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第11章 ヤーベ、王都の危機を救う!
第144話 敵を殲滅して王都を防衛しよう(フィレオンティーナ編 後編)
しおりを挟む城門をくぐり抜け、幾何もいかないうちにドラゴンとワイバーンが迫って来た。
「ガアアアアアアッッッッッ!!」
雷竜サンダードラゴンが先制の<竜咆哮>を放つ。
「「ヒィィィィィ!!」」
フィレオンティーナとゲルドンが情けない声を上げる。
鍛え上げられている二人をして状態異常を発生させる属性竜の咆哮である。
「かかかかかっ・・・勝てるだか!? アレに?」
「だだだ、大丈夫ですわよ! 旦那様のご判断ですもの・・・」
完全にチビッたゲルドンにフィレオンティーナは大丈夫だと伝えるが、足がぷるぷる震えている。
「(だ、旦那様~~~~~!! 私は一人でドラゴンに勝てるのでしょうか!?)」
涙がちょちょぎれ始めるフィレオンティーナ。
「(だ、だいたい人間が一人でドラゴンに立ち向かうなど・・・正気の沙汰ではないのですわ~~~~~!!)」
ついにフィレオンティーナの目から涙が決壊する。
かなり内又になって全身痙攣の如く震え始めた。
ちなみにゲルドンはいないことになってしまった。
『イカン! ボスの心配された通り、状態異常の効果が高い咆哮の一撃を喰らったか』
そう言って慌てたのは、助っ人兼情報確認のために来ていたヒヨコ十将軍が一人、第四位センチュリオンであった。
『今こそボスよりお預かりしたこの出張用ボスを使う時だ。ボス頼みます!』
センチュリオンは足で捕まえていた出張用ボスをフィレオンティーナの肩に置く。
出張用ボスは小さなティアドロップ型のスライム形状をしていた。
キィィィィィィィィン!!
出張用ボスから魔力が溢れたかと思うと、
パアンッ!
勢いよく魔力が破裂した。
「ハッ・・・? わたくしは一体?」
「おら、どうしてただか?」
一瞬状況が飲み込めない二人。
『フィレオンティーナ。聞こえるか?』
「はっ!? 旦那様?」
だがフィレオンティーナがすぐ理解する。ヤーベの声が聞こえたのだ。
『俺の分身がお前たちの魔力抵抗値を上げておく。油断しないようにな』
そう言って出張用ボスが光っていた。
「ああ、旦那様・・・愛しておりますわ」
会話になっていないような気もしたが、頑張れと伝えてヤーベは通信を切った。
「そうですの、さすが属性竜ですわね。こちらの魔力抵抗値を上回る咆哮を仕掛けてきましたか。ですが、わたくしには旦那様がついていらっしゃいます。アナタのような空飛ぶ蜥蜴に負ける道理などないのですわ」
そう言ってフィレオンティーナは杖を雷竜サンダードラゴンに向かって掲げる。
「天空にあまねく精霊たちよ、我が声に応じ、彼方よりその力を解き放て!<雷撃牢獄>!!」
ズガガガガガ――――――ン!!
広範囲に広がりながら天空より雷が荒れ狂う。
正しく見た事もないような巨大な雷の牢獄に捕らわれた雷竜サンダードラゴンとワイバーンたち。
ワイバーンはフィレオンティーナが放った<雷撃牢獄>に耐え切れず墜落して行く。
だが、さすがは雷竜サンダードラゴンである。<雷撃牢獄>に耐え切り、怒りの咆哮を上げる。
「ガアアアアアア!!」
大きく口を開けて首を後ろに捻る。
<雷の吐息>の予兆動作である。
「くるだでっ!」
ドウッ!!
雷竜サンダードラゴンが口を開けて<雷の吐息>を放つ!
「<雷鳴の光線>!」
フィレオンティーナは雷竜サンダードラゴンが放った<雷の吐息>に向かって魔法を放つ。
フィレオンティーナの杖からは一条の雷が迸り、<雷の吐息>に当たる直前、傘の様に広がる。
<雷の吐息>は広がった<雷鳴の光線>に流れる様に散っていき、霧散する。
「ふふふ、旦那様に雷の防御の仕方をお教えいただきましたの。<雷の吐息>は効かなくてよ」
教えて貰ったとフィレオンティーナは言ったが、実際には見ていたのである。
ヤーベが捕らわれたフィレオンティーナ救出のために悪魔王ガルアードと悪魔の塔で戦った時に、ガルアードの放った<雷撃>に対して触手を傘骨の様に広げて塔へ雷を流しきって防御していたのだ。
「ガアアアアアア!」
<雷の吐息>が防がれ、ダメージを与えられないことにイラついたのか、直接攻撃に出ようとする雷竜サンダードラゴン。
「ゲルドン殿、お願い致しますわ」
そう言って自身は極大呪文を準備すべく、魔力を練り上げる。
「任されただよ。この一撃におでの全てを込めるだよ!」
ゲルドンは右足を大きく後ろに引き、巨大ハルバードも後ろへ回す。
「おおおおおっ!!」
右腕を下側から回し、すくい上げる様にハルバードを振り上げる。
「飛天剛衝波!!」
ギュゴッ!
空を切り裂き、ハルバードから放たれる裂帛の衝撃波が雷竜サンダードラゴンを襲う!
ギュバッ! ドゴォン!
さらに魔法のハルバードの爆炎効果が追加される。
爆炎に包まれる雷竜サンダードラゴン。
「ギュゴゴゴゴオオオ!!」
突っ込んできたところをカウンター気味にゲルドンの放った飛天剛衝波を喰らい、突進が止まってダメージを受ける雷竜サンダードラゴン。
「ギエル・シ・アール・キース! 古の契約に基づき、神霊の祭壇に今力よ満ちよ! 数多の精霊たちよ、天空よりその断罪の剣を解き放て! <轟雷>!!!」
フィレオンティーナ最強の魔術が施行される。
天空より空間を切り裂くが如く、超巨大な雷撃が雷竜サンダードラゴンを貫いた。
「ガアアアアア!!」
巨大な雷撃に体を貫かれ外は元より内部からも雷に焼かれる痛みに断末魔を上げる雷竜サンダードラゴン。
そして翼の動きが止まり、スパークを放ちながら黒い煙を上げて地面に墜落する。
「ふふふ、属性竜に完勝! ですわねっ!」
嬉しそうに魔法の杖をクルクル回すフィレオンティーナ。
「(先制攻撃の<竜咆哮>でチビリまくったのは完勝には影響しないだか・・・?)」
そう思ったゲルドンだったが、口にすれば碌な事にならないと思い直し、黙って勝利を喜ぶことにした。
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