぁ~でも、セヴァスに依存せぇ~へんのは無理やな…便利が過ぎて手放すん無理やし)と思いながら、アレークトーに詰め寄ろうとするフィリアの前に割って入り「私の姉予定のアレクトに何をするつもりかな?事と次第に寄っては、拘束するよ」と宣言してアレークトーを守る様に立ちはだかった。

 すると憤りを隠さないフィリアは「何よ!守られるべきはか弱い私の方であるべきだわ!騎士やってる筋肉質で女らしさの欠片も無い人とか、守る価値が無いでしょ!」と言うのだが…、これは知識不足で残念な発言…、エリニュエスは嫌悪感を露わに「は?(私がスキルポイント使って強化した)アレクトの女子力の高さ舐めてるの?それに私もアレクトも騎士は騎士でも魔道騎士だよ?身体強化のエキスパート!アタッカーが無駄な筋肉とか付けてる訳が無いでしょうに…重装備で重たい筋肉付けて戦う大盾使いタンク役とは別モノだよ…無知も程々にしようよ…、そもそも他人を貶める君を守る価値って何?何所に何の価値があるのさ?」と言ってフィリアを黙らせる……。

 因みに、アタッカーもタンク設定も異世界転生者である幼少期のエリニュエスが前世のオタク知識を自慢気に話し、エリニュエスが知らない内にセヴァスモスが広めた知識。知らない者は知らなくて仕方が無い事なのだが、物心付いた頃にはエリニュエスの周囲では常識だったので、今後も幼少期に持ち込んだ自分自身の知識だとエリニュエスが気付く事は無いであろう。

 そして、エリニュエスに簡単に言い負かされ、原作ゲームではヒロインであった筈のフィリアの表情が、現在ヒロインらしからぬ事に成っている。シ~ンと静まり返る教室。
そこへ原作ゲームでは簡単に攻略できる王子様なディアスケダスィが「ティシー、御迎えに来たよぉ~」と軽いが過ぎる雰囲気のりでやって来て「状態異常とは酷い言い掛かりだな」と黒板を見て言った。一緒に付いて来ていたエフティヒア・エーピオテース・パイディアも同様の反応を見せてくれ、エフティヒアに至ってはアレークトーがフィリアに言い掛かりを付けられたと知って、アレークトーに対し「大丈夫、もう心配要らないよ」と言って距離を詰め寄り添いアレークトーの腰に手を回して微笑んでいる。エリニュエスは仲睦まじい2人を眺め(やり過ぎ感は否めへんけど、婚約者大事にするんは好感もてるわぁ~)と満足げに頷いていた。

 すると「エリニュエス君、万能薬持ってないかい?」とディアスケダスィ。
「ありますよ」
「全員分あるかな?」
「え゙?!若しかして若しかすると…、名出しされた全員で飲むんですか?」
「状態異常と言われたからには、飲んで状態異常では無い事を証明すべきだろ?」
「相手が不在で検証が出来ない私は除外で良いですよね?」
「と、言う事は…、不味いのか?万能薬……」
「私は基本の状態異常耐性が高いので飲んだ事はありませんが…」
「そうか…仕方が無い、死なば諸共だな…王族が2人も犠牲に成るのだから、エリニュエス君もね?」
「ディアス兄様が、そう決めたのです…、さ、エリスも御一緒に!」
この後、状態異常では無いと言う証明は出来たのだが、昼食を食べる為に設定された昼休みだと言うのに、フィリアの所為で味覚が暫く死んでしまうと言う事態が発生するのであった。

「ディアス生徒会長…、死なば諸共と言いましたよね?この場に居る皆様にも、万能薬を御賞味頂くのは如何でしょう?特に、言い掛かりを付けて来て下さいましたフィリア嬢と、その御友達の方々に!」
「…許可する……」
「ありがとうございます…、さて、力尽くでも飲んで頂きますよ!御嬢さん!覚悟は宜しいですね?」
この後、エリニュエスの自作魔道具にて捕獲されたフィリアの取り巻き達は1人残らず万能薬を飲まされ、順番を最後に回したフィリアに「え?ちょっ!待って!!アンタ、何本程も万能薬持ってるのよ!」と言われ微笑むエリニュエス。
「勿論、魔道具である収納ポーチにMAXの999本持って来てたから、まだまだ在庫はあるんですよ、万能薬は幾ら飲んでも毒には成りませんのでオカワリしても大丈夫です!御嬢さんには特別サービスして差し上げましょう」と言って追加分をも飲ませたかどうかは御想像にお任せして、昼休みの時間を過ぎても、まだ、暫くの間、万能薬を口にした者の味覚は死んだまま、その長引く万能薬の不味さから解放されたのは放課後の事、それまで万能薬の不味さから誰1人解放される事は無かったのである……。
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