174 / 206
第12章 ヤーベ、王都の生活をマンキツする!
第155話 活躍したみんなにはお礼をしよう
しおりを挟むガルガランシアで砂糖農家のメリッサから大量の砂糖を買い付けに成功した俺は大至急王都バーロンへ帰る。
その途中、集積地であるガナードの町の上空を素通りする。
情報収集に降りて様子を見て行こうかと思ったのだが、どうせトラブルに巻き込まれることは想像に難くない。それに、スペルシオ商会だけで言えば、俺がこの砂糖を運ぶだけでしばらく砂糖の運搬は不要だろうしな。
そんな訳で、夕方には王都バーロンに帰って来た。
ちゃんと南門に並んで入る。チェックを受けておかないとね。
大通りを歩いて行くと、夕方の喧騒が目に入って来る。
屋台の食べ物屋も夕飯時を狙って声を張り上げている。
リューナは砂糖を貰って店に帰っている。スイーツの研究を始めているだろうが、今の時間は夜の営業を始めているだろう。
俺も早くスペルシオ商会に砂糖を納品して、コルーナ辺境伯家に戻って夕飯を食べたいところだ。きっとイリーナたちも俺を待っているだろう。
・・・待っていなかったら悲しい。
「アンソニーさんお待たせ」
「おお! ヤーベ殿! 本当にガルガランシアまで行って来られたのですか?」
「そりゃそうだよ。ちゃんと砂糖買い付けてきたから、倉庫に案内してくれる?」
「おお、こちらですぞ!」
と言って倉庫に案内されたのだが・・・ぐるっと見回してもそれほど大きくはない。ちょっと狭くね?
「メリッサから買い付けてきた砂糖、全部は入らないよ?」
「あれ、そんなに買えました?」
「お金に困っていたようだったからね。在庫は全て購入してきたよ」
そう言って取引完了書の書面をアンソニーさんに渡す。
「おう、持って行ったお金全部使ったのですな。もちろん大歓迎ですが・・・というか、この量全て買い上げたのですか? その砂糖はどちらに?」
「とりあえず、ここに入るだけ出すか。後はしばらく預かっておくとしますか」
「そうして頂けると助かりますが・・・ここへ出す?」
アンソニーさんがそう言って首を傾げるので、俺は彼に背を向けて倉庫に出せるだけ砂糖の袋を積んで行く。
だいたい買付の半分くらいか?
「え?」
「後半分くらいあるな。預かり証書いてくれる?」
「・・・わかりました。準備しますが、一体・・・どこから砂糖が・・・」
そう言って首を捻りながらも残りの砂糖の分の預かり証を製作してくれたので、サインしたものをそれぞれ持ってスペルシオ商会を後にした。
「わふっ!(ボス!お帰りをお待ちしておりました!)」
コルーナ辺境伯家に戻って来て、建物に辿り着く前、庭にはローガを筆頭に狼牙族がズラリをお座りで待機していた。
『無事、約一万の魔物を殲滅出来ましたのでご報告いたします!』
ローガが尻尾を左右に高速で振りながら俺に報告する。
これは、あれだな。モフモフタイムを要求しているという事だろうな。
普通、ラノベではモフモフする側が気持ちよくて、される側が嫌がるパターンの方が多い気もするが。
ウチは逆だな・・・ローガたちがモフりタイムを要求している気がする。
尤もモフモフしていると気持ちいいので文句はないのだが。
後、ラノベのお約束として獣人少女をモフるとものすごくエッチな感じになるのは確率100%である。まあ、ローガたちは全身狼で間違いなしだから、関係ないけど・・・。後、ローガたちの性別も知らんな・・・まあいいか。今更ローガがメスだとか言われても困る。
「よくやったぞ、ローガよ」
そう言ってお座りしているローガに跪いて首を抱きしめてモフモフしてやる。
「おおっ! ボス! 感無量でございます!」
超尻尾を振って喜ぶローガ。
「むう! ボスのモフりがいつもより長めだな!」
「やはりそれだけ危険な相手であったという事か」
「まあ、我らの敵ではなかったが」
「あんまり余裕を見せるとモフり時間が減るでやんすよ」
余裕を見せる四天王三人衆にガルボがツッコむ。
「おお、それはイカン!」
「やはり、数も多かったし討伐は大変だったという事で」
「うむうむ、大型の魔物もいたことだしな」
そう言って氷牙、雷牙、風牙が如何にも大変でしたという表情でモフられるのを待っている。
「まあ、ボスのモフりは最高のご褒美でやんすからね」
ガルボも大人しくモフられるのを待つ。活躍しましたよーという顔で。
俺は、六十一頭全員をモフり倒してやった。三十分以上かかった。
「ただいまー」
「ふおおっ! ご主人しゃま―――――!!!」
ズトンッ!
