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 出会った翌年、[エリニュエス・ヒュドール]と[アレークトー・アネモス]の友情は…、アレークトーの父であるアネモス辺境伯の剣術の師匠で…、現在のヒュドール家の家令ハウス・スチュワードでもある[セヴァスモス・ヒーメロス]に教えを請う事で、姉妹弟子と成り…、深く強く強固に成って行った……。と、同時に、自分のスキルボードしか手入れできなかったスキル[干渉かんしょう]がレベルアップ。
アレークトーのスキルポイントを無断ではあるが使う事が出来る様に成り、例えば「持っておいて損は無いと思うんだけど…」と家事全般のスキル開発、下手でもスキルが発生した時点でスキルポイントを使用してレベルを3まで補正すると、名前だけだったスキルにレベルの表記が発生!上手に出来ると言う事実や実感が本人のやる気に繋がり、素のレベルも簡単に3まで上がったのである。

 そして当時、まだ子供の頃、自他認めるアレークトーの苦手分野、淑女の嗜みが解消され序でに、王宮の上級侍女に成る為の必須スキル、裁縫や書類整理等までも、スキルポイントを3ポイント使用した補正でスキルアップを計り、エリニュエスの目論見通り、アレークトーを何所に出しても恥ずかしくない完璧な御令嬢へと作り上げたのだった。

 そんなある日ある時、それを知り。縁を切ろうと思っても切る事が出来ないエリニュエスの血縁者、兄の[エフティヒア・ヒュドール]がエリニュエスに質問を投げ掛ける。
「エリス?使用人が持っている様なスキルは、令嬢に必要無いのではありませんか?」
然も、間の悪い事に、その[使用人が持っている様なスキル]の一つ、[料理]のレベルが上がり、エリニュエスとアレークトーが互いの弁当の出来映えを誉め合っている時にだ。

 エリニュエスはアレークトーに対する態度とは打って変わり、小さく舌打ちし「無知にも程がございましてよ?」と溜息混じり「王宮は勿論、我が家で働く使用人達も全員、元を辿れば身元確かな貴族の出身です」と、実の兄に対して野菜に付いた害虫を駆逐くじょせんとする時のいきどおりをはらんだ様な目で「御存知ありませんでしたか?」と言い放って黙らせる。

 冷た過ぎる空気感に周囲はある意味で騒然。
丁度その場に居合わせた御仁。原作となるゲームの中で一番簡単に攻略でき、他の攻略対象狙いでやってても、少しの交流で好感度が鰻上り、簡単にフラグが立って邪魔になる王子様、[ディアスケダスィ・ケラヴノス]も知らなかったらしく、一瞬ではあるがエフティヒアを擁護しようとして何か言い掛けたっぽいが、矛先が自分に向くのを恐れて手を引っ込め、今は目を泳がせていた。
以前、ディアスケダスィが親し気に声を掛けてきた時に…「御久おひさしゅうございます、初対面の折りに私を[本の虫]と言ったエフティヒア兄様の御友人の方」とエリニュエスが返し、追い打ちの様に「何度も御会いしましたが、貴族の初見の挨拶はおろか、一度たりとも自己紹介をして頂いた事もございませんので」と毒を吐き…、その後、事ある事に、貴族同士の挨拶の基本[男性は取り敢えず、女性と話す前に話し掛ける女性を褒めなければならない]と言うルールを示し、マナー違反を犯す度に笑顔で遠回しに指摘し続け…、苦手意識を植え付けた成果だろうか?

 原作では、他人様から見たら何所にも正当性は無いのに、事ある事に自分勝手な正義感を振り回し、よくよく考えると間違った事をしているとは言えない悪役令嬢達をこじつけた様な理由で断罪していたディアスケダスィが、別人の様に萎縮していた。
これに対して(若しかして覚えてる語彙ごいが足りんくて何も言えんのやろか?)他、エリニュエスは、ディアスケダスィの(あの勢い、何時ん次期とき手に入れたモンなんやろうか?)等、気に成る所だったのだろうが…このエリニュエスの思考は乱入してきた者に寄って中断される……。

 エリニュエスの態度とエフティヒアの様子、隣で何も言えなく成っているディアスケダスィを見兼ねたのだろう。原作であるゲームでは、一度として絡みの無い筈の登場人物。エフティヒア含むエリニュエスとアレークトーにとっての従兄いとこ、原作と相違なく派手で軽薄そうなイケメン[エーピオテース・ネロ]が、身長差を生かして後ろからスキンシップ激し目にエリニュエスを軽く抱き締め「エリスはエフィに厳し過ぎるんじゃないかな?」と言いながらエリニュエスの頭を撫で、一方的に優勢なエリニュエスを行動不能に陥れた。

 これを意味不明と思わないでやって欲しい。
エーピオテースの行動は…、前世を入れても[恋愛経験0]で前世では高齢処女、今世ですら高位貴族と言う家柄の為、抱き締められた経験は少なく、一番上の兄以外に頭を撫でられる事も殆ど無くて、スキンシップに耐性がとってもとっっても低いエリニュエスには…、それだけで精神に大打撃と成っているのだ……。

 その上で、エリニュエスの反応を無視して続くエーピオテースの言の葉。
「優秀が過ぎるヒュドール本家の次期当主、エウデ兄さんを普通の基準にしているのなら、それは間違ってるからね!」
[エウデ兄さん]とは[エウメニデス]と言う名のヒュドール家の長兄、エフティヒアより4歳上で、エリニュエスから見ると6歳年上の実の兄の事である。
その話に、今まで様子を見ていたらしい女の子より可愛らしいピュール男爵家の[パイディア・ピュール]も参戦。
「そうだ!あの人は普通じゃない!エフィはエリスが思っているよりも、一般的には優秀なんだぞ!」との事だ。ゲームの設定通り彼等は普通に、この時期から仲が宜しいらしい。
 その仲が良さ気な様子の御陰で、ゲームの断罪シーンを思い出して苛立ちを覚え、エリニュエスはエーピオテースの腕を怒り任せに振り解く事が出来たのであった。
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