推し活のある世界にて…

mitokami

文字の大きさ
上 下
9 / 9

008

しおりを挟む
 秘密とは、思いもしないタイミングでバレてしまうモノらしい。私はジイチャンバアチャンの本気を甘く見積もり、失敗したっぽい。

 私が作ったのは、絵や文字を浮き彫りに彫るのが面倒で、インクを無駄遣いして白抜きの文字や白抜きの簡単な絵を印刷出来る木版画擬きで作った本擬きだったのだが、その擬きをバアチャン達がジイチャン達を巻き込み本格的なモノへを進化させ、江戸時代の瓦版レベルの印刷技術で再現してくれたのがBのLな本、前世の世界での俗に言う[薄い本]である。

 但し、その薄い本。ジイチャン達の匠の技でヤベエクオリティーと成って再現、製本され、重厚感のあるハードカバーの厚い本仕様と成りて、人目に触れる道具屋にて販売中。私が紹介した商品を買いに行ったを手に取り…(以下略)…と言うのが現状である……。

 御蔭で私は道具屋に呼び出され、ジャンル毎に区分けされたBのLな物語専用本棚の前にて正座させられ、元王子から御説教を食らう事に成っている。

「村の識字率に貢献した事は良しとしよう」
「あははw」
「だが、しかし!文章の内容や、この挿絵は駄目だろう!」
ジョージは比較的マシで、挿絵のエロが控えめな描写のページを私に見せてくれた。
「…(それは、私の犯行ではない…けど…)…手書きじゃなく印刷ですか?珍しいですね♪(その挿絵は、眼福モノですけども!)」
そして、私は文章を斜め読みして事態を納得する。はい、ごめんなさい!私が書きました。

「…この本だが…フィリップが村の御婦人達から聴取した結果…、最初に作り始めたのはであると言う証言が多数出ているそうだが、身に覚えは無いか?」
「…(身に覚えしかないけど、誤魔化せるかな?)…、確かに前段階の稚拙なモノを作ったのは私です……」
直後、道具屋で販売してた日記帳や簡易なメモ用紙等を「こんなのを御小遣い稼ぎで作りました」と見せて、多少(?)の誤解はあれど、一時的に上手に誤魔化す事が出来ました。が…、数日後…原稿を引き取りに来たバアチャンが帰り道で元王子御一行に捕まり、私の犯行がバレました……。

 …の…後日……。

「何処で若道じゃくどうを知った?」
「…(若衆道わかしゅどうと一緒の事かな?)…、砦の中では日常茶飯事ですが?」
「環境か?環境が悪かったのか?他に子供や若者が存在していない環境だから、他に楽しみも無く耳年増みみどしまに成ったのか?」
「…(異世界にも耳年増って概念が存在してたんだねぇ~)…」
「今からでも遅くない!子供の居る村や町に引っ越せ!」
「断る!そして、そもそもが無理な御話ですね♪」

 砦に飛ばされて来ていた者達に子供との接点は無く、隣接する村に残った住民は子や孫のいない高齢者。(小孫を持つ村人は、早々に近くの街道沿いの村に移住済み)元王子達が飛ばされて来るまで十代や、若い御子様との接点がある者が極端に少なかった為、私に対して違和感を感じる者が存在しなかったけど、元王子様御一行の御蔭で今後、普通の子供の扱いして貰え無く成ってしまいそうである。
まぁ、もしも、身近に他に子供が居てたら、子供は違いに敏感だから、早々に仲間外れにされてボッチ確定。その影響で大人や老人にも忌避られただろうから、今の環境に感謝しなきゃなんだよな。

「何故だ!」
「私が子供だからさ!」
「は?」
「これだから、甘やかされた坊ちゃんは困るんだよねぇ~、知らないの?何処の世界でも無力な子供に人権は無いんだよ?力や発言力の無い子供は、大人や目上の存在の考える常識に引っ張りまわされ、押さえ付けられ、時には自由を奪われ、虐げられられるモノなのさ♪」
「流石にそんな事は無いだろ?」
「はぁ?アンタだって、今、私を格下だと認識して命令しようとした癖に!」
「……」

 よっしゃー!上手に黙らせれた!!こっから先のイニシアチブは私のモノだな♪と、言う事で、私は言ったら不味い事に成りそうな理由を伏せて、自分が今、ジイチャン達やバアチャン達に良くして貰って幸せである事を語り、BのLな本の事を有耶無耶にして事なきを得た。
この時、ジョージが単純な性格で良かった。と思ったのは、言うまでも無いだろう。