コルーナ辺境伯家の建物に入って真っ先に真正面から俺様のストマックに頭突き突貫してきたのはリーナであった。
「リーナはいつでも元気だな」
「ご主人しゃまに会えるといつでも元気いっぱいでしゅ!」
ちょうど俺のお腹辺りに顔を押し付けてグリグリするリーナ。
甘えんぼさんである。
「おお、ヤーベおかえり。無事巨人は倒して回収出来たぞ」
「ヤーベ様のおっしゃる通りでしたわ・・・」
「ボクは一瞬死を覚悟したけどね・・・」
一応笑顔のイリーナと、ちょっと目の焦点が定まりの悪いルシーナとサリーナ。
最初に出てきたワンパンマンが身長一メートルくらいだったろうから、その時に一瞬絶望感が襲ったのかもしれないな。お詫びのデートプランを考えねばなるまい。
「旦那様。我々も見事に雷竜サンダードラゴンとワイバーンの群れを仕留める事に成功いたしましたわ」
満面の笑みを浮かべて討伐報告をするフィレオンティーナ。
「うむ、少々チビリそうだっただが、作戦通り戦えただよ。だでども、おでの一撃で倒したわけじゃないだで、<竜殺し>は名乗れないだでな」
「あら、わたくしたちはコンビで雷竜サンダードラゴンとワイバーンの群れを討伐しましたのよ? ゲルドン殿も胸を張って<竜殺し>を名乗るべきですわ。ゲルドン殿が前衛を努めて下さったからわたくしも極大魔術を準備する事が出来たわけですしね」
うまく戦ったのだが、手柄は誇れないと言うゲルドンにフィレオンティーナが二人で討伐したのだと諭す。
「そうだか、おでも<竜殺し>を名乗っていいだか。ラノベファンとしては夢のような称号だでな」
ゲルドンの言う事はもっともだな。竜を倒した者だけが名乗ることが出来る称号、<竜殺し>。一番夢のある称号だよな。あ、俺も三頭黄金竜倒してるから、<竜殺し>を名乗ってもいいよな。
「そうだな、俺たちは<竜殺し>だ」
俺とゲルドンはガッチリ握手を交わす。
「ちょっと照れるだでな」
ゲルドンがデレた。嬉しくはないが。
「旦那様! わたくしもがんばったのですわ!」
フィレオンティーナが両手を広げて頑張りをアピールしてくる。これはハグをしろって事かな?
「ああ、見事だった、フィレオンティーナ」
そう言って真正面からぎゅっと抱きしめてやる。
「ああ・・・幸せですわ」
フィレオンティーナが頬を赤く染めて呟く。
「ああ、ズルいぞフィレオンティーナ! 私も頑張ったのだ!」
「わ、私も頑張りました!」
「え~っと、ボクも頑張ったってことでいいかなぁ」
左右後ろからイリーナ、ルシーナ、サリーナのトリオがくっ付いてくる。こらこら。
「ふみゅう・・・リーナは留守番だったでしゅ。頑張ってないでしゅ・・・」
リーナが落ち込んだので励ましてやる。
「リーナ。お前は俺が出かけている間留守番を頑張ったじゃないか。ご褒美をあげないとな」
「ふおおっ! ご主人しゃま―――――!!」
みんなに纏わりつかれて身動きが取れなくなったが、まあ喜んでくれるのだ、無下には出来ない。
「さあさあ、皆さま、夕食の準備が整いましたよ。感動の再会はそれくらいにして食事にいたしましょう」
執事のグリードさんが夕飯の準備が出来たことを伝えてくれる。
「じゃあ、食後にみんなに俺にやって欲しい事とか要望を聞こうか。三十分くらいずつ個別に対応するよ。みんな頑張ってくれたからね」
「ホ、ホント!?」
「ステキ!」
「え~、ボク何頼もうかなぁ」
「ふふふ・・・わたくしもう決まっておりますわ」
「ふおおっ! 夢の時間でしゅ!」
「お、おでもいいだか・・・?」
ふふふ、奥さんズが狂喜乱舞しておるわ! ここはダンナのカイショーというものをだな・・・ってゲルドン、お前は俺との時間とかいらんだろ!
