たんぽぽ 信一・維士

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信一 対談

2012年 春 対談後 信一

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2012年 春 月曜日 信一

 昼に家に着いた。

 玄関を開けると直ぐに母さんが出てきた、おれを見ても普通に、お昼まだなら一緒に食べましょうと言った、あぁと言って台所に一緒に行った。17年ぶりで一緒に食べた何種類もの惣菜があった、朝から作ってたんだ、おれの為に。
 母さんは何も言わない、おれは、

「ばあちゃん施設に入ったって、イシから昨日聞いた」

「そう」

「別に責めているわけじゃない」

「、、、、、」

「何と無く帰りたくなったから、今日きたんだ」

「、、、、、」

「おれ、なんかよくわからないけど病気なんだ」

「、、、、」最初から、知ってたように母さんは無表情だった、玄関で直ぐわかったのであろう、

「8か月間、入院していた」

「、、、、」何かを、考えている顔をしていた、

「母さん、、おれ、、まだ死にたくない、どうしたら良いか、、、わからない」と、おれがボソボソ言うと、

「死ぬって決まったの」と、母さんがやっと口を開いた。

 母さんはおれが機嫌悪くなるのを恐れ、なるべく質問、意見を言わないように気を遣っている、なんか辛いけど仕方がない、おれがそうさせてきた、

「静かにしていたら10年20年は大丈夫だって、、気休めで言ってくれたかもしれないし」

「信ちゃんは、これからどうしたいの」

「仕事は後1年契約残っているが、辞める事になるので、引っ越しをする、
お金は、贅沢しなければ生きている間はなんとかなる、、、
出来れば、イシと暮らしたいが断られるはずだ」と、おれはまたボソボソ答えた、

「、、、引っ越し先とか、もう決めているの」

「まだ、なにも、決めていない、通っている病院の近くあたりになるのかなぁ」

「、、お願いがあるの、信ちゃんの通っている病院に行って、病気の事聞いてきていいかなぁ母さん1人でいいから、信ちゃんは来なくても大丈夫だから」と、遠慮しながらお願いされた、おれの事なのに気を使わせている、

「いいよ、担当の先生がいいって言えば」

「ありがとう、病院と担当の先生教えて」と言うので診察券を見せたらメモしていた。

「食事とかどうしているの」

「適当に」

「そう」

「そろそろ帰る、昨日イシと対談の仕事だった、それの仕上げみたいなのがあるんだ」

「イシくんと、そう」

「イシには、嫌われていて、対談でもしないと一生会ってもらえないから、、、おれがイシを振り回して嫌われてた、、、簡単に言うと、イシの事を嫌いだと言ったんだ、最低だよな、自分で自分が嫌になる、今さら一緒に住みたいなんていえないよ」

「、、、、」

母さんは何も言わない。

(じゃ帰る)と言うと、(また直ぐ帰ってきてね待っているから)と言って、タッパに惣菜を詰めて、

「帰ったら食べて、」と、よこしてた。
玄関を出る時、

「母さん、おれ26歳になった、子供の時から今まで子供だった、病気になって色々考える時間が出来た、、母さんがいた事忘れていた、、1年前、ばあちゃんに何度もお願いされたんだ、母さんを忘れないでって、、、
今ようやく思い出した(待っている)と言ってくれる人、おれにもいたんだ、、また来る、じゃ」と、言ったら、

「忘れるくらいで、丁度良いの、思い出してくれて、ありがとう、また待っているね」と、泣いて言った。

 滞在時間は短かったが、おれにとっては今までの人生で一番大切な時間だった、初めて他人との関係を母さんに言った。

 たぶんこれからは、自然に言えると思う、粋がって生きる程の人生じゃない、。

 おれも、たんぽぽでいいんだ、、間違えた、踏まれても起き上がる、たんぽぽになりたい、、、思った。
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