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46 復活の神秘竜

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「マル……? ど、どこへ行った?」

 巨竜が放ったブレスの光が消えた跡には何も残っていなかった。
 まさか今のブレスで跡形もなく消し飛んだのだろうか。
 ドラゴンの倫理観など知るはずもないが、いくら怒っていたとはいえ実の子を殺すとは思えないが……。

【上空に生物反応】

 バサァッ――。
 見上げると、翼を大きく広げ空に舞い上がる青い竜の姿があった。
 忘れもしない、山で最初に俺と戦った時のマルの姿だ。

【雷のブレスを吸収したことでフル充電され、元の姿に戻ったようですね】
「キシャアアァァァァッ――!」

 マルが咆哮し、雷のブレスを四方八方に撃ちまくると、射線上にいた戦闘ヘリが次々と撃墜されていく。
 力を取り戻せたことで相当はしゃいでいるようだ。

「おい! 調子に乗って俺たちに当てるんじゃないぞ! ……うわッ!」

 言ったそばからブレスの一発が俺の目の前の地面に落ちる。
 流れ弾というより、わざと脅かすために俺の近くに撃ったかのように見えた。

「グッグッグッ」

 喉を鳴らしながら俺を見下ろしているマルは目を細め、口角が上がっている。
 竜の姿になっていても分かる、ろくでもないことを考えている時のあいつの表情だ。

「ったく、性格の悪さは変わってないみたいだな」



『なんだ、あの怪獣は!? ええい、空対空ミサイルで応戦しろ! 地上部隊も展開し対空砲火を浴びせるのだ!』

 狼狽したアダムの怒声が聞こえると、いくつかのヘリから縄バシゴが垂れ下がり、銃で武装したモンスターが降下してきた。
 戦闘ヘリの集団は地上にいる討伐軍から標的を変え、ドラゴンの群れに攻撃を始める。

 ドゥンッ!

「ギャアァァッ――――!!」

 棒状の爆弾に片翼に穴を空けられ、ドラゴンの一匹がきりもみ回転しながら大地に沈んだ。
 この世界における空の王者の力をもってしても、戦力は戦闘ヘリと互角といったところか。
 つくづく地球の兵器というのは反則じみている。

「よく分からんが今が好機だ! ドラゴンを援護して地上の敵を掃討するぞ! あれがやられたら今度こそ終わりだ!」

 オオオォォォッ!!
 フィノが檄を飛ばすと、呆然と空中戦を眺めていた兵士たちも士気を取り戻し反撃に転じる。

「僕たちも休んでられない。みんな、行こう!」

 リュートたちも参戦し、降下したモンスターの軍団を蹴散らしていく。
 戦いは乱戦の様相を呈し、飛び交う銃弾とドラゴンのブレス、討伐軍の剣や魔法が一層激しく入り乱れた。
 しばらく膠着状態が続いたが、やがて徐々に討伐軍の部隊が戦線を押し始めた。
 このままいけば勝てるかもしれない。

【ヘリが数機、戦闘域から離脱していきます。うち一機はアダム大佐が搭乗しているものと思われます】

 スリサズの言葉を聞き、俺は周囲を見回すと、三機のヘリが背を見せて飛び去ろうとしていた。

「あの野郎、逃げる気か!」

 このままアダムの逃亡を許せば、さらなる増援を集めて戻ってくるか、それとも今度は戦闘ヘリよりも強力な兵器を持ち込んでくるかもしれない。
 なんとかして追いかけなければならないのだが、ヘリのあのスピードに追い付ける物がこの辺りに、いやこの世界のどこにもあるとは思えなかった。

「ってことは同じ物を使うしかないわけだ」

 俺は頭上でドラゴンと空中戦を繰り広げている戦闘ヘリを見上げた。
 よく見たら、ヘリと戦っているドラゴンはマルだ。
 ならばなおさら好都合。

「マル! ちょっとこっち向け!」

 いきなり呼びかけられてマルは低空飛行しながら首を俺の方に向ける。
 俺は跳躍し、こっちに向いたマルの頭を踏み台にしてさらに高く跳び上がった。

「グェッ」

 頭を踏みつけられて苦しそうな声を吐き出し、俺に恨めし気な視線を送るマル。
 それに構わず、俺はヘリに垂れ下がったままだった縄バシゴに掴まる。
 そのままハシゴを一気に駆け上り機内に乗り込むと、中では二匹のゴブリンがそれぞれ分担して操縦しているのが見えた。
 ゴブリンは俺の存在に気付き、振り返りざまに銃を向ける。

「どけぇ!」

 俺は撃たれる前に接近しゴブリンを機内から空へ叩き出すと、操縦席にあった機械にスリサズを乱暴に押し付けた。
 戦闘ヘリも地球の武器なのだから、ショットガンや高周波ブレードと同じく使えるようにできるはずだ。

【もう少し丁寧に扱ってください。壊れたアナログテレビのように衝撃を与えたからといってハッキングが効率化することはありません】
「いいからさっさとやれ。アダムに逃げられる」

 しばらくすると、無数に付いた計器が盛んに動き出し、円く透明な盤面に地図のようなものが映し出される。
 円盤状の地図には、いくつかの丸印が移動しながら点滅していた。

【この戦闘ヘリはレーダー通信で互いの座標を伝え合っているようですね。アダム大佐の行先もこれで追跡できます】
「まったく大した技術だな」

 地図を確認すると、離れた位置にちょうど三個の点が見えた。
 奴らの技術力には散々てこずらされてきたが、今回ばかりはこっちに良い目を見せてくれそうだ。

「よし、あいつらを追うぞ!」
【ところでジョン、あなたはヘリコプターの操縦ができるのですか?】

 意気込む俺に対し水を差してくるスリサズ。

「……お前がやるんじゃないのか?」
【この戦闘ヘリには自動操縦機能はありません。私のハッキングは操縦者のID登録を書き換えて使用できるようにしただけですので、操縦自体はマニュアルで行う必要があります】
「なんだとぉーッ!?」

 もちろん俺にそんな知識があるわけもなく、スリサズの言葉を待っていたかのようにヘリは不安定に揺れ出し、高度を下げ始めた。

【とり急ぎ操縦席に座ってください。何もしなければ墜落してしまいます】
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