「ゲルドンは今度良い酒とツマミ手に入れて来るから、夜ゆっくり飲むとしようか」
「おお、それは良いだな。楽しみにしてるだよ」
よしゲルドン終了。
「さあ、まずは夕飯だよ」
そう言ってみんなを食堂に押して行った
0
お気に入りに追加
304
あなたにおすすめの小説
新日本書紀《異世界転移後の日本と、通訳担当自衛官が往く》
橘末
ファンタジー
20XX年、日本は唐突に異世界転移してしまった。
嘗て、神武天皇を疎んだが故に、日本と邪馬台国を入れ換えた神々は、自らの信仰を守る為に勇者召喚技術を応用して、国土転移陣を完成させたのだ。
出雲大社の三男万屋三彦は、子供の頃に神々の住まう立ち入り禁止区画へ忍び込み、罰として仲間達を存在ごと、消されてしまった過去を持つ。
万屋自身は宮司の血筋故に、神々の寵愛を受けてただ一人帰ったが、その時の一部失われた記憶は、自衛官となった今も時折彼を苦しめていた。
そして、演習中の硫黄島沖で、アメリカ艦隊と武力衝突してしまった異世界の人間を、海から救助している作業の最中、自らの持つ翻訳能力に気付く。
その後、特例で通訳担当自衛官という特殊な立場を与えられた万屋は、言語学者が辞書を完成させるまで、各地を転戦する事になるのだった。
この作品はフィクションです。(以下略)
文章を読み易く修正中です。
改稿中に時系列の問題に気付きました為、その辺りも修正中です。
現在、徐々に修正しています。
本当に申し訳ありません。
不定期更新中ですが、エタる事だけは絶対にありませんので、ご安心下さい。
プロミネンス~~獣人だらけの世界にいるけどやっぱり炎が最強です~~
笹原うずら
ファンタジー
獣人ばかりの世界の主人公は、炎を使う人間の姿をした少年だった。
鳥人族の国、スカイルの孤児の施設で育てられた主人公、サン。彼は陽天流という剣術の師範であるハヤブサの獣人ファルに預けられ、剣術の修行に明け暮れていた。しかしある日、ライバルであるツバメの獣人スアロと手合わせをした際、獣の力を持たないサンは、敗北してしまう。
自信の才能のなさに落ち込みながらも、様々な人の励ましを経て、立ち直るサン。しかしそんなサンが施設に戻ったとき、獣人の獣の部位を売買するパーツ商人に、サンは施設の仲間を奪われてしまう。さらに、サンの事を待ち構えていたパーツ商人の一人、ハイエナのイエナに死にかけの重傷を負わされる。
傷だらけの身体を抱えながらも、みんなを守るために立ち上がり、母の形見のペンダントを握り締めるサン。するとその時、死んだはずの母がサンの前に現れ、彼の炎の力を呼び覚ますのだった。
炎の力で獣人だらけの世界を切り開く、痛快大長編異世界ファンタジーが、今ここに開幕する!!!
「聖女に丸投げ、いい加減やめません?」というと、それが発動条件でした。※シファルルート
ハル*
ファンタジー
コミュ障気味で、中学校では友達なんか出来なくて。
胸が苦しくなるようなこともあったけれど、今度こそ友達を作りたい! って思ってた。
いよいよ明日は高校の入学式だ! と校則がゆるめの高校ということで、思いきって金髪にカラコンデビューを果たしたばかりだったのに。
――――気づけば異世界?
