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告白された?

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 俺は混乱していた。
初対面の若い女性に(ゲーム知識で一方的に知ってはいたが)、面と向かって「好き」と告白されてしまい、どう反応をしたら良いのか見当もつかない。なんてシリアスな状況なんだ。

聞き間違えでなければ、たしかに「好き」と言っていた。

なんで? 君ゲームのヒロインだよね? オジサンの俺に告白とかあり得なくない?

……いや、なんてな。

ああ、そうか。
これは完全なる早とちりだ。そうに決まっている。そもそもミラは、好きと言ったが、何が好きとまでは言ってない。

それを、勝手に告白されたと勘違いしてしまった。おれは鈍感系主人公ではない。この程度の勘違いに踊らされるような、やわな男じゃないぜ。

いい歳こいて若い子相手に恥ずかしい。

きっと、朝からジンと口論して、ストレスで頭がおかしくなっていたに違いない。

あいつめ、父親である俺に容赦なく啖呵を切ってきやがった。

俺の貴族としての誉を侮辱してきたときは、流石にカッとなったが、ゲームシナリオを知らないアイツが怒るのも無理はないと、あとから冷静になり反省した。

いずれ子供は親の背中を超えていくもの。
むしろ、いつも冷静沈着なジンの心にも、熱いヴァリアンツの血が流れているのが確認できて安心したくらいだ。




さて、一応念のために確認をしておくか。

「ミラ殿。その好きというのは?」


そう質問すると、ミラは顔を真っ赤にしながら慌てて手をあたふたとさせる。

しかし、改めて見ると物凄い美人だな。一体何を食べたらこんな美しくなるのだろう?

「あ、あああの、すいみせん! そのセンサーが暴発してですね」

「せ、センサー?」

「ああ違うんです。忘れてください!」

「はあ」

「その好きというのは、ルドルフ様ぁ……に好きな人いるのかなって?」

「ああ、なんだそういうことか」

やっぱり。
俺の早とちりだった。こんな若い女性が、俺なんかを好きになる訳がない。痛い勘違いおじさんにならずにすんだ。良かった。

それにしても、ゲームのミラは真面目なイメージだが、初対面で相手に好きな人がいるか聞くなんて意外すぎる。
ふふふ、綺麗系な容姿とのギャップで笑える。

恋愛トークなんて、何十年ぶりだろうか。
なんだかんだ、ミラも年相応の乙女ということかな?

「あのルドルフ様。どうして笑ってるのです?」

「ああ、すまん、失礼した」

どうやら我慢できずに無意識で笑っていたらしい。これでは妙年の女性相手に失礼というもの。

「いや、なんでもないんだ。ただ質問がおかしくて笑ってしまっただけさ。子供もいるし、今更恋愛をするような歳でもないんでね」

「そ、そうですよ……ね。あたしが馬鹿でした……ごめんなさい」

そういって、ミラはしょぼんと落ち込んだ様子で頭を下げてくる。んー、なんだろ。別に怒ったつもりはなかったんだが、ミラがあまりに絶望したような表情をするので、こちらが申し訳なってしまう。

「ああ、そんなに気にしないでくれ。こちらも、予想外の話題で面食らっただけだ。恋愛の話題なんて妻を亡くしてからしたことないもんで」

その瞬間、ミラがバサっと擬音がつくようなスピードで顔をあげて、詰め寄ってくる。目もやたらとキラキラ……いやギラギラしてる。物凄い迫力。え、何?

「ルドルフ様、今なんと!?」

「ええ……だから、妻を亡くしてから恋愛話なんてしてこなかったら驚いたと……」

「ほうほう!」

おい、なんだコイツ。
なんでこんな話題で、こんなに食いついてくるんだよ。
初対面の挨拶の時は、ずっと黙ってたくせに。

「では、では、今は好きな人がいなくても、将来良い人と出会えればお付き合いする気持ちはありますか?」

ミラがグイっと近寄りそう尋ねてくる。
興奮したように頬を赤らめて、それでいて期待の籠ったような笑顔を向けてくる。彼女の銀髪がふわっと揺れて、花のような甘い香りが鼻孔をくすぐる。

俺は質問の意図がまったく分からず、ただ口ごもるしかできない。

なぜ、俺は二十歳以上離れた娘と恋バナをしてるのだろう?
前世なら確実にセクハラ認定されてるところだ。

「ルドルフ様っ答えてください!」

「え、ええと」

「さあ、ご正直になって!」

「ああ、ああー」

「はやくっ!」

「は、はい! まあ素敵な相手がいたら多分」

「きゃー!」

獲物を狙う肉食獣の目つきにビビって、ついノリで答えてしまった。

なんでコイツはそんな嬉しそうに悲鳴を上げてんだ。

嘘だろ。俺の記憶ではミラはこんな女じゃなかったのに。
も……もしかして、これを俺も現世での行動が原因とか言わないよな!?
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