・・・その後、これぞホントの後日談・・・

 財務官僚の息子フィリップには色々と気付かれた。
人が良さそうなのに腹黒と言う設定、俗に言うギャップ萌えを推す読者様達から得たステータス値と、持ち前の商売に対する嗅覚でBのLな本を作るに至った経緯を嗅ぎ付けられてしまったのだ。

「キャラ・ハ譲?理解者以外には黙ってて欲しい?」
「そうですね」
「植物紙を作る技術、版画に寄る印刷技術、それを綺麗に成型する製本技術、全て素晴らしい技術だね♪」
「村民の技術ですが…ありがとうございます?」
「口止め料は、技術の供与で如何だろう?」
「活動を辞めさせたりは?」
「しないよ」
「それでは、絵師のバアチャン達も含めて御紹介して進ぜましょう!」
「交渉成立だね♪業務提携も視野に入れて、御祝いにを融通してあげるよ」
「と、言う事は、BのLな本の販売もOKですか?」
「売れるモノは、大歓迎さ♪」
「ありがとうございます!」

 こうして、私は作者として村人以外からも推される立場を確立して行くのだが…、しかし…、作者が推しキャラに勝てる事は無く…、有る意味で窮地に立たされる未来があると言う事に気付くのは数年後…、BのLな本の作者が増え、BのLな本が王立図書館にも進出してしまった頃の御話である……。

 とある日の出来事。BのLな本で推しとされ、ステータスアップして地位を得たジョージが、私の前に立ちはだかった。

「キャラ・ハ譲、御話があります」
「はい、何でしょう?」
「コレを描いたのはオマエ等か?」
「…(やっべ、モデルにバレてもた…、BのLな本にまで手を出したらアカンかったやも知れんなぁ…、こんな事ならファンタジー利用して田畑を開拓しいて、時に罠掛けして魔物を食べるスローライフだけを楽しんどくべきやったかもしれん…)…」

 この後の事は、御想像に御任せしよう。

 そして、教訓。
気を付けよう!推し活のある世界で一番強いモノは、同人誌の作者等の推し活をするモノでは無く、単品で推されるモノ、推されている存在である事を忘れてはいけない。

・・・end・・・
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?

プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。 小説家になろうでも公開している短編集です。

ブラフマン~疑似転生~

臂りき
ファンタジー
プロメザラ城下、衛兵団小隊長カイムは圧政により腐敗の兆候を見せる街で秘密裏に悪徳組織の摘発のため日夜奮闘していた。 しかし、城内の内通者によってカイムの暗躍は腐敗の根源たる王子の知るところとなる。 あらぬ罪を着せられ、度重なる拷問を受けた末に瀕死状態のまま荒野に捨てられたカイムはただ骸となり朽ち果てる運命を強いられた。 死を目前にして、カイムに呼びかけたのは意思疎通のできる死肉喰(グールー)と、多層世界の危機に際して現出するという生命体<ネクロシグネチャー>だった。  二人の助力により見事「完全なる『死』」を迎えたカイムは、ネクロシグネチャーの技術によって抽出された、<エーテル体>となり、最適な適合者(ドナー)の用意を約束される。  一方、後にカイムの適合者となる男、厨和希(くりやかずき)は、半年前の「事故」により幼馴染を失った精神的ショックから立ち直れずにいた。  漫然と日々を過ごしていた和希の前に突如<ネクロシグネチャー>だと自称する不審な女が現れる。  彼女は和希に有無を言わせることなく、手に持つ謎の液体を彼に注入し、朦朧とする彼に対し意味深な情報を残して去っていく。  ――幼馴染の死は「事故」ではない。何者かの手により確実に殺害された。 意識を取り戻したカイムは新たな肉体に尋常ならざる違和感を抱きつつ、記憶とは異なる世界に馴染もうと再び奮闘する。 「厨」の身体をカイムと共有しながらも意識の奥底に眠る和希は、かつて各国の猛者と渡り合ってきた一兵士カイムの力を借り、「復讐」の鬼と化すのだった。 ~魔王の近況~ 〈魔海域に位置する絶海の孤島レアマナフ。  幽閉された森の奥深く、朽ち果てた世界樹の残骸を前にして魔王サティスは跪き、神々に祈った。  ——どうかすべての弱き者たちに等しく罰(ちから)をお与えください——〉

異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」

マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。 目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。 近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。 さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。 新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。 ※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。 ※R15の章には☆マークを入れてます。

処理中です...