金髪&淡いピンクの瞳が、聖女の色だなんて知らないよ……。
自前じゃない髪の色に、カラコンゆえの瞳の色。
本当は聖女の色じゃないってバレたら、どうなるの?
勝手に聖女だからって持ち上げておいて、聖女のあたしを護ってくれる誰かはいないの?
どこにも誰にも甘えられない環境で、くじけてしまいそうだよ。
まだ、たった15才なんだから。
ここに来てから支えてくれようとしているのか、困らせようとしているのかわかりにくい男の子もいるけれど、ひとまず聖女としてやれることやりつつ、髪色とカラコンについては後で……(ごにょごにょ)。
――なんて思っていたら、頭頂部の髪が黒くなってきたのは、脱色後の髪が伸びたから…が理由じゃなくて、問題は別にあったなんて。
浄化の瞬間は、そう遠くはない。その時あたしは、どんな表情でどんな気持ちで浄化が出来るだろう。
召喚から浄化までの約3か月のこと。
見た目はニセモノな聖女と5人の(彼女に王子だと伝えられない)王子や王子じゃない彼らのお話です。
※残酷と思われるシーンには、タイトルに※をつけてあります。
29話以降が、シファルルートの分岐になります。
29話までは、本編・ジークムントと同じ内容になりますことをご了承ください。
本編・ジークムントルートも連載中です。
伯爵家の三男は冒険者を目指す!
おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました!
佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。
彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった...
(...伶奈、ごめん...)
異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。
初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。
誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。
1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
異世界最強のレベル1
銀狐
ファンタジー
世界的人気VRMMO【The World of Fantasy】略してTWF。
このゲームでは世界大会があり、1位を勝ち取った者のみだけ入れるギルドがある。
そのギルドに一通のメッセージが届いた。
内容は今まで見たことが無いクエストが書かれている。
俺たちはクエストをクリアするために承諾した。
その瞬間、俺たちは今までに見たことが無いところへ飛ばされた。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
Fragment of the Fantasy
Digital&AnalogNoveL
ファンタジー
統一世界観第二作目
第一作目のCroSs MiNDとは世界も場所も違う物語、しかし、何かしらの設定的なつながりがある作品
今後公開予定の第四、第五作や執筆予定の機装戦記の延長上にある物語である。
本来原文は特殊な文字(Font)を使用しており、ここでの表示が出来ないことを残念に思う。
原文で特殊文字を使っていた場所はすべて『******』の様に伏字にしてしまいました。
原文と特殊文字でお読みしたい方はご連絡ください。特殊文字で読めるPDFでご提供いたします。
あ ら す じ
二人の神が地上から姿を消してから約二千年、ユーゲンレシル大陸の西、ハーモニア地方にある三国、ファーティル王国、メイネス帝国、サイエンダストリアル共和国は互いに手を取り合い、長き平和が続いていた。
しかし、その平和の均衡を破るかのごとく突如、メイネス帝国が何の兆候も現す事なくファーティルの王都、エアに出現し一日も経たなくしてそこを陥落させたのである。
その陥落の際、生き延びた王国騎士アルエディーは何故、友好関係にあった帝国が突然、侵攻してきたのかその真相を探るため帝国内部へと旅立って行こうとした。だが、それを知る事も許されず王国奪還の為に決起する事になってしまう。
騎士アルエディーを取り巻き、主格から脇役まで総勢60人以上もが登場する笑い、泣き、怒り、悲しみ、そして愛と感動が織り成す会話重視系の幻想英雄譚小説。
帝国が王国に侵攻したその理由は?アルエディーとその仲間たちは帝国に圧制された王国を奪還できるのか?戦いの果てに彼等を待つものは?
争いはいつも誰もが望まなくして起こるもの・・・、そう、それは何者かの手によって・・・。
そして、英雄独りなどで、けして世界を救くえはしない。そこに多くの仲間達と平和を願う人々が居るからこそ、それは実現の物となるだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる