上 下
6 / 31
1章瓶 彼女との出会い

5杯目 デートの準備は大変だ

しおりを挟む
「……んー。まぶしっ。ふぁー」

 カーテンの隙間から刺しこむ太陽の光を浴びて、僕は目を覚ます。普段なら、大学が休みの休日二度寝をかますところだが、今日は違う。無理矢理にでも、重い体を起こし、洗面所へと向かう。  

 リビングに降りると、ニュースがやっており、そこに表示されている時刻は午前7時。待ち合わせまでは、3時間程余裕もある。とりあえず、顔を洗って歯を磨く。

 諸々の支度を終わらせた所で、最後の難関がある。デートをしたことがない僕にとっては、とてつもなく大きな壁だろう。目元までかかる髪のまま行くのは失礼だし、服の組み合わせも悩む。

 まず初めに髪の毛を少しセットしよう。目がしっかりと見えるよう、それでいて髪を上げすぎないように。何かいい髪型はないのかとスマホで調べる。そこで、自分でも簡単にできそうな髪型を見つけた。
 
 髪のトップをワックスで立たせつつ、前髪を左右どちらかに流す。というものだった。見様見真似でやってみることに……

「……っげ」

 結果から言うと、失敗した。かかった時間は15分。どんな感じになったのかと言うと、トップは立たせすぎてどこかの戦闘民族の様になり、前髪は左に流したはいいものの、ワックスを付けすぎたことにより、お風呂に何日も入れなかった人の様になってしまった。

「おぉ! こんな感じかな?」

 それから、洗い流してセットしてって言うのを、かれこれ10回ほどトライした。やっと多少は人前に出ても恥ずかしくないくらいにはできたと思う。因みに時間の方は1時間程。ホッと一息……と、いきたいところだが最後の壁がそびえ立っている。

────洋服どうしようか問題

 僕は、普段遊びに行くことがない。外に出てもスーパーに買い物に行く程度。だから、普段の洋服はグレーのスウェット。だが、流石にスウェットで行くわけにもいかない。そう思い、急いで箪笥タンスの中から洋服を雑に取り出し、ベッドに並べた。

「にしてもパッとしないなぁ……」

 マジでわからない。洋服なんて着てればなんでもいいと思う僕は、組み合わせをどうすればいいか、どんな服が大学生らしいのか分からなかった。いやでも、本当にどれも同じに見えるんだよな……

 40分程悩み、黒い無地のTシャツに、デニムパンツを選び着替えた。
 この先に絶望が待ってることを知らずに……

「……あっ」

 着替える前に、髪の毛をセットしてしまった為1時間の成果が無に帰した。

 結局僕は再びセットをし直して、時間ギリギリの9時40分に家を出たのだった。

◇◇◇

~陽華side~

「……んー! ふぁぁー」

 午前7時。普段の休日より早く起きた。理由は単純。今日は待ちに待った根暗くんとの初デート。約束の時間まであと3時間。私はとりあえずベッドから起きて、朝食を食べた。

「……んー。根暗くんの好みはどんなだろう……」

 朝食を食べ終え、私は根暗くんの好きな髪型やメイクが落ちないか、服装について悩んでいた。と言っても、服装は前日には決めていたのだが……今になって本当にこれで良いのだろうかと思ってしまう。

 普段男女混合の数人で遊ぶ時は、こんなに困らない。好きになられたい訳でもないし。だけど今回は違う。好きな人と出かけるなんてした事ない。まあ、好きな人なんていた事ないけどね。

「……出てくれるかな」

 困り果てた私は、朱里に電話をする。朝早いのに申し訳ないと思いながら。
 すると、3回ほどコールが鳴り朱里は出てくれた。寝起きの声で……

『……ん゛んー? どうしたの? こんな朝早くから……』
「ごめん朱里! 起こしちゃったよね……でもどうしても聞きたい事があって……」
『別にいいよ。ふぁぁー。で、どうしたの? 寝起きの頭で理解できる話なら聞くよ』
「今日、彼に誘われて出かけるんだけど髪型、メイク、服全部に迷ってて……」
『成程。彼に誘われ……って、え!? 今なんて言った? それってデートじゃん』
「そうなの……でも、経験ないからわからなくて……」
『成程。それと私が、さもデートしたことあるみたいに言うなし! でもまあ、普段通りのメイクでいいんじゃない?』
「普段通りか……それで良いのかな?」
『うん。普段メイク薄いでしょ? 濃すぎると嫌って言う男子いるし。髪も陽そんな長くないから、綺麗に整える位で大丈夫だよ。服は昨日の夜とかに決めなかったの?』
「そっかぁ。服も決めたけど今になってこれで良いのかなって……」
『大丈夫。陽は何着ても似合うし』
揶揄からかわないでよ……」
『いや、割と本気で言ってる』
「……もう! 朱里はいつも急にそんなこと言うから……でも、本当にありがとね! 起こしちゃったのに真面目に聞いてくれて」
『良いって。その代わり、初デートの感想待ってるね』
「うん!」

 あかりのアドバイスを受け、私は着替えて、メイクをして、髪の毛を整えた。

「行ってきます!」

 一人暮らしの部屋に向かいそう言って家を出た。
 今日のデートに対する期待と不安を抱きながら……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?

春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。 しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。 美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……? 2021.08.13

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

処理中です...